- 出演者
- 長谷川博己
オープニング映像。
横浜の海に浮かぶのはイージス艦に、最大級の護衛艦のいずも。ジャパンマリンユナイテッドの江藤さんは防衛装備品の輸出制限が撤廃された中でビジネスの拡大に期待を寄せている。
護衛艦だけでなく、日本の造船業界全体が大きな転換点を迎えている。アメリカの船の建造量は0.2%に激減。日米政府は造船分野での協力を進めることに。背景にあるのは造船を国家戦略とする中国の存在。今や世界建造量のほぼ半分を占めている。さらに新規の受注量では8割以上を握っている。日本は造船業界の大型再編に打って出た。今年1月に国内トップの今治造船が2位のジャパンマリンユナイテッドを子会社化。日本勢が低迷してきた中で、この再編で世界第4位の巨大グループが誕生した。中国・韓国勢に対抗する構え。仕掛人は今治造船の檜垣幸人社長。日本が勝ち残るその武器は?
未来を拓く乗り物という映像が流れた。
かつて日本の造船業は経済成長を支える基幹産業だった。世界シェアの半分を握っていたがその勢いは失速してしまった。そんな中政府は、造船業に官民で1兆円以上を投資。2035年までに建造量倍増を目指す。香川県多度津町に造船日本復活を背負う工場が。多度津造船は日本最大手の今治造船グループの中核工場の一つ。現場を指揮する諸石和利工場長は造船一筋32年。ここでは現在一種類の船を専門的に作り続けている。7000台の自動車が積める自動車専用運搬船は全長200mあり、多度津造船ではこの船を年間3隻建造している。船内に案内してもらうと600台積める空間が12層ある。最大の特徴は船の心臓部で、ここで作っているのは燃料にLNGという液化天然ガスを使用しているが高い造船技術が必要になる。重油だけで走る従来の船に比べてCO2の排出量を30%削減できるという。書かうは100億円以上するが世界的な自動車輸送の拡大と脱炭素化を追い風に需要は急増している。
多度津造船の従業員は1000人。国の倍増計画を受けて増産が迫られる中、現場には課題が山積みだった。バーナーで熱しながら水で冷却することで巨大な鋼板を収縮させていく。船特有の立体的な曲面を作るために欠かせない高度な加工技術。人手不足こそが増産への大きな課題に。熟練の技を受け継ぐ次世代の育成をも急務。人材難に拍車をかけているのは、積荷の自動車をのせる床の製造。タイヤを傷つけぬように一つ一つの穴を職人技で滑らかにしていく。ライバルの中国勢は圧倒的な製造力を誇り、10年以上前から大型の溶接ロボットを導入し、生産効率を高めてきた。それに対し日本の造船所の多くは、いまだ自動化が進まずに熟練職人の技と経験が頼り。加えて、増産へのネックになっているのが船体の組み立て作業。プロペラはナカシマプロペラという場所から外注しているが国内シェアほぼ100%の専門メーカー。完全オーダーメイドで、熟練の職人が手塩にかけて仕上げていくが、完成して船に取り付けるのが一苦労。10人係で8時間もかかる。
海をわたって運ばれていたのは巨大なメインエンジン。重さは370トンあり、大型クレーン2機で釣り上げ、僅かな誤差も命取りな繊細な作業。3時間かかってもまだ完成は遠いという。敷地が狭く、ドッグが一つしかない多度津造船は生産効率をあげるためにドッグの隙間で2隻目を建造している。さらなる増産に向けて諸石さんはこのドッグにテコ入れをしようと考えていた。諸石さんが入社したのは日本の造船業がまだトップを走っていた1994年。その後、中国、韓国の台頭という荒波に抗い、造船の最前線に立ち続けてきた。6月には増産への突破口を探る諸石さんは、富士船舶装備へ。30年以上に渡り、今治造船グループの船内装備を専門にしてきたメーカーで、ここでは近い将来の増産を見越して、12億円を投じ、新工場を設立した。その中は多度津造船でも導入できていない最新の溶接ロボットが。機械化と省力化を勧め、生産能力を2割上げる計画。
諸石さんが注目したのは、ロボットだけでなく作業工程をデジタルで管理し、作業員の生産性を高める取り組みを行っている。刺激を受けた諸石さんは、増産に向けて省力化を進めていきたいと答えた。
