- 出演者
- 桑子真帆
昨日WHOの加盟国が新たに採択したのはパンデミック条約。世界の感染症対策の強化を目指すことになった。WHOテドロス事務局長は「次のパンデミックはいつどこで起こるかわからない」と語る。未知のウイルスなどによって引き起こされる可能性があると指摘している。
オープニング映像。
ベトナム北部の山岳地帯、近年新たなコロナウイルスが複数見つかっている中国・雲南省に隣接する地域に未知のウイルスの探索に日本の研究チームが向かった。東京大学医科学研究所・佐藤圭教授は新型コロナの変異ウイルスの特性をいち早く解明。東京大学、長崎大学、ベトナム科学技術アカデミーの合同チームが向かったのは洞窟。ヒトに感染するウイルスを保持している可能性があるコウモリを捕獲するため洞窟の入り口にわなを仕掛けた。サーズ、新型コロナはいずれもキクガシラコウモリがもっていたルーツがあると考えられている。ただコウモリのウイルスがどのようにして人での流行に至ったのかは不明。コウモリが持つウイルスを研究することでヒトへの感染メカニズムの解明や次のパンデミックを引き起こすウイルスの発見につながると佐藤教授は考えていて「ここから新しいウイルスが見つかるかもしれない」と話す。分析は現地にある長崎大学の研究拠点で行われ、結果は今年中に判明する見込み。佐藤教授は現地で調査をする中で観光化やインフラ整備の開発が進みヒトが野生動物のクラス地域に近づいていることに気が付いた。これによりヒトがこれまで出会うことがなかった病原体に接触する機会が増えパンデミックのリスクが高まると考えている。
WHOはネクストパンデミックに備えて特に優先的な対策をとる必要がある病原体を公表。鳥インフルエンザウイルスやコロナウイルス、Xとする未知の病原体を含むとその数は約30にのぼる。ことし1月、これまでWHOの資金の2割近くを占めてきた最大の資金拠出国・アメリカが脱退を表明。途上国への援助を凍結した。アフリカでは現地のワクチンの供給などにあたっているが資金不足のため活動を縮小せざるを得ない状況。WHOの支援活動は世界各地で縮小や停止などの見直しを迫られ本部の部門も半減させる方針。他の先進国なども拠出額を減らす傾向だという。これまでWHOはアメリカのCDCなどから医療や研究データの提供を受けることで感染症対策の指針作りなどに役立ててきた。しかし、脱退表明移行、こうした機関と連絡が取れなくなっている。WHO・マリアバンケルコフ部長代行は「世界の人たちの健康にとっていまが重要で後退する時ではない」と語った。
コロナ禍で感染症対策の最前線で担当し、かつてはWHOにもいた結核予防会理事長・尾身茂さんと伝える。きのうパンデミック条約を採択。未知の病原体をいかに早く見つけて対処するかが求められる。
新型コロナウイルスで13万人を超す命が奪われた日本。その時の経験や教訓が十分に生かされていない実態が取材で見えてきた。感染症対策の中核を担う保健所。いまも感染症の発生状況や患者数の把握にあたっている。コロナ禍では全国の保健所の業務がひっ迫。原因の一つが医療機関から患者の情報がFAXで大量に送られてきたこと。紙ベースでの情報の処理に忙殺されて感染者数の把握に膨大な手間と時間がかかった。この教訓をもとに国はシステムを改良、患者の情報を医療機関からオンラインで報告できるようにしたが感染症の発生報告はいまもFAXで保健所に届いている。病床のひっ迫を防ぐ取り組みでも課題が。済生会横浜市東部病院。ことし1月に流行した季節性インフルエンザでは病床がひっ迫しすべての患者を受け入れることができなかった。いまも病床の確保に日常的に苦心。 「平時でも厳しい状況の中、現場任せの調整には限界がある」と危機感をつのらせている。
入院調整について、NHKの調査で今冬流行したインフルエンザでコロナ禍と同じレベルで病床がひっ迫したとみられる29都道府県のうち入院調整を「おこなった」と回答したところは5つ。おこなわなかった理由「入院調整は必要ないと判断」など。3年前、新型コロナ対策の検証をする政府の有識者会議がコロナ対応の課題や教訓を洗い出す報告書をまとめた。医療機関に対する行政の権限強化についても指摘。オンライン化が進んでいないことにつても「迅速な情報共有が必要」と指摘。尾身茂は「人材をうどう育成するか。医療制度をどう構築するか。感染症と世界、経済のバランスをどうとるかなどしっかりやる必要がある」など話した。