- 出演者
- 長谷川博己
オープニング映像。
2016年11月博多駅前、道路陥没事故。電気・ガスなどあらゆるライフラインが寸断された。神奈川県では去年、国道246号線で土砂災害が発生。道路は10日間通行止めになった。そして、未だ復旧作業が続くのが、今年1月埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故。原因は下水道管の破損、偶然通りかかったトラックが巻き込まれ運転手が命を落とした。老朽化が進む日本のインフラ、中でも耐用年数を超え限界間近の下水道管は”ほぼ地球1周分”。下水道管の破損による道路の陥没は年間約2600件。八潮の事故を受け、国交省が設置した有識者による対策検討委員会。再発防止策の提言をまとめた委員長は、政府や自治体の対策に声を荒げた。見て見ぬふりを続け、問題を先送りしてきた日本。
耐用年数を超えた下水道管の割合は2023年に7.4%、43年には42%に急増する見通しで点検や補修が追いつかない状況。千葉市の住宅街で36年前に設置された下水道管の点検作業に同行した。腐食の恐れがある下水道管は5年に1回以上の点検が義務付けられている。市の職員や専門の点検員が市民の安全と生活を守っているが、限られた予算に人手不足もあり、一気に老朽化する現場を回りきれない。千葉市は去年下水道料金の5.4%値上げを実施、更に来年度には13.6%の値上げが必要と試算している。
1月汚水管の破損によって引き起こされた八潮市の道路陥没事故。発生から1周間後にカメラも現場へ向かった。周辺約200世帯に避難勧告が出て、約120万人に排水自粛を要請していた。事故に巻き込まれたトラック運転手は、この時まだ見つかっていなかった。この日、新たな動きとして陥没現場から約600メートル離れたマンホールから運転手の捜索を始めるという。準備されていたのは、点検専用ドローン「アイビス」。開発したのは、野平幸佑さん。今回は絵水道管の点検ではなく、事故現場での捜索活動という重要な役割を担うこととなった。人が入るのは危険な汚水管、離れた場所から行方不明の運転手を探す。捜索を初めて1時間、野平さんが出てきたがその表情は険しいものだった。
野平さんが勤務するベンチャー企業「リベラウェア」は、小型ドローンの専門会社。野平さんは開発の腕を買われてスカウトされた。八潮の下水道管で活用されたアイビスは、7年がかりで完成した最新作で、精密な操作性と小型化を両立させるために工夫を重ねたという。その実力は、障害物の隙間をかいくぐり例えぶつかっても大丈夫、ひっくり返ってしまっても自力で起き上がり飛び続けられる。撮影データの3D化も可能、下水道管のひび割れや破損の兆候を確認し補修の効率を上げることができる。アイビスは去年の能登半島地震でも活躍、二次災害の危険がある倒壊した家屋の中へ入り、内部の様子をつぶさに知らせ被害状況の把握と復旧作業に役立った。そして、福島第一原発でも極めて高い放射線量で人の侵入を阻む原子炉格納容器の中へ。事故から13年、誰もなし得なかった圧力容器の真下まで侵入した。大きく損傷した原子炉の中で、溶け落ちた核燃料の可能性がある物体も撮影。廃炉作業に向けた貴重な映像となった。
数々の現場で活躍するアイビスを生み出した野平さん。八潮の事故現場でも貢献したが、その時野平さんはアイビスの弱点を思い知らされていた。地下に埋められた下水道管にはGPSが届かないため、アイビスには位置情報を特定する機能をつけていなかった。そのため、運転席は発見したものの正確な場所を把握できず迅速な救助活動に移れなかった。早速改良に動き出した野平さん、開発していたのは操縦者との距離を計る装置で、小型化して搭載できれば正確な一が割り出せる。アイビスをもっと進化させたい、開発者魂に火がついていた。事故から3か月あまりが過ぎた5月、八潮の現場で行方不明だった運転手がついに見つかり、死亡が確認された。悔やみ続ける野平さんのもとにも、ニュースとともに遺族のコメントが届いた。
試行錯誤を重ねて4か月、改良版アイビスの試作機ができた。初めてのテスト飛行、八潮の下水道管とほぼ同じ大きさの管で、管轄する千葉市の職員も一緒に見届ける。操作性は問題ない様子だが、肝心の距離を正確に計れるのか。結果は、合格の範囲内。地下でこれほど正確に位置がわかれば、下水道管の点検や管理に活かせる。先日、リベラウェアは香港のAI企業と業務提携した。アイビスの集めた映像や位置情報とAIを組み合わせ、インフラの劣化状況を自動的に検知することを目指す。
危機は道路や橋にも。迫る限界、逆転の発想がそこに。
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悪条件だと寿命が50年と言われるコンクリート、開通から60年以上が経った首都高速道路は今あちこちで修繕工事が続いている。インフラの危機は道路にも、老朽化によって崩落が危ぶまれる橋も増えている。素人目にはわからなくても、専門家の点検では修繕など対策が必要な橋は全国に5万6000。その内5割以上が未着手の状態だという。山口県宇部市に建設業界注目の人・山本貴士さんがいる。老朽化に挑む異端児、山本さんは橋や道路などを補修する会社の社長。
