- 出演者
- 長谷川博己
オープニング映像。
福島県いわき市にある巨大リゾート施設「スパリゾートハワイアンズ」。館内に入ると名前の通り南国ムードの空間が広がり、家族で楽しめるテーマパークとして年間100万人が訪れている。中でも目玉は1日3回行われる、フラガールのダンスショー。来年60周年を迎えるハワイアンズ、常磐興産という地元企業が運営している。去年社長に就任した関根一志さんは、地元いわきの出身。生え抜きの社長としてハワイアンズを引っ張るが、ギリギリの経営を強いられていた。2011年の東日本大震災でハワイアンズは施設に大きな被害を受け、約200日間の休業を余儀なくされた。さらに新型コロナによって約3カ月間の休業と、赤字が続き財政が一気に厳しくなった。多額の負債に加え、追い打ちをかけたのが施設の老朽化。この先、新たな投資を続けることが難しくなっていた。
そんなハワイアンズに買収を仕掛けている会社が東京・港区にあった、去年11月5日にその動きを取材していた。2か月前から常磐興産の株を買付け始め、この日目標としていた85%以上を保有した。仕掛けたのはアメリカの投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」。運用資産総額は7兆円を超える。2023年にはそごう・西武を買収し、その名を日本中に知らしめた。今回指揮を取った山本俊祐さん、ハワイアンズをどう見ているのか。
去年11月、ハワイアンズの会議室に常磐興産の社員たちが集まっていた。そこへやって来たのは、フォートレスのグループ会社の社員たち約20人。今回の買収を計画し、先頭に立って動いた山本さんも自ら乗り込んできた。ハワイアンズの再生を始めるにあたり初の顔合わせ、山本さんは代表権のある会長への就任が決まっていた。山本さんは、早稲田大学在学中にバックパッカーとして世界を旅行していた、旅を続ける中で心を惹かれたのがホテルだと言う。その後、外資系証券会社を経てフォートレスに入社。フォートレスが買収したホテルを運営する、マイステイズ・ホテル・マネジメントを立ち上げ会長に就任した。2021年には、日本郵政が運営していたかんぽの宿の大半を取得することを決め、それを新たに温泉ホテルチェーン亀の井ホテルとして再出発させた。客室稼働率を2割近くアップさせ、赤字だった経営を立て直した。他にも経営不振に陥った各地のリゾートホテルを買収、その代表がホテルニューアカオ。海の上に建つ珍しい立地に目をつけ、施設の個性を最大限に活かすため山本さんが始めたのはマリンアクティビティー。ホテル内から釣りができるなど、そこにしかない魅力を見出し集客につなげる山本さんの戦略。日本各地のリゾートやホテルを買収し、復活させてきた山本さん。その数は今や業界第6位の184棟にのぼる。
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ハワイアンズをどう再生するのか。買収前に客として訪れたことがある山本さんだが、改修に先立ち施設内を細かくチェックする。続いて向かったのは飲食スペース、オープン以来施設の拡張を続けて来たハワイアンズだが、資金が足りていないことから客の満足度に直結する場所に手が回っていなかった。さらに現場からの聞き取りも行う。今回呼んだのはフラガールたち、近年の猛暑もあり熱がこもってしまうと言うステージ。日本のハワイを目指し開業したハワイアンズ、しかし時が経つに連れいつしかそのコンセプトがあいまいになり、どこにでもあるような施設に変わっていた。ここでしか得られない体験とは。目指すはリアルなハワイ体験、まず目を付けたのがホテル内のレストラン。ホテルのバイキングにはファミリー客を意識したメニューが並んでいるが、旅行サイトのクチコミには「料理はハワイっぽさに欠けていた」との声が寄せられていた。料理の改善のために山本さんが送り込んだ人物は、フォートレスのグループ会社でメニュー開発を担当する徳永慶さん。これまで10の施設で料理をリニューアルしてきた。どう変えていくのか。
今年2月、ハワイ・ホノルルに山本さんの姿があった。常磐興産の関根社長も一緒だった。ハワイアンズをリアルなハワイに変えるために向かったのはWATG社、ホノルルに本社を構える設計会社で、実績は折り紙付き。ハワイ最古のホテル「モアナ サーフライダー」や人気の「ロイヤルハワイアン」など、ハワイの有名ホテルの内装デザインを担当してきた。山本さんはこの会社にハワイアンズの改装を依頼した。しかし、1人だけ首を傾げたのは関根さん。長年家族で楽しめるリゾートを目指してきたハワイアンズ、常磐の文化を大事にしてほしいと話した。そんな関根さんに対し山本さんは、関根さんは今の施設ありきで考えている、お金をかけて施設自体を変える発想に転換してほしいとのことだった。
帰国後も山本さんは、自ら再生した石垣島のリゾートなどに関根さんを連れて行った。家族客以外にも客層を広げようと考えている山本さん、大人が楽しめるバーを作ろうとしていた。しかし、すれ違いはここでも起きていた。頑なな関根さん、そこにはワケがあった。ハワイアンズの歴史は常磐炭礦に始まる、本州最大の炭鉱だった。石油の台頭により炭鉱は閉山へ、廃れていく街を守るため持ち上がった計画が巨大なレジャー施設に活路を見出すこと。この壮大なプロジェクトにいわきの女性たちも自らフラガールとして参加、こうして1966年地元と力を合わせて常磐ハワイアンセンターが開業した。ハワイアンズの歴史はフラガールの歴史、今回の買収はスタッフたちにも破門を広げていた。常磐興産に入社して13年目の小室美咲さん。小室さんは最近までフラガールとしてステージに立っていた、茨城県出身で幼い頃からハワイアンズに通い高校卒業後に夢だったフラガールとしてデビュー。18代目のキャプテンも務めていた。引退と共に退社するメンバーが多い中、小室さんは広報部門への移動を志願しフラガールの魅力を発信するラジオ番組も始めた。裏方としてハワイアンズを支えて行こうと決めたのだった。館内にあるフラ・ミュージアム、フラガールが繋いできた歴史を展示する大切な場所だが、客の姿はほとんどない。そこに山本さんが視察に来た、客を楽しませることを考えていないと不満そうな山本さん。数日後、関根さんを伴ってある場所を目指した。
