- 出演者
- 片山千恵子 大和田獏 関根麻里 宇治原史規
介護・医療現場では深刻な人手不足が続いている。昨年度、介護職員の数が初めて減少。団塊の世代は全員が75歳以上となり、その影響は「2025年問題」として危惧されている。番組では、その現場を取材。
オープニング映像。
第1次ベビーブームに生まれた団塊の世代が全員75歳以上になり、介護や医療に大きく影響が見込まれる「2025年問題」と呼ばれている。更に団塊ジュニア世代と呼ばれる世代が15年後の2040年になると65歳になり、さらに85歳以上の方々が1000万人をこえる。介護保険サービスは、自宅で受けられるものと施設で受けられるものに二分できる。自宅なら「訪問介護」「訪問入浴」、施設なら「特別養護老人ホーム」「有料老人ホーム」など。自宅に暮らしながら日帰りで施設に通う「デイサービス」、介護支援専門員(ケアマネジャー)と相談していく方法などもある。厚生労働省の調査によると介護職員の数は2022年度の時点で215.4万人いるが、2026年度には25万人、2040年度では50万人以上足りないという推計が出てる。しかし、2023年度の介護職員は212.6万人と調査開始以来初めて減少してしまった。
江戸川区の介護施設を取材した。この施設で16年働いている介護職員の富田充貴さんは外国人の同僚と2人体制でこの日は午後5時から翌朝9時半まで28人の入所者の介護を行っていた。施設では職員を募集してもなかなか集まらず特に新卒は3年間入っていない。
ハードな介護現場で働く人たちの本音は何か。東京・文京区にある介護職員の人たちが悩みや意見を交わし合うカフェバーは、介護事業所代表の飯塚裕久さんが去年開いた。飯塚裕久さんは、介護職が社会からはじかれる存在になる危機感を持っていると話す。現役の介護職員や元職員など6人に話を聞く。富田充貴さんは2025年問題はすごく恐ろしい、今でも足りないのにもっと足りなくなる、きついから辞める、また減ってというサイクルにギリギリ歯止めをかけるのがやっとだと語る。宇井吉美さんは介護職員の経験を生かしてAI技術で現場を支援しようと大学時代に起業。開発したのは排せつ検知センサー。さらに、宇井さんは要介護者が支えられる側一辺倒の立場を辞められるように、ちょっと支えがあれば活躍できる方がいっぱいいると話した。大崎桜雪さんは「本人たちが何かを選んで挑戦する、まだ出来たかもしれない何かを出来ずに終わるのが嫌で」「当たり前の外とのつながりが断たれないようにしたい」と話していた。
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- 文京区(東京)
関根麻里は介護者の話を聞いて、作業からケアになった瞬間、ケアと言う言葉の凄み、思いを感じたと語る。宇治原は、介護職ってカッコいいなにならないといけない、そこに行くのが一番いいと語った。解説委員の池田誠一は、介護職員の給与問題は10年20年指摘され続けた問題、今になって始まったことじゃないと指摘。介護職員の給与は介護事業者が払うが、もととなるのが国が決めている介護報酬で、介護報酬が増えないと介護職員の給与は増えないという仕組みになっている。宇治原はマッチングアプリを使って隙間で働く人を介護現場でもいかせないかと提言。大和田獏は、母は99手前まで生きたが90歳くらいまで一人暮らしだったといい、何でも1人でやれて大丈夫だったが、90を超えた時にあまり動くことができなくなって施設に入ったら元気になったという。岸正浩は、経済産業省によると介護離職などによる経済的な損失が2030年には約9兆円になる見通しだといい、みんなでどうやって支えるかを話し合うことが大事だとした。
一方で、介護を必要とするお年寄りの多くは、何らかの病気や疾患がある。高齢者の医療について、吉川美恵子が説明。高齢者は病気の数が多いといい、例えば95歳以上の高齢者は平均で8個以上の病気を持っている、また慢性病が多い。その結果一人あたりの年間の医療費が高くなって75歳以上が約100万円。現状で注目されているのが在宅医療。在宅医療を受けている後期高齢者の数は1日当たり20万2500人。
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- 厚生労働省
吉川美恵子解説委員が千葉県柏市で在宅医療に向かう平野圭一医師に同行し、その現状を取材した。去年から車椅子生活になり食事やトイレなど日常生活のほぼ全てを介護に頼っている細野禮四郎さんは11年前から心臓を悪くし5年前に在宅医療を受けることに決めた。ホームヘルパーが早朝、朝、昼、夕方と毎日4回訪れるほか看護師と歯科衛生士が週1回ずつそして医師が月に2回訪問診療に訪れるという。柏市独自のシステムとして、医師が写真を撮り足の処置を変えたことをタブレット端末に書き込む。関係者が情報を共有することでよりこまやかなケアにつながっている。