ギリシャは最も貨物船を多く保有する国で、海上輸送の2割を担う開運大国。今年6月にはそのギリシャで世界最大級の船舶関連の展示会が開催。集まった企業は世界中から2000社以上。その中で存在感を放っていたのが中国船舶集団という中国の国有企業。建造量は世界1位を誇る。造船のスピードと安さが中国勢の売りで、韓国勢も参加している。巻き返しを図る日本ブースではCO2 排出量を9割削減する次世代の環境船をアピール。日本の切り札を売り込んでいたのは日本郵船の六呂田高広さん。日本の技術力をアピールした。そしてギリシャの有力な船主の姿も。造船大国復活として完成が急がれるアンモニア燃料船。日本の命運をかけた戦いが始まる。
転換点という映像が流れた。
造船大国復活へ、環境技術を武器に世界に挑む日本。今治造船グループのジャパンマリンユナイテッド有明事業所で、開発が進められている。今年1月に進水式という大きな節目を迎えた船が。六呂田高広さんは国内最大手の海運会社の日本郵船が発注したこの船こそが脱炭素時代へ、日本が切り札とするアンモニア燃料船と語る。一昨年には世界で初めて小型船をアンモニアで走らせた実験では重油を使っている時には黒かった排気ガスは、アンモニアを切り替えると無色に。燃やしてもCO2は出ない。液体での保存が水素やLNGに比べ簡単なアンモニア。しかし強い刺激臭や人体への毒性があり、劇物に指定される。取り扱いには十分に注意が必要。当時はどこも燃料化には成功しておらず、開発競争が起きていた。あれから2年が経過したが、救世主になるのか?
アンモニア燃料船プロジェクトは日本郵船が呼びかけ、国内の造船所や部品メーカーなどオールジャパンで開発が進められる。兵庫県明石市にあるジャパンエンジンコーポレーションは世界トップ3の大型船舶用エンジンメーカーで、開発から設計製造まで一貫してできる国内唯一の企業。開発部長の江戸浩二さん。日本の船造りの最先端を担うジャパンエンジン開発部。アンモニア燃料エンジンもここで開発している。部品の数は6万3000点で、通常の1.5倍以上にのぼるという。中でも苦労したのが、アンモニアの噴射装置は今回のために開発。毒性のあるアンモニアが万が一にも漏れ出さぬように配管は2重構造にしている。去年10月に四年がかりの開発の末に完成したアンモニア燃料エンジン。有明の造船所に運ばれ、船の内部に組み込まれた。先月には建造作業が佳境に入ったアンモニア燃料船のエンジンルーム。直列7気筒エンジンは、噴射装置に送る燃料を通常よりも多くし、最大出力は1万1000馬力を実現。エンジン制御室ではアラームをテストし既定値を超えると警告音が鳴る。毒性のあるアンモニアだけにチェック項目は通常の船の倍以上。万が一エンジンから漏れ出した場合を想定し、エンジンルームの外側には扉を何十にも挟み制御室も。手元にはアンモニアを安全に扱うためのマニュアルが。
6月下旬、プロジェクトリーダーの六呂田さんが初めて船に乗り込み、仕上がりをチェックすることに。完成後はアンモニアを運搬しながら船の燃料としても使用する。オールジャパンの叡智を結集したアンモニア燃料船。試験航行を繰り返し、11月にはノルウェーにある世界最大の窒素肥料メーカーに引き渡される。同じ頃、営業の最前線では、受注争奪戦が行われていた。
日本シップヤードは今治造船グループの営業を担当し、船を売り込んでいる。営業本部の嶋倉さんが進めているのは海外客向けの大型プロジェクト。しかし競合先に韓国と中国が出てきたという。ライバルとの受注競争が今勝負どころだという。船舶の取引は極秘事項で激しい情報戦が繰り広げられている。受注を争う中国、韓国勢の動きを察知し緊急会議へ。値引きの限界など交渉に使用できる取引条件を社長と詰めた。暗中模索の中、6月中旬になり大型案件の最終交渉が迫ったこの日、日本が誇る品質の高さと維持費の安さで勝負する。
東京・羽田空港の国際線に嶋倉さんの姿が。売り込み先に呼ばれ今から顧客のもとへ。そして今週嶋倉さんのもとに吉報があり。中国や韓国勢よりも提示した金額は高かったものの、売り込み先から日本の船を購入する意思が正式に伝えられた。
先週に多度津造船では今治造船の社長や日本郵船の社長など重鎮の姿が。この日はスーツ姿の工場長の諸石さんの姿も。この日一隻の船が船主が引き渡され、船内に関係者を案内し、1隻の完成は増産倍増の新たな幕開けに。
「ガイアの夜明け」の次回予告をした。
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