藤原帰一氏は映画「オッペンハイマー」を紹介。極秘裏に原爆を開発するアメリカ・マンハッタン計画の責任者であるロバート・オッペンハイマーを描いた映画となっていて、日本では3月29日に公開される予定となっているが、アメリカなど各国ではすでに公開され米アカデミー賞でも作品賞など7部門を受賞している。原爆を開発した責任者の胸中を描いた作品となっていて、完成に苦悩する様子を見せている。原爆投下後の広島・長崎についてはっきりとした表現を避けていることについて、藤原氏は映画はオッペンハイマーの主観映像として描かれ被爆の惨状ではなく画面を見て原爆から目を背けるオッペンハイマーの姿がみられ、実験の成功を祝う場ではそこにいた女性の顔が崩れていく様子に核の恐怖が表現されていると言及。原爆開発をサクセスストーリーのように描きながらも、その奥で過ちの罪悪感に囚われていく様子が表現されていくものの、オッペンハイマー自身は核兵器廃絶の運動には賛同しない様子を見せる。その一方で、オッペンハイマーは原子力委員会に迫害される様子が描かれている。アメリカでは原爆投下が第二次世界大戦を終わらせたと評価する声も聞かれるものの、映画「オッペンハイマー」は核兵器の恐怖が描かれている。また、日本ではビキニ環礁での水爆実験の恐怖が「ゴジラ」の誕生に繋がっていくが、新作「ゴジラ -1.0」は民間人の犠牲や核実験により変異したゴジラが登場し、原爆が戦争を終わらせるのではなく原爆が新しい時代を作ることへの恐怖が描かれている。藤原氏は「オッペンハイマー」は核が使われることへの危機感に基づいた作品だとまとめている。