- 出演者
- 田中哲司 長谷川博己
オープニング映像。
今年、万博に沸いた大阪。街では新たなビジネスチャンスに賭ける動きがあった。一般の人の自家用車を使ってお客を乗せるライドシェア、お客はアプリで予約し行き先を指定。料金は事前に確定する。運転手は青柳直樹さん、グリーで取締役やメルカリで日本事業の統括を務めた経験もある。そして2024年1月ライドシェアビジネスを手掛けるnewmoを起業した。青柳さんは万博がライドシェア全面解禁への転機になると期待し、先手を打って運転手の募集を仕掛けた。万博の終了後再び常時運航は不可能となり、ライドシェアの普及は不発。万博前に集めた約1000人の運転手も、その後約200人に減ってしまった。日本版ライドシェアで挫折を味わった青柳さん、しかしまだ諦めていなかった。大阪市で今年の2月に閉店したパチンコ店、その駐車場に青柳さんがやってきた。そこには新車のワゴンタクシー約60台と、旧車のセダンタクシー約70台が並んでいた。
大阪府守口市にあるタクシー会社「未来都」。その営業所に青柳さんがやってきた、去年7月ライドシェアのサービスに参入するためnewmoは未来都を買収。しかし、ライドシェアの全面解禁は叶わず、青柳さんはタクシー業界の変革で新たな勝機を見出すことになった。早速始めたデジタル化の1つが、自動点呼システムを自社開発したこと。newmoの強みは約50人のITエンジニアが在籍していること。システムの開発はお手の物。タクシー業界のデジタル化に賭ける青柳さん、中でも注目しているのが配車業務の効率化。未来都タクシーの中枢が配車センター、1日に1000件以上の電話依頼を3~4人のオペレーターで切り盛りしている。タクシーはアプリでも呼べる時代だが、未来都では今も予約の半数が電話だという。大口の顧客や高齢者は特に電話での予約が多いという。配車歴27年のベテラン、宮脇剛さん。大事なお客を繋ぎ止めて来た宮脇さん、痒いところに手が届く配車技術を持っている。お客の名前を聞いただけで直ぐ様配車先を入力、そして名前を聞いてからわずか30秒で車の手配が完了した。しかし、このスピード感でも全ての電話は取り切れない。タクシーは余っているが、約3割の電話予約を逃しているという。
東京・港区、newmoの本社でCEOの青柳さんと話しているのは、AIで業務の効率化を進めているITエンジニアの海野弘成さん。6月6日大阪府守口市、海野さんがnewmo傘下のタクシー会社「未来都」にやってきた。予約の取りこぼしがある配車センターをAIで効率化しようという。電話予約に自動で対応するシステム「maido!」を6か月かけて開発してきた。まずは、配車のベテラン・宮脇さんの仕事ぶりを観察する。この日は試験的に一部の電話をAIの「maido!」が直接受ける。AIは複数の電話に同時に対応するため、海野さんたちは個別の電話をリアルタイムで聞くことはできないが、対応の済んだものの録音を再生してみると配車予約に成功していた。しかしその後、AIが電話を受けるとお客がすぐに電話を切ってしまうケースが相次いだ。テストは6時間かけて行ったがこの日AIが受けた電話は約100件、その内配車に成功したのは7件のみ。改善点を探る「maido!」チームだった。
8月上旬、newmoの本社と大阪の配車センターをリモートで繋ぎ、連日テストを続ける。AIが客の「はい」を正しく認識できるように改善された。しかし、地名とお客の名前が混ざったことでAIは住所を「清水」までしか認識できず、AIが混乱しお客は激怒する事態に。その時、配車のベテラン・宮脇さんからのチャットが来た。そこには「来週のリリースは見送っていただかないと、大混乱になると思います。」と書かれていた。「maido!」の本格運用開始まで1週間、直前のトラブルに海野さんも険しい表情を浮かべていた。それでも諦めない海野さん、改善のために判断が正しいかチェックするAIを追加した。
