- 出演者
- 村上龍 小池栄子
オープニング映像。
山形県の庄内平野には田んぼの中に佇むスイデンテラスは館内は大きな窓から光が差し込み開放感がいっぱい。部屋に向かう廊下には山形ゆかりの本を揃えたライブラリーがある。客室にも大きな窓があり、なにもない田園風景が広がる。まるで田んぼに浮かんでいるようなスイデンテラスは四季折々表情を変え、ホテルの魅力もうつろいでいく。この景観にひかれ年間6万人が訪れる人気施設。田んぼの真中から外を眺める露天風呂もあるが源泉かけ流し。次にディナーへ。ここ鶴岡市はユネスコ食部文化創造都市に選出された食材の豊かな土地。地元の食材4品を駆使したイタリアにゃフレンチのコースが味わえるという。豪華なコース料理がついて料金は1泊2食1万7800円から。このホテルを建築したのは建築家の坂茂。建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞し、坂茂がはじめて手掛けたホテルということで取材も殺到し、観光地でもないのに観光客が押し寄せている。
このホテルを運営しているのはSHONAI。元小学校を間借りしているが社員数は120人で平均年齢は35歳。その8割はUターンやIターンで社長は山中大介。以前は三井不動産で働いていたが山形の魅力にひかれ移住。10年前にヤマガタデザインを設立した。山中はこの会社については地方の課題を解決する事業を作り、この場所で生まれたモデルが日本全国に展開し、他の地方都市の課題解決につなげたいという。山中のこの熱い思いをうけて転職をして来た人も多い。
社員を外部から引っ張ってくるのは山中の戦略で、人材にとどまらず4つの事業を同時展開している。農業では54棟のビニールハウスでベビーリーフを栽培。山中は地域の農家が儲かっておらず、自分たちができることをと考えた時に農作物の単価を優位に決めることの出来る市場を分析していくと有機農業があったという。日本の生産者には敬遠されがちな有機農法だが安定して栽培できれば単価が高いので勝負ができると考えた。農業部門のグループ会社を作り、トップに据えたのは中條大希。都内のベンチャーで働いていたが、Uターンで農業経験0からのスタートだった。そのために収穫できないこともあったというが、そこでビニールハウスごとに土の深さや与える水の量などを変えて最適な環境を探し出した。さらに全国の農家をまわって現場の知恵や最先端の技術を教わり持ち帰った。そうした努力は実を結び農業事業は軌道にのり、収穫も安定した。3年間で農業部門の売上が7億円に拡大したという。この成功に地元の若手農家も反応し、有機栽培の技術などの勉強会に参加し全国の農家と情報交換を行っている。
この春に中途でSHONAIに入社した阿部は、きっかけは山中の作ったショウナイズカンという転職サイト。庄内地方に特化した求人サイトで、単なる求人情報ではなく、職場環境ややりがいもわかるようになっている。開設から6年で現在112社1700人が登録している。阿部は夫婦で移住してきたという。
山中が教育事業のために作った施設のキッズドームSORAIでは学童保育を行っている。アスレチックや、ものづくり体験が出来る場を提供することで子どもたちの創造性や個性を育むのが狙い。移住してきたSHONAIの社員もこの施設を活用している。
スイデンテラスについて山中は自分の直感を信じて作り上げたもので田舎は毎日が新鮮で、間近で稲が育っているのをみているのが面白いと感じ、田舎の日常は都市に住む人には非日常だと思っていたという。また庄内の魅力にはご飯が美味しいと答え、前職の時から地方都市でいろいろなグルメを食べたが、その中でも庄内はトップクラスだったという。また地方には魅力的な企業や事業がたくさんあるがマッチングできる場所がなく会社や事業が成長せずに廃業するところがありもったいないと思うと語った。また地方は人手不足で若い労働力は奪い合いになるが理法の中小企業の経営者は自分たちを雇用を守ってあげていると表現しているが実質来ていないと語り、若い世代に投資をして自己成長や自己実現を提供できる会社でないと人は集まらないと答えた。
