2025年5月9日放送 22:00 - 22:54 テレビ東京

ガイアの夜明け
【“奇跡の小麦”〜世界を変える日本人〜】

出演者
長谷川博己 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像が流れた。

”奇跡の小麦”世界を変えるニッポン人
コメ最高値 その裏で… 外国産の輸入が急増!?

去年の夏から始まった”令和のコメ騒動”。価格は1年で2倍近くにまで高騰し、未だ先行きは不透明な状況。コメの価格が連続で最高値を更新する中、食品展示会で一際注目を集めていたのは”コメを使った商品”。「株式会社 神明」は、日本屈指のコメ卸業者。社長の藤尾益雄さんは、農水省食糧部会のメンバーも勤めている。コメの流通に関わる立場から、日本の食の未来に警鐘を鳴らしてきた。長年の減反政策により、衰退し続けた日本の米作り。農家の数は、この50年間で8割減少。生産量も4割以上減っている。そんな中、需要を賄うため外国産米の輸入が急増。消費者の国産米離れが懸念されている。日本のコメ製作は大きな曲がり角に来ている。

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FABEX東京2025東京国際展示場神明農林水産省
世界の穀物危機を救え!”砂漠”でも育つ小麦とは?

一方、世界に目を転じると89の国と地域の人たちが主食にしているのは「小麦」。その価格は世界情勢や天候不順に左右され、大きく変動している。荒涼たる風景が続くアフリカの砂漠地帯に住む人達も、多くが小麦を主食にしている。その乾ききった大地に1人の日本人が乗り込んでいた。農学博士の辻本壽さん。専門は小麦の改良。国際機関の報告では、人口増加に歯止めが効かない。さらに近年の気候変動で、作物が育たずアフリカでは5人に1人が命に関わる栄養状態だという。辻本さんは生涯をかけ、過酷な暑さと乾燥に負けない小麦を生み出そうとしていた。今回アフリカの地に持ち込んだのは、人類の希望の種。「日本人が乾いた大地を緑に染める」そんな奇跡を、目撃することになる。

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アフリカ国際農業研究協議グループ国際連合児童基金農林水産省
博士が44年費やした戦い!

鳥取と言えば、誰もが思い浮かべる「鳥取砂丘」。その先にあまり知られていない施設がある。世界でも珍しい乾燥地に特化した専門の研究所「鳥取大学 乾燥地研究センター」。そこには外国の人たちの姿があった。アジアやアフリカなどの7カ国から約30人が研究に来ている。彼らを引き寄せているのが、小麦の改良で日本農学賞などを受賞している辻本博士。優しい笑顔がトレードマーク。

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ラクダ新疆ウイグル(中国)日本農学賞鳥取大学乾燥地研究センター鳥取市(鳥取)鳥取砂丘

2024年4月下旬、辻本さんにとって一年で最も忙しい時期を迎えていた。施設内の農場には、辻本さんが研究している”乾燥に強い小麦”が育っていた。夏になると砂丘の温度は60℃に、実験にはもってこいの場所だという。その畑の横では、特殊な環境を利用する企業がいた。砂地を月面に見立てタイヤの開発をしたり、過酷な環境下で様々な実験が行われている。辻本さんも大事な作業を始める。雄しべを全て抜き、違う品種のものを雌しべにつける交配作業。チャンスは年に一回だけ、多い時には300以上交配させる。記録はノートに。学生時代に農学を専攻、当時日本ではほとんど栽培されていなかったという理由で小麦の研究を始めた。気づけば44年の月日が立っていた、小麦一筋で何千・何万と繰り返した交配の記録に研究者の執念を感じる。辻本さんが作り出した小麦の種を保存している倉庫には、様々な特徴を持つ種が約1万。その中には、暑さと乾燥に強い性質の種もある。偶然、中国の山の中で見つけた野生種を、日本の品種と掛け合わせることで生まれた。辻本さんの原動力は、近年の気候変動で乾燥地帯が拡大し、過酷な大地で生きる人たちへの思い。しかし、小麦は一年に一度しか収穫できず、なかなか品種改良が進まない。そこで、日照時間をコントロールすることで年に4.5回収穫できることに。温暖化との追いかけっこ、改良を重ねても近年の気候変動により厳しい戦いが続いている。

