- 出演者
- 長谷川博己
オープニング映像。
横浜市で一番人口が多い港北区。52平米2LDKのマンションに5年前から住んでいる飯塚さん一家、子どもと3人暮らしだが8月に第二子が誕生予定。家族が増えるのをきっかけに引っ越しを決意した。このエリアの地価は10年で約24%上昇した、新築マンションの価格は平均8264万円。新築は早々に断念した飯塚さん、中古を購入しリノベーションすることにした。8月に完成予定の家の間取り図を見せてくれた。しかし、工事が始まってからわかったこともあったという。アスベストの処理などが必要になったことで12万円高くなり、網戸が古すぎて交換するなど追加費用がかさんで行った。最初の見積額は約1100万円だったが、着工金や想定外の費用も加わり合わせて1374万6000円と25%も増えてしまった。リノベーションとリフォームに関する調査によると、最初の予算と比べ実際の費用は平均約5割増しになるという。新築に比べ安く住まいが手に入るはずのリノベーションだが、その費用の内訳は利用者にわかりにくいのが実情。
東京23区の新築マンションが1億円を超える住宅価格高騰の中、リノベーションが注目されている。国も期待し、2023年の時点で12.3兆円の市場規模を将来的には20兆円まで引上げる目標を示した。この波に乗ろうと、無印良品を展開する良品計画など異業種からの参入も増えている。リノベーション専門の企業も多く、中でも画期的な取り組みを始めたのが、2011年に設立されたグルーブエージェント。これまでに1300件の実績がある。そして今年、勝負をかける新サービスが「定額制リノベーション」。施行ごとに料金が変動する一般的なやり方ではなく、平米数に応じた料金をあらかじめ提示するというもの。
夜8時、オフィスで1人作業していたのは、定額制リノベの開発責任者・野田歩夢さん。金額や内容について一任されている。定額制リノベでは設備や素材は決められた選択肢から選んでもらう、床材は野田さんが厳選した約60種類の中から、壁紙は1000種類の中から2種類を選べるようにした。野田さんは設計士、現場での経験を生かし約1年かけて素材を選んできた。定額制なので、従来かかっていた見積書の作成期間は必要ない。更に、打ち合わせを5回までにすることで人件費の目処も立てやすい。定額制は可能なのか、4組のモニターを募り検証することになった。
2月、東京・葛飾区。モニターの一組・増田さん一家は、築41年の物件を1400万円で購入した。キッチンも含め1つのスペースにすることで、子どもやペットものびのび過ごせるようにと考えている。定額制とはいえ、自由設計が売り。増田さん一家は大胆に作り変えようとしていた。この日、グルーブエージェントのオフィスが入るビルでは、増田家の内装についての打ち合わせが行われていた。寝室の一部の壁紙を白から青へ、次々と要望を伝えていく増田さん。更に設備にもこだわりがあり、通常のガスコンロではなくプラス4万円で掃除がしやすいタイプにアップグレードした。野田さんが作ったプランには、追加だけでなく減額のオプションも用意しており、料金はひと目でわかるようになっていた。打ち合わせの結果、67平米に対する定額1250万円に加え、オプションなど約50万円。合わせて1300万円の見積もりとなった。
3月、いよいよ工事開始。古い内装や設備が全て解体・撤去されていき、コンクリートがむき出しの状態になった。40年以上経った配管なども全て取り替えるフルリノベーション。野田さんは、今の仕事にやりがいを感じていた。高校生の頃、スペインのサグラダ・ファミリアに憧れたのが設計士を志したきっかけだった。去年、優れたリノベーション物件を対象とした栄誉ある賞で最優秀作品賞を獲得した。工事着工から2か月、増田さん夫婦が進捗を確認しに来た。最後の打ち合わせで変更した壁紙、部屋の良いアクセントになった。更にコンロの横には、油ハネをしても掃除がしやすい光沢のあるタイルが貼られている。着々と進む工事、完成後の暮らしが具体的にイメージできるようになってきた。しかし、部屋のところどころに大きな穴が空いていた。様々な管を通すため、マンションの建設当初から開けられていたものだった。リノベーションする前はパネルが貼られていて見えなかったが、その上に色んな配管が通っていた。解体し配管を移設したことで、穴だけが15個以上残ってしまった。こうした穴が出てくるのは当然だが、今回はその数と大きさが想定外だった。
ガイアの夜明けはTVerで配信。
- キーワード
- TVer
5月中旬、グルーブエージェントでは定額制リノベーションの現場で起きた問題点を話し合っていた。この日の議題は、壁の穴など解体後に判明した不測の事態について。リノベーションではこうした予想外に備えた”予備費”が計上されているが、予備費を超えるコストが発生した場合に”定額制”は守れるのか、大きな問題だった。すると取締役の西村さんから、普段から予備費の一部を保険のように積み立てておいてそれを充てるという提案があった。予備費を超えた時でも追加請求はしないことになった。いよいよ物件を引き渡す日、依頼主の増田さん一家がやってきて完成したマイホームを隅々まで見て回る。キッチンとリビングは対面式の広いリビングになり、玄関には広い土間を作った。気になっていた穴は、全てモルタルで補修されていた。目に見える所だけではなく、ガス管や電気配線など設備の検査結果もあり。リノベーション協議会の品質基準もクリアしている。そして最終見積は1292万円、当初の予算1300万円以下に収まった。
