ダーウィンが来た! 波乱万丈!水中の名ハンター カワウ
日本伝統の漁「鵜飼い」。飼い慣らした鵜を操り、アユなどを捕まえるこの漁でカワウは古くから活躍してきた。現在は体が大きく、魚が多くとれるウミウを使うのが主流。しかし、あえてカワウとともに漁をする人もいる。その魅力は抜きん出た狩りの能力。日本全国の川や湖に暮らすカワウ。翼を広げると1.3m、日本の水鳥の中では大型の部類。体は大きいが、水中では俊敏な動きをする。トップスピードは秒速4m。足の指の間には大きな水かきがあり、同じ水鳥のカモと比べると1枚多い。さらに脚はお尻寄りにあるため、泳ぐ時に体が脚と一直線になり、水をかく力が効率よく伝わる。また、カワウは体が水に沈む。水鳥の多くは尾脂腺という場所から分泌される油を羽毛に塗ることで水を弾き、浮力を保つ。一方、カワウは尾脂腺が発達していないため、羽毛が水を弾かない。浮力が低下すると、潜水しやすく、水中での動きが自在になる。カワウは水に潜った後、羽を乾燥させる。黒い体は熱をよく吸収するため、短い時間で乾くという。カワウはとった魚を鵜呑みにする。喉は柔軟で獲物の形に合わせ、ゴムのように伸びる。尖ったくちばしを刺し、魚を安定して持ち上げることで頭から鵜呑みにすることができる。
日の出直後、カワウが群れで琵琶湖に現れた。岸の近くに降り立つと狩りを始めた。しかし、すぐに飛び立って移動し始めた。岸に沿うように移動しながら、不可解な行動を繰り返していた。カワウの専門家・須藤明子博士はアユの群れを一定の方向に誘導しながら自分たちの都合のいい浅い方へ誘導していると話した。実はカワウが食べることによって遡上するアユが激減し、漁業を営む人たちが大打撃を受けているという。カワウは魚が多い川の中流や下流、湖の近くで暮らす。そこは人間にとっても魚がとれる場所。カワウと人は古くから魚をめぐるライバル関係にあった。しかし、高度経済成長期に水質の悪化と開発によって魚が激減。カワウも数を減らし、一時は全国で3000羽まで減った。その後、環境が改善されて魚が戻ってきたが、同時に全国で進んでいたのが河川改修。護岸が整備され、大きな石のない川が増えていった。魚の隠れる場所が減り、カワウにとっては狩りがしやすい環境となり、急速に増えていった。2000年代には15万羽まで増えた。カワウの増加とともに漁業被害が拡大。現在は捕獲によって数を減らす取り組みが行われている。こうした現状を改善しようと全国各地で取り組みが始まっている。簡単に狩りができないように木で魚が隠れる場所を作ることで、そこに暮らすカワウの数も自然な状態に近づいていくと考えられている。