JAMSTEC(海洋研究開発機構)の探査船「ちきゅう」。去年11月、南海トラフ地震の震源域で「ちきゅう」が行っていたのは水深2650メートルの海底の掘削。掘った穴に埋められるのはJAMSTECが開発した光ファイバーひずみ計。10億分の1メートルという動きも捉えられるセンサーで狙うのはゆっくりすべりと呼ばれる地震の一種。通常の地震は断層が高速ですべって揺れや津波を発生させるが、ゆっくりすべりは断層が数日~数年かけてゆっくりと動く現象で揺れや津波は起きない。ゆっくりすべりは地震の前兆現象ではないかと考えられ、これを南海トラフ地震の震源域で観測することで巨大地震の発生予測につなげようという狙い。光ファイバーひずみ計を触ると光ファイバーが温まることによって伸びていく。ゆっくりすべりが起こることによって光ファイバーが伸びることを検知している。2011年の東日本大震災では十分な観測体制がなかったため前兆現象を捉えることができなかったが、紀伊半島沖や四国沖の海底に地震計やひずみ計の観測網を倒置。さらに高精度の光ファイバーひずみ計を今回の紀伊半島沖だけでなく四国沖と宮崎沖にも設置する計画で新たな観測体制を作って南海トラフ地震に備える。現在、千葉県沖でも発生しているゆっくりすべり。来る巨大地震の予測に向けほんの僅かな断層の動きも見逃さない研究・観測が本格化している。