クローズアップ現代 助かった命がなぜ… 能登半島地震 災害関連死270人超
地震や津波から助かったものの、その後の避難生活などで体調を崩して亡くなる災害関連死。能登半島地震の災害関連死は276人、家屋の倒壊などで亡くなった直接死228人を上回った。取材できた216人の方々の亡くなった経緯を分析した。注目したのは体調悪化の場所、多かったのは介護施設・避難所でそれぞれ70人を超えた。
母親を災害関連死で亡くした遺族が取材に応じてくれた。蔵純男さんの母・やよゐさんが亡くなったのは地震から10日あとだった。足腰は弱っていたが介助の必要はなかった。自宅が被災し、避難所である小学校の体育館に身を寄せたやよゐさん、雑魚寝で体を動かすことはほとんどなくなってきた。トイレは使えず紙おむつを使用、やよゐさんは精神的に消耗していった。避難して9日後のやよゐさんは自力で起き上がるのも難しくなっていた。1月11日、やよゐさんはおかゆを喉につまらせて亡くなった。多くのを災害関連死につながった避難所にはどんなリスクがあるのか?専門家と検証した。劣悪な避難所生活を余儀なくされる現実が再確認された。災害が起きるたびに繰り返し指摘された劣悪な避難所の環境。整備や運営を行うのは市町村。国は2016年、避難所運営ガイドラインを策定し、事前の備蓄や必要な対応をリストにまとめ市町村に取り組むように促してきた。しかし、現場ではガイドライン通りに対応するのが難しかった実態が明らかになってきた。そのひとつが段ボールベッドの設置。発災からまもない能登町役場、地震直後に集まれたのは職員の2割だった。道路の寸断で集落が孤立し、避難所は指定していた42か所から72か所に拡大。避難者の数も最大で5400人となった。業務に追われる中、段ボールベッドをすぐに用意する判断に至らなかった。
この時期に亡くなった小浦清香さん。家族は災害関連死なのではないかと町に認定を求めている。要介護4で車いす生活だった。避難所の床で横になるのが辛く、車いすのリクライニングを倒していたという。清香さんの姿をみて命の危険があると感じた人がいた。ボランティアに来ていた松永鎌矢さん。1月9日、松永さんは仲間に依頼して段ボールベッドを手配。清香さんはようやく横になることができた。町が段ボールベッドを手配し、届きはじめたのは1月16日、避難所を巡回していた保健士から訴えがあったのがきっかけだった。19日、清香さんは亡くなった。エコノミークラス症候群だった。