- 出演者
- 長谷川博己
オープニング映像。
8月、東京ビッグサイト。この日1万人以上が詰めかけたイベントが開かれた。そのテーマは「投資」。会場にはマンション経営などの不動産投資や、FX・為替取引、他にもダイヤモンドや金など投資商品を紹介するブースが並ぶ。中でも人々の関心を集めていたのが「NISA・iDeCo相談コーナー」。投資への関心の高まりから、個人株主が急増。2024年度末には1599万人となり過去最多を更新した。今月に入り、日経平均株価は過去最高値を更新した。
7月、東京・千代田区のとあるビルで個人投資家向けにセミナーが開かれていた。主催したのは、農林中金バリューインベストメンツ。投資信託「おおぶね」を運用している会社。「おおぶね」の最高投資責任者が奥野一成さん。NISAでも購入できる「おおぶね」その運用方針は、自社で厳選した28社に投資その株を原則的には長期で持ち続ける。運用実績は1年以内で見るとマイナスになる場合もあるが、5年以上の保有では倍以上に増えていた。奥野さんは月に1度個人投資家に運用方針を説明、直接質問にも答えている。奥野さんは「日本長期信用銀行」などを経て、2014年に仲間と農林中金バリューインベストメンツを設立。2017年から個人向けの投資信託「おおぶね」の運用を開始した。奥野さんが運用の手本にしているのは、”投資の神様”と呼ばれるアメリカのウォーレン・バフェット氏。「買うのは株や債券ではなく、企業そのもの」という投資の哲学。農林中金バリューインベストメンツは社員44人、3213億円を運用している。投資先についての検討会議が始まる、集められたのは社内のアナリストたち。それぞれに担当する会社がある。おおぶねシリーズの投資先の一つ、味の素。その経営状況を分析する、議題は収益性の低い冷凍食品について。調味料やヘルスケアの利益率は10%前後なのに対し、冷凍食品は4%以下。
検討会議の翌週、奥野さんたちが向かったのは味の素の本社。トップの中村茂雄社長自ら対応してくれる。利益率の低い冷凍食品事業の今後について切り出した奥野さん、原材料などの高騰もあり利益を生み出しにくい状況が続いているという。そんな中、中村社長が訴えたのは自社の強みを活かす方法だった。1時間じっくり中村社長と語り合った。こうやって企業の成長性を見極めていく。
ブラジル・サンパウロ。奥野さんがやってきたのは、10年前から投資している企業。ここでも幹部が出迎えてくれた。その株価は10年間で7倍に膨らんでいた。
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6月中旬、ブラジル・サンパウロ。「おおぶね」の最高投資責任者・奥野さんがやってきた。ここに長年投資している企業の拠点がある。世界最大手の農業機械メーカー「ディア」の研究開発センター。本社はアメリカだが、農業大国として成長するブラジルの可能性に経営資源を投入している。この日は世界中から主要な機関投資家を集めた説明会。日本人で参加したのは奥野さんのみ、誰よりも多く質問をぶつける。ディアの強みは広大な農地で力を発揮する農業機械の開発・製造。ブラジルの農業機械の市場でディアのシェアは40%に達している。アメリカ本社から来ていたディアのCFOも、奥野さんのために時間を割いてくれた。この会社が食糧問題と向き合うことで、今後も成長していく手応えを感じていた。本当に価値がある企業を探して株を持ち続ける、奥野さんが示す”株主になる選択肢”。
一方、日本で個人株主を増やすために前代未聞の仕掛けを考え勝負に出たのが、前澤友作さん。前澤さんが、去年2月に「カブ&ピース」という新会社を設立し、かつてないサービスをスタートさせた。それが「KABU&」、生活インフラ関連のサービスを提供しながら、その利用料金に応じてカブアンド社の未公開株と交換できる株引換券を付与する。それが最大の特徴。この日オフィスでは、大量の書類の束を確認する社員の姿があった。
