- 出演者
- 桑子真帆
メイドインジャパンの製品が知らぬ間に戦争の道具として使われている実態。ウクライナ軍がロシア側の兵器を解体したとき数々の日本製の部品が見つかった。どのようにしてロシアへ流れてしまったのか?日本製品が戦争に使われないために何ができるのか考える。
オープニング映像。
ウクライナ政府はロシア軍の兵器から日本製の部品をWeb上で公表している。これまでに約30社約170点が見つかっている。戦闘で使われる無人偵察機からは日本製のカメラやエンジン、ミサイルには電子部品も組み込まれていた。ウクライナ侵攻以降、輸出が規制されきた日本製品はなぜロシア軍の兵器から見つかるのか?
去年11月、ベラルーシの反政府組織と接触した。ベラルーシの元警察官などで組織され、これまでも世界中に数々の疑惑を告発してきた。提供を受けたのはロシアに兵器を供給するベラルーシの軍事企業の取引記録。発注書や契約書、兵器の設計図など。その中に日本企業が5社あった。取引されていたのは工作機械の部品。医療機関や自動車部品に使われるものだが、軍用品を作る上でも欠かせないもの。日本製品は2023年5月から11月まで、14回にわたり82個がベラルーシの軍関連企業に流れていた。
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部品が使われていた5つの日本企業を取材した。応じてくれたのは社員15人ほどの大阪の会社。工作機械の制御システムに信号を送る圧力スイッチを作っている。この会社では製品に製造番号をつけて管理しているが、輸出ルートの特定はできなかった。この会社はなぜベラルーシに渡っているのか困惑している。文書に記されていた納品先はベラルーシの軍関連企業サレオ。サレオを所有するのは政権に近いシャクーチン氏、経済政策の対象となっている。サレオに納品していたのは中国の深圳5Gハイテクイノベーション。5Gは輸出規制の対象にされている企業で、大阪の企業とは過去に取り引きはない。意図しない形で5Gを介してベラルーシまで流れていた。
文書にあった深圳5Gハイテクイノベーションの住所に向かったが、当局関係者により撮影は中断せざるを得なくなった。何度も電話したが5Gが取材に応じることはなかった。知らずに5Gに流れていた日本製品。こうした取り引きはどのくらいあるのか?この3年間にベラルーシが輸入した物品の税関記録を確認したところ、中国だけでなくベトナムやトルコなどからも流れていることがわかった。さらに、迂回ルートを使った大きな闇。ベラルーシの軍事企業ペレングに大量に物品が流れていた。ペレングはロシア軍の精密機器を大量に生産している。今回の調査で5Gから3年間で少なくとも182件、25億円の物品を購入していることがわかった。
古川勝久さんによると、ロシアを制裁している国は世界の中でも少数派、ロシアと経済取引がある大国が多数ある、ロシアが仲介業者をおいているのだという。今回のケースでは日本製品が規制対象である中国の企業を介してベラルーシに渡っていた。第3国を介して輸出規制をすり抜ける闇ルート。日本企業は国境を超えて取引先を確認するが、その先どこまで製品が流れてしまうのかは分からない。古川勝久さんは633団体が制裁対象になっているが、迅速に世界各地に看板企業を設けて調達網を作っているので、摘発などが追いつかない状況だという。日本政府は輸出について法律で規制をかけている。特定品目に指定して輸出規制をかけたり、その他の品目についても兵器開発の疑いがないか確認することが義務づけられている。
静岡県浜松市にある光学機器メーカー、放射線を使ってがん細胞を検知する装置は世界シェアの90%近くを占めている。顧客の審査を担当するのは輸出管理部門。発注元の大学研究者に国防に関わっていた過去を隠している疑いがあったので取引を断った。増えているのはロシアが第三国を迂回して製品を仕入れようとしたと疑われるケース。侵攻前、ロシアにしか輸出していなかった商品の発注が突然、オマーンの企業からあった。取引を断ると、同じ注目がクウェートからもあったという。この会社では毎月、約10件ほどの取引を中止にしている。中小企業の支援を行う専門家はこうした輸出管理ができる企業は限られているという。
少ない人員の中で輸出管理に取り組む中小企業がある。化学薬品などを取り扱う従業員60人の商社。これまで輸出管理は現場の営業担当者が担っていたが、去年輸出管理の部署を新設した。客観的に審査する仕組みが機能しつつあるという。
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輸出規制はどこまでするべきなのか?台湾当局では日本やアメリカを上回る3300以上の団体への輸出を規制している。輸出規制などに関する法律を立案する関連機関では、中小企業を中心に現場の聞き取りを行い実効性のあるルール作りを急いでいる。台湾の製品がベラルーシの制裁対象企業に渡っていた事例が報告され、踏み込んだ対応が議論された。今後、このグループでは実態を正確に把握した上で新たなルールづくりにいかしていく方針。企業自身で一歩踏み込んだ対策に乗り出すところもある。管理に力を入れているのは去年から販売を開始したドローン対抗システム。この会社では新規顧客との契約前に、社員が直接現地で調査している。それでも契約のない国や企業に製品が渡った場合も高精度のGPSで管理ができるようにしている。
日本政府は闇ルートに製品が流れないようにするために、取引先のチェックをするよう促している。古川勝久さんは相手を問わずに、自社製品を輸出していく時代は終わっている、今は責任ある自由貿易の時代だとした。今や企業は軍事品か民生品か明確な線引きがしづらい製品、衛星通信、ドローンなども作っている。古川勝久さんは軍事部門と民生部門との間の対話、枠組みが必要、情報共有の場を作ることが必要だとした。