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先月上旬、ドイツの首都・ベルリンで大規模なデモが行われた。参加者は警察発表で約1万人。「平和デモ」と名付けられた今回のデモの目的は、アメリカのミサイル配備計画の撤回を求めること。ショルツ首相は今年7月、NATO首脳会議に合わせバイデン大統領と新たなミサイルの配備計画で合意した。見据えるのはウクライナ侵攻を続けるロシア。ロシア領をも射程に入れるとされるミサイルの配備で強い抑止力を働かせる狙い。ところがこの計画が発表されるとドイツでは反対意見が目立つようになった。最新の世論調査でも「賛成」40%、「反対」45%と「反対」が上回った。反対の声が特に強いのが旧東ドイツだった地域。デモに参加したマーティン・シュルケさんは、旧東ドイツの州出身で地元市議会議員を務めたこともある。地元にはいまもナチスと戦った旧ソビエト軍の兵士の墓や記念碑などが点在している。東西冷戦時代、社会主義陣営の国としてソビエトの影響下にあった東ドイツ。そのため旧西ドイツの地域と比べロシアとの親近感を抱く人が多いとされている。シュルケさんの自宅前の通りは旧東ドイツ時代に名付けられた「平和通り」。当時の体制が「平和に尽くしているのは東側だ」とアピールするために付けた。シュルケさんはいま、地元の仲間とともに「ミサイル配備はロシアとの対立を決定的に深め、ドイツの平和が脅かされる」と考え、反対の声を上げるようになっている。ロシアとの対立の回避を願う人々の受け皿として注目を集めているのがザーラ・ワーゲンクネヒト党首。旧東ドイツ出身の政治家で、左派の論客として活躍。今年1月に新党を結成しミサイル配備反対を主要制作の1つに据えている。9月、ワーゲンネヒト氏が率いる新党は旧東ドイツの3つの州で行われた議会選挙で、ウクライナへの軍事支援反対や、対ロシア制裁への反対なども掲げた。ワーゲンクネヒト氏は旧東ドイツに残る政治的な趣向をすくい取り、3つの州のうち2つでは得票率で与党を上回る躍進を見せた。こうした声の高まりにどう応えていくのか。ショルツ首相の与党有力者の1人は、ウクライナの軍事支援の停止やミサイル配備計画の撤回は困難であり、国民に理解を示していく考えを示した。