新一万円札の顔、近代日本経済の父と呼ばれる渋沢栄一の講演内容をまとめた書籍「論語と算盤」が改めて注目されている。その理由を取材した。東京都新宿区にある書店では、渋沢栄一への関心の高まりを受けて、関連する書籍を集めて販売している。“経済活動と道徳の両立が重要だ”などと説いた「論語と算盤」。現代のことばに訳したものや漫画で紹介されたものもあり、中には販売数が前の週と比べて8倍ほど増えたものもあったという。「論語と算盤」の中で、渋沢栄一は“企業の目的が利潤の追求にあるとしても、その根底には道徳が必要だ”と説いている。この教えを経営の基本理念としている会社がある。大手ゼネコン・清水建設は、創業期の明治から大正にかけて渋沢栄一が相談役を務めていた。宮本洋一会長は「いいもの作りをして、きちっと社会に還元していって、その上で利益をちょっといただくという考え方がやっぱり大切」と述べた。会社では研修などを通じて、若い社員にも渋沢栄一の考え方を学ぶ機会を設けている。渋沢栄一は100年以上も前から“持続可能な社会”の大切さを訴えていた。人の生き方にも通じる普遍的な教えが、時代を超えて読まれ続ける理由だと思われる。