- 出演者
- 村上龍 小池栄子
オープニング映像。
大阪府堺市の耳原総合病院では誰もが秒刻みで大忙し。研修医の阿比畄さんは激務の中で困ったクセに手首から肘に直接メモをすることが多く、毎日消すのに一苦労だった。その煩わしさから開放してくれたのは去年から使い始めたという手首に巻くメモのウェモ。シリコン製のバンドの表面に文字が描けるようになっていて、自由にメモをとることができる。こうして手首に巻くことができ、仕事中邪魔にならない。特殊な加工がされているのでボールペンで描いても消しゴムで消すことができ繰り返し何回でも使用できる。このウェモは現場で働く人にささっていて、ハンズ渋谷店ではウェモの専用コーナーが。2017年の発売以来シリーズ累計の販売数が100万個以上の大ヒット。ウェモを作っているのはコスモテックという会社で、精密機器を保護する特殊な粘着フィルムなどを製造販売している。リーマンショックを機に一時は売上が6分の1にまで激減し経営難に陥っていた。そんな暗闇の中で出会ったのがある外部のデザイナー。そのデザイナーこそがコスモテックの技術を使ウェモを生み出した。今ではウェモは売上の全体の15%となる主力事業に。
そんな凄腕のデザイナーが生み出した商品はウェモだけではない。筒型のタオルのスッタは水滴による日常のストレスを解消してくれる商品で、とくにスッタが活躍するのは雨の日で自転車のサドルやカバンについた水滴も軽く撫でるだけで水分をみるみる吸い取る。絞ればすぐに乾くためにポケットにいれて持ち運ぶことが可能。価格は2750円と安くはないが大手ECサイトでトップ10に入るほどの人気に。それらをデザインした会社はケンマ 。2016年創業のスタッフ9人の会社でケンマ初めてのヒット商品が身につけるメモのウェモ。その代表は今井裕平。今井はどのようにしてヒットを生み出しているのか?には企業が求めている真逆の発送と企業側が求めている答えに合致するとパワフルなアイディアになるというが視点を常識の反対側に向けるという。ウェモが生まれたきっかけは若者向けのファッションアイテムのタトゥーシール。コスモテックは高性能の粘着フィルムを作る技術を活かしてタトゥーシールを作っていた。このタトゥーシールで作る新しいアイディアをいろいろなデザイン会社から募った。しかし、誰でも思いつくようなものばかりだったが今井は機能面という真逆の発想をすれば新しい発想が生まれると考えた。今井はタトゥーシールの表面には文字がかけることに気づいた。そこで文字がかけるタトゥーシールという新しい視点からうまれたアイディアを生み出し、このアイディアから身につけるメモが生まれた。
筒型のタオルのスッタを作っているのは茨城県にあるアイオン。半導体の工場などで使用される高性能なスポンジの製造販売をしている。スッタに使用され素材もソフラスという吸水力に優れた特殊なウレタンスポンジ。ビジネス拡大のために一般ユーザー向けの商品を作りたいと今糸のプロジェクトが始まった。今井はソフラスを使った商品を提案したが一般ユーザーには高すぎるとの声が。そこで今井が目をつけたのは工場向けに作られるローラー型のソフラス。すでにある商品をそのまま使用できれば高価な素材でもコストを抑えることができると考えた。工場用のローラーが手に持てる筒型タオルになりヒットを生んだ。名古屋市にある日本茶カフェでは天皇杯を受賞したお茶の生産農家が運営している。コロナ禍で一時は売上が3分の1にまで落ち込み苦境に。テイクアウトを行う店が増える中で二の足を踏んでいたというが、紙やプラスチックではこだわりの日本茶の味が損なわれてしまうという。そんな店の立て直しを依頼されたのが今井だった。今井は視点を変えたテイクアウト方法を考えたが、日本茶が入った朝ボトルというサービスを始めた。使ったのはガラス製のボトルのレンタルサービス。これなら日本茶の美味しさを損なわず人の目をひく。さらに、ボトルを返すついでにカフェで一休みする客も増え、そのサービスが大成功。売上はコロナ前の2倍に。視点を変えることで多くの中小企業をすくってきた今井。逆転の発送は、どのように生まれるのか?アイディアが生まれる現場に迫った。この日行われたのはある企業が開発したモノトラップという一般向け商品の会議。モノトラップには、小さな穴が無数にあいていて香りの成分を大量に吸収できる。まずはスタッフがアイディアを出す。社員が出した答えをカテゴリーわけにしていくがモノトラップには熱を加えると吸収し香りを拡散する性能もあることから他のアイディアも。そこから誰もが気づかない視点を生み出すのがヒットの種があるという。
新たな視点から生み出された商品が生まれた。強烈なミントで眠気を覚ますアロマショットを開発したが価格は高機能なものを使用しているために1万5000円ほどに。商品のイメージが固まったらどんな人が購入してくれるか自ら探しにいく。目をつけたのはエナジードリンクを頻繁に飲む人。また市場調査の協力車の男性がやってきたが救急救命士の男性は仕事柄眠気を覚ます必要がある仕事のためコーヒーを1リットル飲むという。そしてどの価格帯なら買ってくれるか想定し、販売戦略までケンマが考えている。
