クラフトビールを造る地域ごとの小規模な醸造所の数は、去年700か所を超えたとみられ、統計を取り始めてから過去最も多くなった。大手メーカーも交えた競争の現状を取材。先月開かれた国内最大級のクラフトビールのイベントには、全国から47の醸造所が出店した。長野県の特産のりんごを使ったものから、北海道網走の流氷をイメージした青いクラフトビールまで、地域の活性化にも一役買っている。ことし、埼玉県越谷市に誕生した醸造所「NOMENDO」。醸造所オーナー・佐野明彦さんは、もとは歯科医師として働いていた。さまざまな味わいのあるクラフトビールに魅了され、越谷発のクラフトビールを造りたいと一念発起した。設備はごく小規模で、価格は1杯680円から。通常のビールと比べ割高だが、かんきつ系の香りや独特の苦みにこだわっている。地道なチラシ配りで浸透を図り、少しずつリピーターが増えている。常連客などの勧めでふるさと納税の返礼品への応募も検討。地域との結び付きを強めることで競争を勝ち抜きたいとしている。大手メーカーもクラフトビールに力を入れている。先月、東京・代官山にレストランを併設した醸造所をリニューアルした。狙いは、ビールファンの底上げ。ビールになじみがない若者や女性でも、好みに合ったものを選べるクラフトビールなら楽しめるのではないかと新たな客層の取り込みを図っている。専門家は、クラフトビール市場は今後も広がっていくと分析している。クラフトビールを巡っては、ビール系飲料の税率が変更された際に、オレンジの風味やスパイシーな味わいを加える副原料の範囲が広がり、より趣向を凝らしたビールの開発が可能となった経緯がある。