幻の“チョウの標本” 日本で発見 昆虫学者100年の交流

2025年4月8日放送 4:41 - 4:51 NHK総合
国際報道 (特集)

日本で見つかった標本が移管されたことを記念して、韓国では、ソク・チュミョンの足跡を辿る展示会が開かれた。ソクは、韓国では教科書や絵本に取り上げられ、小学生でも知る存在。今回見つかった標本は、35種129点。いずれも100年近く前にソクが朝鮮半島で採集した標本。標本のなかには、今では採集が難しいチョウなどもある。ソクは、日本の植民地時代の朝鮮半島で育ち、農業を学ぶために17歳で、現在の鹿児島大学農学部の前身に進学した。講義で出会ったのが昆虫学者の岡島銀次。ソクに昆虫学者としての才能を見出していた岡島は、ソクが卒業する際、「朝鮮半島のチョウの研究に着手すべきだ、10年間必死にやってみよ」と声をかけたという。ソクの伝記を書いた専門家は、当時まだ途上にあった朝鮮半島のチョウの研究を現地の人に手掛けてほしいと岡島が考えていたのではないかと指摘する。1922年、朝鮮半島に戻ったソクは、各地で採集したチョウの分類に着手した。1936年10月、九州大学の来訪者の記録にソクの名前があり、九州大学で教授を務めていた昆虫学の大家・江崎悌三のもとを訪れていたとみられる。この日、ソクは江崎の自宅でもチョウの変異について2時間にわたり議論したという記録もある。当時行っていた研究について具体的なアドバイスを受けていた。九州大学で見つかった標本の一部は、このときソクが江崎に寄贈したものだと考えられている。1939年、ソクは最新の知識に基づいて、朝鮮半島のチョウの分類をまとめた本を出版した。序文では、江崎と岡島の名前を挙げ、感謝を綴った。1950年、朝鮮戦争が勃発。ソクが勤めていた博物館も爆撃を受け、ソクの標本はすべて失われた。ソクも混乱のなか41歳で亡くなった。ソクの標本の発見に関わった九州大学の広渡名誉教授は、標本の調査を一緒に行った韓国の研究者たちと共同研究を始めた。韓国ではこれまで調査が行き届いていないガの仲間を調べている。日韓の若い研究者たちも現地調査に加わり、新たな種類も見つかっているという。広渡名誉教授は、共同開発で、日本と韓国に分布するガの形態や遺伝子を比較するなどして、2つの国の昆虫の起源などをより深く理解したいと考えている。今回見つかった標本からは、チョウの保全など新たな研究が始まろうとしている。ヒメシジミは、チェジュ島にある韓国最高峰の山にしか生息しておらず、気候変動で生息域が狭まることが危惧されている。100年前の個体のDNAと現在の個体のDNAを解析・比較することができれば、この100年間に起きた温暖化などの影響がわかり、ヒメシジミを守ることにもつながると期待されているという。


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