- 出演者
- 桑子真帆
オープニング映像。
水爆実験が行われた当時、放射能に汚染された魚を獲った漁船はのべ992隻に上る。その後乗組員たちの中にはがんや白血病などで亡くなる人が相次いだ。水爆実験に遭遇した桑野さんが原告として訴えているのは後年発症した胃がんなどの健康被害。そして仲間たちの早すぎる死。遠洋マグロ漁船・第二幸成丸に乗っていた桑野さんたちは死の灰と呼ばれる放射線降下物を浴びたと証言している。当時この海域にいた112名中半数ががんや白血病を発症していた。アメリカ政府は200万ドルの見舞金を支払うことでこの問題の完全な解決を迫り日本は受け入れた。その後第五福竜丸以外の漁船員たちの健康被害に対する補償や調査は行われなかった。
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- がんアメリカ国立公文書館ビキニ環礁ビキニ環礁水爆事件マーシャル諸島ロバート・オッペンハイマー厚生労働省広島県水爆実験と日本漁業江東区(東京)白血病第二幸成丸第五福竜丸第五福竜丸展示館肝硬変胃がん近藤康男長崎県高知県
漁船員側にも沈黙せざるを得ない事情があった。当時高知の港町の多くが遠洋漁業の成功によって貧しさから立ち直っていく最中にあった。被ばくの問題を蒸し返せば魚が売れなくなるという懸念があった。2013年、当時10か月だけ行われた漁船員の放射線検査の記録などの資料が開示された。資料開示を実現させたのは地元の高校生たちの地道な調査だった。元漁船員で原告の谷脇さんは胃がんなど数々の病に苦しんできたが国が開示した資料で自分の船や乗組員の体から放射線が検出されていたことを知った。
検査記録が開示されてからおよそ10年。苦しみは深まっているという漁船員は少なくない。2016年、漁船員たちは国に賠償を求める裁判や労災申請に踏み切ったがいずれも認められなかった。全国健康保険協会が不承認の根拠としたのは有識者会議が出した見解。一方で国が当たらに開示した漁船員の検査記録には触れなかった。原告を支援していた聞間医師は検査記録にある単位は核種・被ばく線量までは評価できないことは認めている。ただデータが不足している中で推定に推定を重ねてまで因果関係の立証にこだわる姿勢が問題だと指摘する。広島大学・星さんの研究グループは漁船員の歯から浴びた放射線量を導き出した。さらに原告が訴えるのは内部被ばくの可能性。当時の漁船員は汚染が深刻とされた魚の内臓を日常的に食べていた。一方、全国健康保険協会は歯の異常については他の要因も考えられるなどと主張している。漁船員たちは国に対し再び裁判を起こしているが国は争う姿勢を示している。
吉永小百合さんが語ったのは核に対する曖昧な姿勢の恐ろしさ。過去にあった原爆と核実験をもう一度考えて必死に生きた人のことを考えなければいけないなどと語った。吉永さんが強調したのは知ること、曖昧さを排除することの大切さだった。