去年11月に「KABU&」というサービスをスタートさせた、前澤友作さん。6月20日に第一期の株主が誕生した、発行された株式は4億株以上。法務局への登記申請の書類も、前例のない量を持ち込むことになった。69万人という株主数は、6月17日時点で日本を代表する大企業に次ぐ国内9位。未上場の会社としては異例のこと。さらに今回、株主になった人たちの半数以上は株式投資の未経験者だった。KABU&で初めて株式を保有したという、医師の路川さん。軽い気持ちで株主になったという。電気や携帯電話・ウォーターサーバーなどをKABU&のサービスに切り替えた。この時、路川さんが保有する株は7897株、発行価格が1株3円のため23691円になる。千葉県にもKABU&で初めて株主になったという人がいた。配送ドライバーの倉沢さんは、テレビのCMなどで知りすぐにクレジットカードやネット回線などをKABU&に切り替えた。株式投資に興味はあったものの、これまでは手を出せなかったという。倉沢さんも第一期の募集で6708株を手にした。株式投資のハードルを下げたいと言う前澤さん、その先に思い描くのは「国民総株主」。
株主との向き合い方を変えることで、成長を模索する企業もある。アシックスのCFO・林晃司さん。今取り組んでいるのは個人株主の拡大。アシックスのシューズが好きで愛用している人が、アシックスの株も持ってくれるこれが林さんの描く理想。アシックスは、2022年から売上高は3年連続で過去最高を更新している。好調を牽引しているのはランニングシューズ。更に、高級ラインのオニツカタイガーが海外でも人気。業績の好調を受けて、株価もこの3年で6倍に成長。最高値を更新し続けている。6月、札幌市のホテルの大きなホールを借りて、イベントを仕掛けようとしていた。休日を利用しての個人投資家向け企業説明会、アシックスの株をすでに持っている人も、まだ持っていない人も参加できる。中々の人気、今年日本各地の中核都市8か所で開催予定。会場には、足の形状を正確に測定できる装置もあり、自分にピッタリのシューズを見つけて愛用者になってもらう作戦。アシックスの会長兼CEO・廣田康人さんも駆けつけ、自ら業績を説明する。このイベントの醍醐味は、個人が大企業のトップに直接質問をぶつけられること。アシックスは去年、政策保有株を売却した。企業株主との持ちつ持たれつの関係を手放したのだ。世界のスポーツ用品大手の時価総額を見ると、アシックスは約2兆7000億円、ナイキやアディダスからは大きく差をつけられている。林さんたちは個人投資家や、海外の投資家の声を経営に活かしさらなる成長につなげていきたいと考えている。
企業間の株式持ち合いをやめたことにより、アシックスの株式の半分以上を持つのは海外の投資家になった。アシックスは売上の8割が海外、林さんの主戦場も海外となる。この日は各国の財務責任者とのミーティング、すると「在庫を抱え過ぎてしまうリスクがある」という意見が。在庫を抱える日数は、海外の投資家が注目している重要な経営指標の一つ。
7月中旬、オーストラリア・シドニー。林さんが在庫を調査するためにやってきた。オーストラリアではアシックスがランニングシューズのシェア40%を締め、ダントツの1位と重要な市場。まず向かったのは、ショッピング街にあるシューズ専門店。次は、今年稼働したばかりの最新鋭の倉庫。ここは、オーストラリア全土への発送拠点として作られた。システムを自動化したことで、配送効率が上がり在庫日数の削減に貢献しているという。林さんは、ここにヨーロッパや北米からも責任者を呼び更に在庫日数を減らす方法を探る。そして、集めた幹部たちに向かって「過剰在庫ゼロ」を新たなスローガンとして掲げた。更に現場では、ステージに上がって宣言。CFOがここまでやるのが林さん流。オーストラリアのCFOも経営の変化を感じていた。更に、オーストラリアでも投資家のもとを回る。訪ねたのは、まだアシックス株を持っていない投資会社。投資家との面談は年に400回以上行っているという林さん、CFO自ら投資家とオープンに話し合う。これがアシックスの”ガチンコ経営”。
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3ヶ月に1度、市場の評価が下される日がやって来た。8月13日、この日は中間決算発表日。前回の1月から3月期の決算発表後には株価が急落していた、林さんも落ち着いていられない。まもなく決算が開示される。
8月13日アシックスの中間決算が発表される。投資家と向き合う”ガチンコ経営”を進めて来た林さん、四半期に1度市場の評価が下される日。株価は今年度最高を更新し、終値は4163円。時価総額が初めて3兆円を突破した。在庫日数も147日まで改善、目標の140日が見えてきた。廣田会長も満足そう。