- 出演者
- 佐々木明子 相場英雄
記者としての取材経験を活かし、経済や社会のリアルを描くベストセラー作家・相場英雄が迫る。人や車が今どこにいるのかGPSが進化したおかげで誤差数メートルの範囲でわかるようになった。なぜそんなことができるのかというと、GPS衛生に積んだ正確無比な時計があるからである。その時計は現在世界基準になっていて、6000万年に1秒の誤差しかない。しかし、それではまだ不十分だとさらなる時間の正確さを追い求める開拓者がいる。なぜ開拓者はそんな精度の高い時計を開発しようとしているのか。時計を使って”高さ”を計測するのだという。そんな時に挑む開拓者に作家・相場英雄が迫る。
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オープニング映像が流れた。
相場英雄が訪れたのは埼玉県にある理化学研究所。本日の開拓者は日本初の革新的な時計作りに挑む東京大学教授・香取秀俊。人類は太古の時代から地球の自転や公転などを頼りに時間を測ってきた。それが1967年に革命が起こり、原子時計が採用された。これは物質を構成する原子の振動回数を測るもので世界基準の時計にはセシウムという金属の原子が使われていて、その振動回数が世界の1秒の基準となっている。今、香取秀俊教授が開発を進めているのはストロンチウムという原子を使った光格子時計。本来原子は見ることができないというが、青く光るストロンチウム原子が見えていた。1つの点に見えるが1000万個の原子が浮いているという。セシウム原子時計は原子を選別し電波の振動回数を測っていたが、光格子時計はレーザーで作った格子状の入れ物に原子を閉じ込めて複数個作り振動回数を計測する。セシウム原子時計の精度は6000万年に1秒の誤差だが、光格子時計は300億年に1秒の誤差だという。しかしこれには満足せずさらなる精度を高める研究を進めていた。
香取秀俊教授に話を聞くこととなり、まずは「光格子の研究を始めたきっかけは?」から。今注目の光量子コンピューターが光格子時計の研究に突き動かすきっかけだった。時間を正確に測れるようになって人類が生み出したもの、それがGPSである。GPS衛生は地上に向けて電波を発し、その発信した時刻と受信した時刻の差を計算。ここで使われるのが人工衛星に搭載されている原子時計である。複数の人工衛星でこれを行うことで位置情報を割り出している。
光格子時計の次なる動きは?
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300億年に1秒しかずれない光格子時計、その研究を行う香取秀俊教授。そんな香取教授が面白い実験をしたことがあり、その場所は日本で一番高い建物である東京スカイツリー。高さ450mの展望台と地上0mの2か所で時間を測り、その時間のずれを検証した。ここに関わってくるのはかのアインシュタインが提唱した一般相対性理論。標高が高く重力が小さい場所では時間の進みが早いという説である。実験の結果、地上より450mにある展望台のほうが1日で10億分の4秒早く進んでいることがわかった。精度の高い計測ができる光格子時計によって相対性理論を裏付けることができた。さらに香取教授は今、離れた2つの場所の高低差を測る実験をしている。光格子時計を理化学研究所と岩手県の水沢天文台に設置。より正確に時間が分かれば細かな地殻変動を調べられるようになるという。例えば地震などの予知や見た目にはわからない火山の噴火の予兆にも使えるかもしれないとのこと。しかしそこには大きな壁が立ちはだかっており、国際基準への採用となっていた。現在、国際基準として採用されているのは1955年にイギリスで開発されたセシウム原子時計でこの1秒が世界基準となっている。国際度量衡総会が一大イベントであり、メートルなどの国際単位を定めている。2030年には「秒」の見直しも予定されている。香取教授は光格子時計による時間の計測が国際基準になれば世界進出への大きな一歩になると考えている。
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300億年に1秒しかずれない光格子時計を世界基準にしたいと野心を持つ香取教授。そのために必要なことは光格子時計の小型化である。これまでの装置に比べて大きさを4分の1までに小さくした。これを実現したのは共同開発を行った日本の大手精密機械メーカーである島津製作所。2017年から香取教授とともに光格子時計の設計・製造に関わってきた。島津製作所ではレーザーを制御する回路の開発などを担当していた。島津製作所などがおよそ10年の歳月をかけて作った光格子時計は今年3月に販売がスタートし、1台5億円で3年で10台の販売を目指すという。まだ売れてはいないが、国内外の研究機関などから引き合いが来ているという。最後に香取教授に「ブレイクスルーとは?」と問うと「まだ見ぬ世界を目指して新しい風景を求めること」とのことだった。