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- 宇部市(山口)首都高速道路1号上野線
山本さんが一代で築いた会社「エムビーエス」。画期的な独自技術を開発し、90人を超える従業員が全国のインフラ補修に飛び回っている。この日も現場へ、小さな橋だが至る所にひび割れがあり天井もかなり傷んでいるように見えた。近隣の住民には欠かせない生活道路、いつできた橋なのか記録はなくいつ寿命が来るのか誰にもわからない。山本さんの独自工法による補修工事が始まった、ひび割れに充填剤を施すところまでは普通と同じ、一般の工法では表面を塗装し補修の跡を隠して仕上げるが、山本式は特殊コーティング材を補修した壁面に塗っていき独自に開発したガラス繊維シートをその上に貼っていく。修復した痕跡を隠さずに見せる唯一無二の”スケルトン工法”、山本さんが逆転の発想で生み出した。従来の補修に比べ、工事期間は3分の1、費用は4割ほど安くなるという。
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- エムビーエス
宇部市生まれの山本さん、6歳のころ父の会社が倒産し夜逃げ。その後、高校を中退してアルバイトを掛け持ちして家族の生活を支えた。20歳で起業し、仲間と2人で足場組立業からスタート。建物のリフォーム業にも手を広げると、建てたものを長持ちさせたいと感じるようになり。世界を回ってイギリスで見つけたのは、スケルトン工法のコーティング材。 直談判で契約にこぎつけ、その後ガラス繊維シートを独自に開発し画期的な技術が完成した。逆転の発想から生まれた工法が、大企業の目に留まる。2010年にNEXCO西日本が開通させた、第二京阪道路。その橋桁には補修ではなく新設工事で山本さんの技術が採用され、すでに15年が経過している。高速道路の下は国道1号線、剥落事故はまだ一度も起きていない。スケルトン工法の転機は、2012年に起きた笹子トンネル崩落事故。天井が100m以上にわたって崩れ落ち、9人が死亡した。この事故をきっかけに全国から補修の依頼が舞い込んだ。補強だけでなくその後の点検や管理がしやすくなる”スケルトン工法”。これまで覆い隠してきた”危険”への、一つの解決策となった。そして舞い込んだ大仕事、巨大な橋を守れるのか。
インフラ補修のプロ、山本さんに舞い込んだ大仕事。老朽化した長さ300メートル超えの橋を、これまで以上に強く美しく生まれ変わらせる。スケルトン工法の新たなチャレンジ。この日は強度のテスト、合格ラインは「1.5kN」。まずは、補強していない普通のコンクリートに力をかけると、すぐにひび割れコンクリートが意外なほどにもろいことがわかった。強度を上げた改良版スケルトン、1.5を超えれば今回の案件に使える。300メートルを超える巨大な橋を、スケルトンは守れるのか。結果は、合格ラインを超え改良版スケルトンは3.58という想定以上の数値を叩き出していた。
現場は長崎市にあった、改良版スケルトンによる補修を待っていた橋がここにある。20年前に開通した日見夢大橋、全長365メートル。近くには住宅街があり、万が一の事故も許されない。更に今回は、街と自然との調和も重視されることになり、古いコンクリートや補修の跡が透けて見えるスケルトンが仇となる。山本さんは改良版に秘策をこうじていた、一見白い塗料のような半透明。それでも内部に異変が起きると、外から見ただけでわかる。橋を作った建設会社からのたっての依頼だった。生活に寄り添うインフラ、美しさが求められることもある。建設業界の深刻な人手不足に加え、資材価格も高騰する中で今あるインフラを長く使い続けていきたい、それこそが山本さんの志。
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- 長崎市(長崎)
山本さんは止まらない。向かったのは、以前補修したあの”名もなき橋”。そこにまたもや唯一無二の画期的アイデアがあった。
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- 宇部市(山口)
インフラ補修のプロ・山本さんがこの日向かったのは、以前補修した”名もなき橋”。そこにまた新たな一手、補修した箇所に二次元コードを貼り付けその上からスケルトンで補強する。これなら人や時代が変わっても、補修した情報が受け継がれていく。
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エンディング映像が流れた。
「ワールドビジネスサテライト」の番組宣伝。イスラエルがイランに”先制攻撃”。