- 出演者
- 桑子真帆 折笠俊輔
オープニング映像。
日本一の米どころ・新潟県のJAえちご上越。ことしの概算金はコシヒカリの一等米60kgあたり3万円(過去最高)。店頭では5kg4500円ほどになる水準。幹部たちがギリギリの検討を続けた末の価格。概算金決定の1週間前、気にしていたのはJAと競合する民間業者の動向。このJAは、去年、コシヒカリの一等米に60kgあたり1万7300円の概算金を提示。しかし、民間業者に買い負けてしまい、取引先に約束した量を渡すことができなかった。このJAの概算金は、長年、1万4000円前後の水準で推移してきた。米余りが続き、市場価格が低迷していたため。概算金額が低いことで農家たちは苦しい経営を強いられてきた。地域一帯で米の作付面積は減り続けている。概算金をいくらに設定すれば農家は米を創り続けることができるか、JAえちご上越はことし初めて地域の農家や農業法人に対して大規模調査を行った。その結果、最低2万円強の概算金を支払わないと経営が立ち行かなくなる可能性がみえてきた。引き上げの必要性を感じる一方、消費者が新米よりも割安な米に流れてしまう不安も感じていた。そんな中、民間業者が猛暑による新米の品質や収量の低下を懸念し、去年を大きく上回る金額で買付に動いているという情報が流れてきた。それに対抗し、JA側も当初の想定を大きく上回る3万円台まで引き上げようという意見が出るようになった。
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- えちご上越農業協同組合上越(新潟)
各地のJAが概算金を引き上げた影響は、すでに流通現場に出ている。岐阜県の卸売業者は、JAからだけでなく、農家からの直接買付にも力を入れている。仕入れ値は軒並み3万円以上。買い負けないために去年よりも約5割ほど高い金額を提示している。現状では、今秋、消費者に4000円を下回る新米を届けることは難しいと感じている。
流通経済研究所の折笠さんをスタジオゲストに迎えた。ことしの概算金に3万円台をつけた所は新潟・秋田・岩手・熊本・大分。折笠さんは「米が不足するのではないかという不安感がどうしても拭えないので高値になってしまっている。今回の特徴として米であれば何でも集めたいという業者も多く、米の品種のヒエラルキーが崩壊し、全国どこでも米が高くなっている」などと解説した。
全国1300以上の店舗で年間3万トンの米を使用する大手牛丼チェーンでは、去年夏前から米の調達が難しくなり、会社自ら米作りに乗り出した。約2ヘクタールの耕作放棄地を借り受けて米作りをしている。最大の特徴は水を張らないこと。節水型乾田直播と呼ばれる栽培方法。この栽培方法は増産を目指す国も生産性の向上が見込める新たな方法として注目している。さらに、国が期待するスマート農業の技術も活用。今後も農作放棄地を活用して農地を広げていきたいとしている。
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価格を安定させるため、国が掲げ、企業が独自に取り組む増産。ただ、増産しすぎると米の価格が下がり、農家の経営が難しくなる可能性もある。そこで国が期待を寄せるのが輸出。2030年までに35万トンにまで増やす目標を掲げている。海外で販路を開拓してきた米専門業者は、需要が高まる一方で、これ以上輸出量を増やすには壁があると話す。国内で米の不足感が続く中、輸出用の米を集めるのが難しくなっている。米の量が安定しないため、設備投資など増産体制が追いつかない現状があるという。
増産しすぎてしまい、供給過多になった場合のことも考えておかなければならない。折笠さんは輸出・備蓄米に回す他、米粉やライスミルクなどの新たな需要を見出す必要があると話した。
大分・豊後大野で米作りをする親子。40年以上続いた赤字から脱却しようと去年から道の駅での販売を始めた。自分たちで決めた価格は3kg2700円。大きな利益は出なくても喜ばれる米を作り続けるのが夢だという。
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