今井はスッタについて自身の困った経験がもとになっているという。それは子どもの送り迎えで使用する自転車の椅子をよく拭かないと子どもが泣いてしまっていたという。ウェモのアイディアについては職業上クライアントがいつが、必ずお題があり、コスモテックの場合はタトゥーシールだった。その性能は高くずっとつけていられるが水に濡れても剥がれない。このタトゥーシールの技術を使い新しい商品や事業が作れないかがスタートだったという。また社員にはアイディアを出すために1人100個は出してほしいとお願いしているが、それぐらい出れば傾向が見えるという。今井は依頼をうけるにあたりこだわっているのはユニークで、中小企業のクライアントが多いが大企業に勝つために普通にやっていたは負けてしまう。その中で生き残っていくにはユニークであることがスタートになるという。
板橋区の印刷会社技光堂が数年前に画期的な技術を生み出した。それは樹脂に特殊な印刷をすることで本物の金属のような光沢や、立体感を再現できるという技術。どう売り出せばいいかわからず開発して数年間は売上はゼロだった。そんな時今井が商品化にむけたデザインを担当。金属は光を通さないがこの技術なら金属が光を通しているように見える。その特製をいかしたLEDの看板や自動車のディスプレイなど金属調のスタイリッシュな商品デザインを打ち出した。今では年間2000万円を売り上げるように。
1981年に大阪堺市で生まれた今井は建築の世界に憧れていた。将来は建築家になりたいと神戸大学の建築学科へ。しかしその夢を阻む致命的な弱点は絵を描く事が苦手だった。画力のなさにコンプレックスを抱えながらも大学院修了後は大阪の建築事務所に就職。そして建築の仕事をする中で自分の武器を見つける。画力では劣っていてもデザインの意図を明確にするコンセプト力では勝てると思った。コンセプト力を磨こうと経営コンサルタントに転職した。同時に大学の後輩たちと企業のデザインコンペに応募。これが企業の課題を解決するビジネスデザインとの出会いだった。今井がコンセプトのデザインを考え後輩たちが形にしていく作業を担当し応募をする日々。しかし多くのコンペに挑戦するも落選ばかりで2年が経過した。
コンペに応募し2年ほどが経過していた頃、サントリーの子会社が主催したビジネスデザインのコンペでは、土にかわる新素材として開発した特殊なスポンジのパフカルは土以上に植物がよく育つという。この新しい素材を使った商品や、空間のデザインを募るコンペだった。企業が気づいていない素材の特徴はなにか?を徹底的に追求する中でスポンジを切り分けることができるという特徴に目をつけて緑のおすそわけというデザインを提案デザインコンペで最優秀賞に輝いた。表彰式で社長にかけられた言葉が今井の人生を大きく変えたが、このデザインをみせただけで会社のビジョンまで伝えることができたと言われたという。デザインは言葉以上に伝える力をもち企業の象徴になると気づいた今井は企業が課題を解決するビジネスデザインが自分の生きる道と確信。2016年にはフラッグシップ・デザイン会社ケンマを創業した。村上は逆の視点から目標に向かうのは建築に似ていると答えたが、今井はなぜこういうことができているのか?の理由の一つに建築はいろいろな要素を統合しなくてはいけずデザインだけでなく土地は法規、周囲の環境の話があり、それらを束ねながら最後に建物という答えを出さなければいけないという。またデザインはいろいろな要素があって制約の中で最適な答えを出すところがビジネスデザインと建築は似ていると感じていると答えた。またこの仕事は絵が下手なことが逆にいきているというが抽象的でシンプルなエッセンスで考えなければいけなくなるという。今では建築家にならなくてよかったと感じていると答えた。神奈川県藤沢市で郵便局の事務員として働く小野寺さん。小野寺さんは手首にまくメモのウェモの愛用者。上司からの指示をすぐに書き留める。小野寺さんは50歳のときに若年性認知症と診断された。この先仕事を続けられるか不安を抱えていた中ウェモはがそれを解消してくれた。今井のデザインは人々の悩みのタネに役立ったというケースが増えている。
埼玉県にある高齢者施設では入居者が楽しみにしているのは旅介ちゃんねるという高齢者施設などでオンライン旅行を提供するサービスを鑑賞していた。施設にいながら旅行気分を味わえ体操もできる。このオンライン旅行の場に今井の姿が。来年開かれる大阪万博に携わっているというが遠出ができない高齢者や障害者など誰もが万博に参加できるプロジェクトのレッツエキスポのビジネスデザインを任された。大阪万博のオンライン旅行や現地でのサポート態勢を検討している。今井は社会課題の解決もやってみたいと答え、儲かったほうが社会課題を解決できると考えていて、そういうことができないかチャレンジしたいと答えた。
今井は自宅で娘と一緒に商品の違いなどのディスカッションをしていたが今井は娘に仕事は楽しいものと伝えたいと答えた。
100万本を売ったwemoを、絵で説明できるだろうか。リストバンドだが、それにメモなどを書く、ということで看護師の必須アイテムとなっている。絵で説明することはできない。「STTA」はどうか。吸水スポンジタオルとして売れているが、これは絵でも説明不可だ。茶葉を入れたボトルを店舗外にあるカウンターで販売というのは、絵で説明できない。今井さんは、絵では説明できないデザインを提案する。絵が下手だからということだが、それは才能だと思う。絵が下手という才能を駆使して今井さんはアイデアを見つける。とした。
カンブリア宮殿の番組宣伝。