- 出演者
- 渡邊佐和子 佐藤二朗
芸術家、岡本太郎が手掛けた「太陽の塔」を徹底調査。岡本のスケジュール帳を初公開する他、120枚におよぶスケッチから見えてきたものとは。
オープニング映像。
1970年に開催された「日本万国博覧会」はアジア初の万博で、その象徴が太陽の塔だった。制作したのが岡本太郎で、展覧会が今年開かれるなど、今なお人気を博している芸術家の1人。そんな岡本は万博のテーマ展示を考える立場で、芸術作品を制作する立場ではなかったという。
芸術家、岡本太郎は「美しいというのは『なんだこれは!』というようなものが美しい」などと話していた。代表作が太陽の塔で、日本万国博覧会当時、大屋根と呼ばれる構造物で囲われていた。この構造物にカプセル型住宅、通信衛星などが設置されていた。もともと、大屋根の構想が先で、岡本太郎が勝手に太陽の塔を制作したという。岡本を研究している大杉浩司氏は岡本の秘書でありパートナーでもあった敏子さんが記録していた資料を見せてくれ、万博のメイン会場であるシンボルゾーンの計画責任者だった丹下健三と密にやり取りしていたことが判明した。大屋根も丹下が考案したもので、岡本は事務所で模型を目にした時、「ボカンと打ち破りたい衝動がムラムラ沸き起こる」、「屋根をぶち破る塔を立てる」などと宣言。屋根に新たな穴を空けることを意味したが、元々、丹下は岡本の芸術を高く評価し、万博事務総長だった新井真一に「一緒にやるなら岡本太郎しかない。岡本を口説いてくれ」と要望していたという。
丹下健三は旧東京都庁舎を手掛け、色彩豊かで躍動感溢れる壁画を岡本太郎が担当した。武蔵野美術大学の春原史寛准教授は万博の大屋根と太陽の塔について、「不釣り合いな感じだが、緊張感が衝撃的。衝撃を与えてなにかを考えさせるってことが大事」と話す。
平野暁臣氏は岡本太郎を公私に渡って支えた岡本敏子さんの甥にあたる。岡本は丹下健三の大屋根を生かすために太陽の塔を制作したといい、互いに認め合う関係だったという。また、岡本は周囲から天才と評されていたが、敏子さんは「蹴っ飛ばしたくなるくらい腹が立つ。決意し、覚悟して歯を食いしばって岡本太郎をやり通した」と話していたという。
岡本敏子さんの著作を渉猟すると、太陽の塔のカタチには様々な説があるなか、岡本太郎を研究する大杉浩司氏は15年前に発見されたスケッチを公開してくれた。元々、木をイメージしていたようだったが、突如として顔が描かれるようになった。岡本は顔とは人間の喜怒哀楽を表し、命の象徴と捉えていた。太陽の塔の構想段階から関わっていた千葉一彦氏はテーマ展示の草案を見せてくれ、「過去、現在、未来を貫き、脈々と流れる人類の生命力、その流れ、発展をかたどる」という思いを太陽の塔に刻んだという。太陽の塔の正面の顔は現在、頂上は未来、裏側は顔を表す。なお、岡本太郎は太陽の塔に賛同者がいるかどうか、不安も抱いていたという。
万博では技術が人間を幸せにすることを象徴する様々なものが展示されるなか、岡本太郎は技術の進歩が万事を解決するという考えに疑問を呈していたという。岡本太郎の親類である平野暁臣氏は今の時代なら税金の無駄遣いなどと太陽の塔は許されないと考え、説明できないからこそ面白いところもあると話す。岡本は1949年に発表した「重工業」でネギを描き、敏子さんが「先生、何故ネギ」と尋ねると、岡本は「俺だって分からない。描きたくなった」と話していたという。
日本万国博覧会の一般規則によると、建築物及び施設は閉会後、半年以内に撤去と記され、岡本太郎も太陽の塔が壊されることに反対しなかったという。岡本は自身の作品に執着せず、「動物」という作品では完成後に加筆を施していた。だが、「太陽の塔を残して欲しい」と要望が数多く寄せられ、高校1年の時に投稿したという藤井秀雄氏は「前に向かい、歯を食いしばって頑張って生きたら輝く未来がある」と作品を通して感じたという。岡本の心境も変化し、1975年1月23日、太陽の塔の永久保存が決まった。
平野暁臣氏は太陽の塔を後世に残すというよりも、壊しちゃ駄目という雰囲気があったと振り返った。また、岡本太郎は自身の作品に執着しなかったが、画商を通して売ることはほとんどなく、「売ってしまったら富裕層のもとに行くだけで表に出ず、最初から無かったのと一緒。芸術は民衆、大衆、社会のもの。生活の中にあるべきものが芸術」と話し、多数のパブリックアートを手掛けた他、ウイスキーについてくるようなおまけも制作した。なお、大屋根が撤去され、ぽつんと残った太陽の塔のもとを岡本太郎は訪れ、「今は何と対峙しているのか」と尋ねられると、「宇宙だよ」と答えたとされる。
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