能登半島地震から1年。菓子作りが盛んな石川県珠洲市では、菓子職人も被害を受けた。建設業の人手不足などで、多くの菓子職人が今も店舗を再建できず、避難先や仮設の工房などで生産を続けている。そんな菓子職人を支援しようと、珠洲のお菓子を詰め合わせたギフトセット「珠手箱」が販売されている。取り組みに込められた思いを取材。珠手箱を考案した今井麻紀子さん。今井さんの家は、珠洲で江戸時代から特産の海産物や塩、酒などを販売してきた。地震で本店は全壊。自宅も津波で大きな被害を受けた。地震から3か月後、被害の少なかった支店で営業を再開した今井さんのもとに、金沢市の会社から菓子職人を応援したいという依頼が届き、珠洲の特産品を全国に届けてきた老舗として、何か役に立ちたいと考えたという。多くの菓子店が休業する中、今井さんは菓子職人を訪ね続けている。珠手箱を始めて5か月余り。今では6軒の菓子職人が作る菓子がおよそ40種類そろうまでになった。今井さんに誘われ、菓子職人として再び歩み始めた珠洲市出身の石井ゆきさん。県外の飲食店で働いた後、おととし6月、地元で念願の菓子店をオープンした。しかし、その僅か半年後、地震による津波で自宅を兼ねた店が全壊。菓子作りを続けられなくなり、東京で別の仕事を始めた。そうした中、今井さんから石井さんの作る素朴な菓子を珠手箱に入れたいと声をかけられ、再び珠洲で菓子を作ろうと思うようになった。地震から1年。今井さんや仲間と共に、珠洲を盛り上げようと前を向いている。今井さんは「本当の意味での復興はこれから」と語る。珠手箱には故郷の復興への思いが込められている。