辻本さんは10年前からアフリカの地で実証実験を始めた、場所はスーダン。持ち込んだ1000種類の内6つが、スーダンの環境に適応できることがわかってきた。イザットさんは、スーダンプロジェクトの現地リーダー。国の期待を背負い、大詰めの研究を辻本さんのもとで行っている。ところが去年5月、前の年にスーダンで再発した内戦が拡大し、実験場も戦火に巻き込まれたという。ゲリラが研究所を襲い冷蔵庫を持ち去ったために、保存していた大事な種は暑さで使えなくなってしまった。イザットさんも言葉を失う。事実上、スーダンでの実験が絶たれてしまった瞬間だった。これまでの努力が水の泡となって消えた。辻本さんも心の置所がない。

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スーダン
地元産で給食にパンを!

鳥取県内の「車尾小学校」では、給食の献立は地産地消がモットー。パンも地元の小麦。しかし、献立表を見てみると、人気のパンは1週間に金曜日の1回だけ。実は鳥取県は、生産性が悪いと小麦の収穫量は90年代半ばからほぼ0に。「給食の分くらい自分たちで作ろう」と集まった人たちがいた。大山の水を使った「大山こむぎプロジェクト」。現在は約300トン近くまで生産量を上げている。そんな農家の思いを後押ししていたのが辻本さん。2年前からは生産性の良い種を実験していた、上手く行けば品種登録も考えている。農家・製粉・パン屋、小麦は色んなに人の手を得て食べ物になるから創り手重視だと辻本さんは言う。パン屋の店主が大山こむぎの言い出しっぺで、自分の店でも使っている。こどもたちには地元の小麦で焼いたパンを食べてもらいたい、そんな思いで毎日作っている。

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作物統計調査大山こむぎプロジェクト大山カンパーニュ米子市立車尾小学校米子市(鳥取)農林水産省麦ノ屋
”砂漠”を緑に…博士の執念!

内戦で断ち切られたスーダンでのプロジェクト。しかし、新たなチャンスが。辻本さんの研究は世界が注目していて、モロッコの大学から共同研究の申し込みが来た。準備が整ったのですぐにでも来てほしいというものだった。鳥取で育った小麦が再びアフリカへ。しかし待っていたのは、スーダンより過酷な自然環境。去年8月、辻本さんが乗り込んだ。眼の前に広がる乾ききった大地は辻本さんのフィールドかと思われたが、予想以上に間伐が進んでいたため、大きな川は干上がり灌漑用水はここ何年も水が通った形跡すらなかった。この国で奇跡を起こせるのか。

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スーダンモハメド6世工科大学鳥取大学乾燥地研究センター
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”砂漠”を緑に…博士の執念!

アフリカの過酷な乾燥地帯でも育つ小麦を開発中の辻本博士。モロッコ経済の中心地、マラケシュには世界遺産に登録されている旧市街地がある。そこに辻本さんの姿があった、好奇心旺盛な辻本さんは庶民の暮らしを知る絶好の場所で是非見てみたいものがあった。迷路のような路地を行くと、旧市街に100はあるというパン窯の一つがあった。街のカフェやレストラン、リヤカーのパン売などを顧客にしていて、値段は1枚約15円。焼き上がるとすぐに売れていき、生地を作る人も焼く人も手を止めない。窯に一度火を入れると休むヒマはないという。ここは街の人たちの共同窯でもあり、家庭で作った生地を持ち込み手間賃を払って焼いてもらうとのこと。モロッコの小麦の市場価格はこの数年で1.5倍以上になっている。世界的気候変動と有数の小麦の産地だったウクライナの情勢が要因。値上げ分を政府が補てんすることで、国民の暮らしはなんとか守られていた。小麦の値段は庶民が一番気になるところ。