埼玉県川口市のとある住宅街を覗くと、特大のスピーカーを持って注意を促して回る人がいた。この街で60年リフォームなどを手掛けてきた鈴木稔さん。点検商法への注意の呼びかけだった。鈴木さんは悪質業者に対して憤りを禁じ得ない。こうしたリフォームを巡るトラブルの相談件数が増えている、この数年は1万件前後で推移していた。都内の閑静な住宅街にあるお宅では、おととし見知らぬ業者が訪ねてきたという。その日の内に契約してしまった家主の山田さん、屋根と雨どいの交換をしたが一般的には300万円ほどでできる工事に600万円請求された。
山田さんは300万円ほどで済む屋根などの修理でA社に600万円請求された。会社を訪ねてみると、既に廃業していた。違法に高額な工事を請け負ったとして、建設業法違反の罪で関係者数人が罰金刑となった。事件の中心人物は一審で有罪判決を受けている。そのA社から1年半に渡って仕事を受けていた業者を取材することができた。自宅に隣接する仕事場に案内してくれた男性は、15年以上塗装業に携わる高橋さん。A社の報酬の多さに驚いたという、1か月に6件ほどの塗装工事で振込額の合計は358万円に達していた。相場の1.5倍~2倍だという。
- キーワード
- 警視庁
点検商法の中でも、国民生活センターの集計では屋根に関する相談が多いという。そんな屋根のリフォームトラブルを防ぐヒントとなる会社があった、静岡市で屋根の工事を請け負う長澤瓦商店。この日向かったのは、静岡市内にあるアパート。雨漏りしているかもしれないので見て欲しいという依頼だった。案内されたのは2階の角部屋、屋根裏に雨漏りが原因だと思われる大きなシミがあった。早速屋根に登るかと思いきや、取り出したのはドローン。長澤さんは悪質な点検商法と差別化するため、まずはドローンを使用している。見えてきたのは2色に塗り分けられたかのような屋根、左側の濃い部分が5年前に修理した跡の様子。お客さんと一緒にドローンで大まかな状況を確認した上で、細部を見るため屋根に登る。綺麗に塗装したように見えるが、屋根板の隙間を塗り固めたことで逆に水が逃げ場を失ったという。長澤瓦商店が行う屋根の点検費用は5000円、丁寧な説明を心がけ見積もりは後日作り点検当日に契約することはない。
ドローンを使った点検でお客さんに安心してもらう、長澤瓦商店の今のやり方にきっかけをつくってくれた人がいた。明正剛典さん、長澤さんとは7年前からの付き合い。以前、ドローンの会社に務めていた明正さんは屋根職人を集め各地で講習会を開催し、ドローンが点検商法撲滅の有効な手段になり得ると提案していた。共感した長澤さんはいち早く取り入れた。ドローンの講習会を通じて全国の屋根職人と交流を深めていった明正さん、東京・東村山市の内野友和さんもその1人。明正さんは3年前、屋根業者向けのデジタルサービスを提供するハウスケープを企業した。顧客管理ソフトやAIを使ったシミュレーションソフトなどを開発・販売している。「STOP!リフォーム詐欺 やねプロ」というサイトを立ち上げ、点検商法撲滅の活動も行っている。中でも力を入れているのは、信頼できる屋根業者のリストを作ること。現在掲載しているのは17社、その中には長澤瓦商店もあった。職人が屋根の国家資格を持っていることや、修理の目安となる価格を明記し安心して依頼できる会社だとアピールしている。
屋根職人の発信力を高めていきたい、明正さんは「やねプロ」に掲載する職人を増やすため全国を回っている。この日訪ねたのは、奈良で200年の歴史を持つ老舗「瓦喜」。職人は、代表の小林喜之さんを含め2人でホームページは持っていない。屋根業者の多くは従業員4人以下の小さな会社なため、営業に力を裂けずハウスメーカーや工務店から仕事をもらう下請けとなっている。それを「やねプロ」に掲載することで、一般のお客さんからも直接依頼が来るようにしたいと明正さんは考えている。小林さんも直接仕事を受けたいとは思いつつ、価格の決め方などがわからずお客さんの反応も気がかりだという。この日、新しい挑戦に一歩踏み出したいと考えた小林さん、会社のHP制作を明正さんに依頼し「やねプロ」に掲載することを決めた。早速HP用の写真撮影、屋根の修理には自信のある小林さんだがポーズを取るのは照れくさそうだった。自己アピールは苦手でも、誠実で確かな技術を持つ小林さんのような人こそ知ってもらいたい屋根職人。見た人が頼みたくなるHP、明正さんの腕の見せ所だ。
7月、明正さんの会社では奈良の屋根業者「瓦喜」のHP作りが始まっていた。100枚近く撮った写真の中からトップページに使うとっておきの一枚を選び、会社の特徴と職人の想いをキャッチフレーズに込める。屋根業界を変える地道な戦いは続く。
エンディング映像。
「ワールドビジネスサテライト」の番組宣伝。参院選”台風の目”。