日銀は短観・企業短期経済観測調査を発表し、大企業の製造業の景気判断を示す指数は、価格転嫁の進展や半導体の生産の回復を背景にプラス13ポイントとなり、2期ぶりに改善した。素材関連の企業の間で価格転嫁が進展したことや、AI向けなどの需要の増加で半導体の生産が回復傾向にあることが背景にあるとしている。一方、大企業の非製造業の指数はプラス33ポイントと、引き続き高い水準となったものの、前回調査を1ポイント下回り2020年6月以来16期ぶりに悪化した。小売が前回から12ポイント下がったことなどが影響した。今回の短観では価格転嫁の広がりを背景に大企業製造業で前向きな見方も示された。ただこれに水をさしかねないのが歯止めのかからない円安。原材料コストの増加や想定以上の物価上昇が続けば、せっかくの賃上げ効果も薄れてしまう。大企業非製造業の景気判断が実に4年ぶりとなる悪化に転じ、小売業で特に大きく落ち込んだことにはこうした警戒感が反映されている。円安は日本経済の構造的な弱さを示しているという指摘も出る中、力強い成長をどう実現していくのか難しい局面が続きそう。