在宅医療を希望する高齢者が増えていく中、この体制をどう維持するかが課題となっている。一方、夫と2人で暮らす佐々木悦子さんは手術は既にできず進行を遅らせるための抗がん剤治療を勧められたが自宅で痛みを緩和する治療を選んだ。週に2回医師と看護師が佐々木さんのもとを訪れ体調や暮らしの様子を詳しく聞き取っている。がんの痛みを抑える薬は眠気が強く出る。希望をかなえようと医師は細かく薬を調整している。手厚い在宅医療のサポートにより家族との旅行も実現できた。こうしたやり方は柏モデルというふうに呼ばれ、全国でこれを模範として取り入れてる自治体もあるという。
大事なのは選択肢があることだ。在宅医療と病院、施設とあることが大切だと吉川さんがいう。介護がうまくいっていない地域もある。高齢者が退院するときに在宅医療や介護にスムーズにつながらないケースがあるという。また再入院しなければならないケースもある。なぜ柏市はそこまでできるのか。2025年問題を見据えて、15年前から対策を講じてきた。柏モデルと呼ばれる。理想のかたちだ。多くは小さな診療所の医師が行っていることが多い。診療所の倒産・廃業は去年618件。都市部と地方の格差をどうするかが課題。本当の聞きは、このあと。これからが危機の本番だ。社会保障の給付費は2024年には137兆円に達しているが、このまま少子高齢化進んでいくと国の試算では2040年にこれが大体190兆円程度に増加する。国の予算のうち3分の1ぐらいが大体社会保障費に使っている。2025年問題。ここからはどう年を重ね人生の最後を迎えるかを考える。応能負担という考え方がある。経済全体を大きくしていかなければならない。
街の人にあなたはどんな老い方をしたい?か聞く。スキーをやっているという77歳の方。デイサービスに週に2度通い健康で楽しいけど、いつ死んでもいいという85歳の人もいる。
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ここからはどう年を重ね人生の最後を迎えるかを考える。漫画「サザエさん」の登場人物、波平さんは54歳という設定で、昔で言うシニアと今のシニアって全然が印象違う。学会でも高齢者の定義本当に65歳でいいのかっていう議論が以前からあるという。その中で、介護などの必要がなく健康的に過ごせる期間を「健康寿命」といい、大事なのは平均寿命と健康寿命の差。つまり日常生活に制限がある期間とか介護が必要になる期間なのだがそれは男性が8.49年、女性が11.63年といわれている。スタジオの大和田獏と宇治原史規に「指輪っかテスト」と呼ばれる運動テストをしてもらった。年を取るにつれて多くの人は健康な状態から要介護の状態に近づいていく。この要介護の手前の状態をフレイルと呼ぶ。健康な状態からフレイルにならないようにするっていうことも大事。フレイルの予防には「栄養」「体操」「社会参加」の3つの柱がある。社会参加については「人との関わりがなくなって孤独感が深まったりすると要介護状態へ近づく要因になる」という研究があるという。
東京都大田区に高齢者同士のつながりを作るために「手話ダンス」を行うサークル活動があり、地域の高齢者にとってつながりを作る機会となっているという。この手話ダンス講座を開催するのは地元の福祉関係者などが作る団体「みま〜も」。登録すると野菜作りや公園体操などさまざまな活動に参加できる。活動を支えているのが地元の病院やドラッグストアなど。資金の協力に加えてイベントやセミナーの開催を支援している活動開始から17年、多い年には延べ5,000人が参加した。更に「みま〜も」では有償ボランティアの紹介も行い新たなやりがいを生み出している。
堺市では「男・本気のコーヒー教室」を開催。堺市が企業と連携し、社会参加を軸とした介護予防プロジェクトの一環として実施。また、いすに座った状態でも楽しめる「シルバーディスコ」という催しも高齢者施設や公民館などで開惟されている。こうした活動に大事なものとしてアルファベット3文字でACP(アドバンス・ケア・プランニング)と呼ばれるもので、人生の最終段階にどんな医療や介護を受けて何を大事にしてどんなふうに過ごしたいかというのを厚生労働省が6年前からそのための話し合いを「人生会議」と名付けて普及を進めている。柏市のがん患者の女性の場合も、在宅医療を選んだのかとかこのあとどのように過ごしたいのかっていうことは今回の取材をきっかけに初めてきちんと向き合って話されたという。大和田獏は「気が付いたらどうなってるかって本当に分からないと思うし、家族と話し合っておくっていうことの大切さを改めて思った」、宇治原史規は「防災の話に近いのではないか」等とコメントした。
エンディング映像が流れた。