山中は1985年に東京大田区に生まれた。父親の仕事の関係で幼少期はヨーロッパで育ち、オランダではサッカーの名門のアヤックスの下部組織に入団しサッカーに打ち込んだ。帰国後には慶応高校のサッカー部で活躍し、大学を卒業後には三井不動産に就職。ショッピングモールの開発や運営に携わり花形部署で働いていた。しかし自分のテーマとしてインパクトのある事業を作りたかったと語ったが、その中で仕事で山形を訪れる機会があり、空港から現場に向かう道中でみた風景に皆にみてほしいと感じ、2014年に山形に移住し地元企業に就職した。するとチャンスには、入った会社の空いた敷地を有効利用できないかと行政から相談があり、前職で商業施設に携わっていた山中に白羽の矢が立った。
これを機に山中は独立をし、水田をいかしたホテルを作ろうと考えた。設計は母校で教鞭をとっていた坂茂さんに頼み込んだ。その設計の段階でスイデンテラスの持つ唯一無二の世界感が生まれていた。山中はこの完成予想図を携えて地元企業をまわり、資金調達に奔走した。しかしその発想は理解されず門前払いの日が続いた。それでも諦めず事業計画書は100回以上書き直すと耳を傾ける人が現れた。山形銀行で専務をしていた石川さんは当時は山形銀行で新規事業を支援する部署を率いていたが、石川さんの後押しで前代未聞のチャンスが訪れた。
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山中はスイデンテラスを作るために資金調達をしていたが難航していた。その中でチャンスが訪れ、山形銀行から役員を前にプレゼンする機会を得たという。山中の熱のこもったプレゼンに銀行が動いた。山形銀行は4億円の出資を決定し、これを機に地元企業や銀行から23億円の調達に成功し、山形の本社を置く平田牧場はすぐに応援してくれた企業だという。2018年にはスイデンテラスがオープン。ホテルを機転に様々な事業も展開しまちづくりを進めた。
山中はアヤックスの下部組織でサッカーをしていたことについてはたまたま家の前にアヤックのオーナーがいてオーナーにスカウトされたと答えた。また足が速く大学時代には100mを10秒台で走っていたが中型犬より速かったと答えた。またスイデンテラスの資金調達の際には嫌がらせもうけたという山中。地方は年末になると商工会議所などの団体が忘年会を行うがとある企業の集まりに参加したが、お金の話をしてくると避けられていたという。また億単位の出資をしてくれた山形銀行について、その1人の石川さんについては変わった人だと答え、銀行が成長するには投資目線でなければいけないと言っていたという。また山中は事業について完璧な状態では始まらないと答え、不完全な状態から半分目を瞑ってスタートさせるのが重要だと答え、のろしをあげれば誰かが見つけてくれると答えた。
3月上旬に庄内で働く社員を集め山中が発表を行った。会社の今後に大きく関わるその内容は、社名変更。またグループ3社も社名を変更し、これを機に全国展開を加速させていくという。人材事業のクロスローカルでは地方の企業の経営者などの人材を紹介する求人サイトのチイキズカンをひろめる。今サイトを山中と一緒にたちあげたのはクロスローカルの代表の坂本で経済メディアのNewsPicksの創設メンバー。山中とは一年前に出会ったばかりだがフェイスブックで面白い人を紹介してもらったが、その中で一番多く名前があがったのが山中だったという。愛媛で地元の経営者や後継者を集めて講演を行い人材を呼び込むメリットを語った。一方での農業部門のニューグリーンは画期的なマシンを開発。
SHONAIの農業部門のグループ会社のニューグリーンが開発したアイガモロボは、アイガモ農法という雑草や害虫を食べさせ農薬の使用を抑える環境に優しい農法を元にロボットでコストを下げて有機農法へのハードルが下がるという。その仕組はスクリューで田んぼの泥をかきあげて雑草の光合成を邪魔して生えにくくする。山中はサッカーをしていた時よりも今の自分が好きだと答え、可能性にふたをしてプロになるのを諦めた過去があるというが、社会に出て二度とそういう思いをしたくないと自分自身が最大限の可能性を信じて前に進むことを大事にしたいと答えた。
村上は今日の総括にある若者が庄内平野を眺めていた。この風景を多くの人に見てもらいたい、山中氏は、小学校時代を海外で過ごし、アヤックスのユースに入り、帰国後も背番号は11で足は速かった。大学までスポーツ漬けで、会社に入ったばかりのころはExcelが使えず電卓で計算した。庄内平野を眺めていたのはそんな人だった。ここにホテルを造る、ホテル建設は、多くの人に反対されたが、造った。総工費41億円。今はSORAIという教育施設を始め、8つの事業を展開している。やることは速く広く、背番号11の快足を思い起こさせる。とした。
カンブリア宮殿の次回予告。