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マラケシュ(モロッコ)鳥取大学乾燥地研究センター

モロッコがある北アフリカでは、内陸の砂漠地帯のオアシスが次々と消え、都市を流れる川も干上がっていた。人々の生活が危ぶまれる。モロッコ中部のベンゲリル、この街に辻本さんへ共同研究を申し出た大学「モハメド6世工科大学」がある。農業や情報分野で最新テクノロジーを学ぼうと、アフリカ中から人材が集まっている。まず案内されたのはフェノーマと呼ばれる実験場、立方体のプランターが何百も並んでいて乾燥に強い穀物を研究している。この過酷な場所で人間が生きていくための食料を研究している、アムリ・モエズ教授。辻本さんを頼った人物だった。送っておいた小麦の種が届いていた、スーダンで10年進めた研究成果をさらに改良したものだった。これまでの苦労はムダにはしない、その数120種類。この環境下でも育つものなら全て実験対象。サボテンの実も貴重な食料、瑞々しく甘酸っぱい味。

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ササゲベンゲリル(モロッコ)モハメド6世工科大学

翌日の最高気温は47℃、農地の現状を知るために近くの村へ向かった。村に近づくとオリーブ畑が広がっていたが、乾燥に強く長年生き延びてきたオリーブの大木が枯れていた。幹線道路沿いに作られているのは農業用の水路だが、水はもとより流れた形跡すらなかった。人口740人のアラド村には、オリーブの木々に囲まれるように小さな小麦畑があった。収穫はここ数年芳しくない。やってきた日本人が、小麦の専門家だと知りみんなが集まってきた。種を手に取ってもらい品種の説明をすると、”今すぐほしい”と農家の願いは切実だった。遠くから日本人が来てくれたからと、腕を振るってくれたのは農家のおばあさん。作っていたのはモロッコ発祥の小麦料理、スープをかけ野菜や肉を乗せれば一番小さなパスタ料理「クスクス」の出来上がり。自家製の窯で自慢のパンも焼いてくれた、食卓には色んなパンが並ぶ。”小麦が食卓の主役”だ。

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アラド村(モロッコ)クスクスバグリールバットブート

大学に戻ると、種をまく前の栄養の分析などの検査が行われていた。収穫量が多いだけではだめだという。バトンを渡すモロッコの研究者に、自分の知っていることは全て伝える辻本さん。国を超え若い研究者に思いを伝える。12月辻本さんの種はまかれた、アフリカの大地を緑で染めることはできるのか。一方、日本でも新たな取り組みが始まっていた。

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モロッコ鳥取大学乾燥地研究センター
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若き研究者が挑む”希望の種”

鳥取の乾燥地研究センターには、小麦の品種改良の第一人者・辻本博士の背中を追いかけている研究者たちがいる。佐久間さんと石井さん、2人とも39歳の准教授。石井さんの研究は、まったく違うアプローチで見た目は普通の小麦だが、小麦と稲から作り出した雑種の種だと言い、自ら「イネコムギ」と名付けた。新しい食べ物で挑むのは、世界の問題である人口爆発。辻本さんの思いを受け継ぎ、子どもたちの時代を支えるつもりだという。一方、佐久間さんは小麦の一房の収量を増やす研究を地道に続けている。科学雑誌にも論文が掲載され、世界的に注目されている。飢えている人々のお腹を満たしたい、辻本さんと同じ思いだという。

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国際連合人口基金米国科学アカデミー紀要鳥取大学乾燥地研究センター
”砂漠”の農村で実るのか…

2025年4月中旬、モロッコ「モハメド6世工科大学」の実験場にまいた辻本さんの小麦が収穫間近に迫っていた。持ち込んだ120種類の種が、それぞれ成長している。以前辻本さんも訪ねたアラド村の人たちを大学に呼び、見てもらいたいのは同じ品種で水の条件を変えて育てた小麦。乾燥した小麦の中から成果を見比べて、実際に育ててもらおうという。農家の人たちは生活がかかっているので真剣。

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アラド村(モロッコ)モハメド6世工科大学

辻本さんが44年かけて作った小麦は、モロッコの暑さと乾燥に適応できるのか。120種類の種をまき、その結果が出た。農家の人たちに試してみたいものを選んでもらう、目に止まったのは水をほとんど与えなくても青々と育っている小麦。辻本さんの小麦は「アラド村の子供たち」と名付けられた。次の種まきからアラド村で使われることが決まった。小麦の改良に人生を費やしてきた辻本さん、生涯の研究対象として選んだ”小麦”に愛情を注ぎ込んできた。

(エンディング)
エンディング

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