8月15日、大阪のタクシー会社「未来都」。いよいよ午前10時からAI配車システム「maido!」の本格運用開始。早速AIが電話対応を始めスムーズに配車することができた。AIの導入で、宮脇さんの電話の対応件数はいつもの半分ほどに減った。この日、AIは71件の電話を受け30件の配車に成功した。海野さん、早速青柳さんに報告した。AI配車の実現が見えてきた青柳さん、さらなる大勝負に出ようとしていた。大阪市で調達した大型パチンコ店の跡地で何を仕掛けようとしているのか。
福岡県那珂川市、住宅街の周りは山に囲まれ自然豊かなところ。市の中心部と山間部を結ぶ、市営のコミュニティーバス「かわせみバス」。病院や市役所、学校などを結ぶ地域の足だが、9月末で廃止されることが決まった。運転手不足が主な理由だという。住民たちは地域の足を失うことに、特に高齢者には死活問題。9つの路線があった、かわせみバスの利用者は年間約26万人。バスを運営してきた市も対策を考えていた。白羽の矢が立ったのが、タクシー大手の第一交通。かわせみバスの名前を継いだ、乗り合いタクシーを運行することになった。全部で9台、普通二種免許で運転可能。従来の路線バスとは異なり、定時運行はしない。お客の予約状況に応じて、AIが様々な判断を下し臨機応変に運行する。9台の車両に対し乗降ポイントは237カ所、AIが車両とルートを選択する。AIによる効率化のメリットは、高齢者が多い地域で利用者に受け入れられるのか。
9月20日、山間部別所地区の公民館で、住民向けに新しい乗り合いタクシーの説明会が開かれた。運行の開始は10日後、予約はオンラインが基本。予約の方法など説明するも、住民からは反発の声が上がっていた。それでも、地域の足を守るにはこの方法しかないことを必死に説明するのは、那珂川市の都市計画課・岩橋慶信さん。住民説明会の4日後、市役所のロビーに岩橋さんの姿があった。バスの路線に近い12地区の区長を集め、新しい乗り合いタクシーを体験してもらおうという。スマホがない人のために、利用者の多いポイントにはタブレットを用意している。その画面に目的地と時間を入力するだけで予約が出来る。実際に予約をして、通知の通り6分ほど遅れて乗り合いタクシーの「かわせみバス」が到着した。運賃は大人300円、高齢者や子供は100円で利用出来る。区長たちを乗せた「新かわせみバス」、この日は皆揃って博多南駅に向かう。AIが示したルートに従って走る、住民には意外なルートも走っていた。10分ほどで博多南駅に到着、一行は駅ビルに入っていき、岩橋さんたち市の職員はここでもアプリの操作を熱心に説明していた。新しいシステムの便利さを感じられた体験となった様子だった。9月21日、生まれ変わったかわせみバスのお披露目式。市民の受け止め方も前向きに変わってきた様子。そして10月1日午前6時、ついに新かわせみバスの本格運行が始まった。
10月1日、福岡県那珂川市。第一交通の原田さん、本格運行を迎えた新かわせみバスを送り出す。その先にお客さんが待っていた、乗ってきたのは高齢のご夫婦。この日バスには1日中お客が乗っている盛況ぶりだった。初日だけで約500人が利用、想定以上の需要があった。
8月、大阪市にあるパチンコ店の跡地。その駐車場にAIでタクシーを変える、newmoの青柳さんの姿が。ここで、新しいタクシー会社を立ち上げる。年季が入った黒のセダンタクシー、傘下のタクシー会社から余っていた車両70台を集めたもので、新車と合わせて約130台ある。さらにAIの活用で業務を効率化し、待遇面や働く環境をより良くすることで、もっと多くの運転手を集められると考えている。その青柳さんが、さらなる一手。それは運転手がいらないライドシェアの究極の姿だった。
神奈川県横浜市の自動車教習所、この日は休みでnewmoが貸切にして自動運転車両の実証実験をしていた。newmoは2030年までに、運転手のいらないレベル4の自動運転技術を確立したいと考えている。今後、大阪・堺市と協力して自動運転タクシーの実用化を目指していくことも決まった。
エンディング映像。
「ガイアの夜明け」の次回予告。
「ワールドビジネスサテライト」の番組宣伝。“5兆ドル企業”CEOを直撃。