ガイアの夜明けはTVerで配信。
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ハワイアンズの再生を手がけるフォートレスの山本さんは、常磐興産の関根社長とある場所へ向かうことにした。見えてきたのは車で15分ほどの場所にある、不思議な建物。かつての炭鉱時代に使われていた石炭を選別する施設の跡地。ハワイアンズの歴史を活かした、ここでしかできない体験を作るため山本さんは何か思いついた様子だった。その一方で、4万4000円で通い放題の年間フリーパスの販売を3月で終了する決定を下していた。年パス廃止に上がる不満の声に、山本さんと関根さんは何度も話し合っていた。
宮崎県宮崎市、フォートレスがハワイアンズとほぼ同時期に買収した巨大リゾート「フェニックス・シーガイア・リゾート」。バブルに沸いた1980年代、2000億円をかけたプロジェクトが始まった。作られたのは全室オーシャンビューの超高層ホテルに、東京ドーム7個分の広大なゴルフコース。さらに、世界最大級の屋内プールと豪華絢爛を極めたリゾートだった。しかし、バブル崩壊と共にわずか7年で経営破綻。紆余曲折を経て、2012年には統合型カジノリゾートを目指すセガサミーが買収。直近では2期連続の黒字だった。ところが去年、カジノを含む構想が頓挫したことによりシーガイアは再び売却へ。その時、手を上げたのがフォートレスだった。去年10月今後の方針を決める会議が開かれた。山本さんが打ち出したのは、メインターゲットの変更だった。これまでのシニア層や夫婦客からファミリー客に変えようと言う。ファミリー客を取り込むための第一歩、山本さんが目をつけたのはロビーにあるバー。続いて向かったのは客室、これまでシニア層などがメインだったシーガイアは8割以上が2人部屋だった。そこで既存のベッドの下に折りたたみ式のベッドを収納、家族客の受け入れ体制を整えることに。さらに、山本さんが着目したのは空きスペースになっていた駐車場。家族が楽しめるアクティビティとして、変わった自転車やゴーカートが走れるコースを作ろうと考えた。さらに、ホテル横にあった空き地には子どもが楽しめるプールを新設する予定。九州を代表するファミリーリゾートを目指すという。
迎えた今年6月、ファミリー客向けの新たなアトラクションが開始した。駐車場だった空きスペースは、ゴーカートのサーキットに。安全に走れるコースへ生まれ変わっていた。子どもだけでなく、大人も楽しめる。ファミリー客も行きたくなるリゾートへと変貌を遂げるシーガイア、その効果は数字にも現れ始めていた。夏の客室の稼働率が、2年前の同じ時期と比べ2割近くアップした。そんなある日、ホテルのエントランスにスタッフが集まっていた。シーガイアを盛り上げようと、山本さんがある人たちを呼んだのだった。
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宮崎市にあるフェニックス・シーガイア・リゾート。その施設を買収した投資ファンド・フォートレスの山本さんが今年6月、ハワイアンズの関根社長と選抜されたフラガールたちを呼んだのだった。そこには小室さんの姿もあった。フラガールたちが向かった先には、中庭に作られた特設ステージがあった。そして、ハワイアンズとシーガイアがコラボしたショーが行われた。お客さんも大喜びだった。ショーを企画した山本さん、その裏で日本人の旅の形を変えるある戦略を進めていた。
東京・港区にあるフォートレスの本社が入るビルでは、新たな計画が形になろうとしていた。それは一回の旅行で、日本各地に点在するフォートレス傘下のホテルを巡る旅のプラン。まずは来年の夏、九州一周ツアーの販売を始めると言う。その目玉の宿泊先に、宮崎のシーガイアも組み込まれた。一方、福島のスパリゾートハワイアンズでは4月、ホテルで出す新メニューが続々と完成していた。そして、ホテルのバイキングがリニューアルしロコモコなど本格的なハワイ料理が並んた。年パスの廃止については、代わりに4月から「地元割」というサービスを導入していた。いわき市民は入場料が半額になるというお得な制度。さらに6月には、ガイドの解説と共に炭鉱跡などを巡るバスツアーも始まった。ハワイアンズの歴史を肌で感じて貰おうと山本さんが発案、合わせてフラ・ミュージアムも大きく改装する計画。変わり始めたハワイアンズ、肝心の施設もその全貌が見えてきた。
いわき市役所、常磐興産の会長になった山本さんが関根社長と新たな取組の報告に訪れた。着々と歩みを進めるハワイアンズ、施設の改装案も固まってきた。フラガールのステージは、よりハワイ感のある舞台へと作り変える。さらにプールサイドには、南国風のバーが新設されることに。これから110億円をかけて順次行われる施設の改装、全て出来上がるのは2028年1月の予定。外資の力を借りて、ハワイアンズは新たな一歩を踏み出した。
エンディング映像。
「ガイアの夜明け」の次回予告が流れた。
「ワールドビジネスサテライト」の番組宣伝。日銀決定で波乱のマーケット。
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