- 出演者
- 桑子真帆
動物の関わる祭事が動物虐待だと問題視され、刑事告発が相次ぐ。岩手・遠野市では行事の中止が決まった。動物との関わり方をめぐる価値観の衝突にスポットを当てる。
オープニング映像が流れた。
岩手・遠野市では馬に重りを運ばせ、手綱さばきや馬力を競う「馬力大会」が約70年にわたって行われてきた。今、手綱で馬を叩くといった行為は動物愛護法などに違反すると関係者が刑事告発されている(のちに不起訴に)。市は来月に大会を控えていたが、中止を決定。告発者のヤブキ氏は殺処分されそうになった動物を育て、新たな飼い主を見つける団体の代表である。遠野は馬の産地で、農業でも物資の運搬でも馬が活躍してきた。馬力大会では馬を操る技術を後世に継承するという目的もあるという。だが、市役所には大会への抗議が殺到し、多田一彦市長は「役所の電話もパンクします」と話す。ヤブキ氏らは馬力大会で馬が酷薄の扱いを受けているとする動画をSNSに投稿し、視聴者へ遠野市に意見するよう促してきた。
運送の仕事をしている千葉氏は野生のイルカがどのように捕獲されているのか実情を垣間見、動物愛護を支持するようになった。宮城・涌谷町で馬の力比べをする大会が開かれると、千葉氏はその様子を撮影。その後、関係者は刑事告発されるに至った。町では大会を継続していて、馬が引く重りは軽量化し、ムチの使用は禁止とした。だが、ヤブキ氏は「大会そのものが虐待」と指摘する。岩手・遠野市では今年、大会の中止を決断したが、多田一彦は再構築した大会を来年に行う予定だという。
- キーワード
- 涌谷町(宮城)
獣医師の佐伯潤氏は「身近にいる犬、牛、豚、鶏などは人が作り出した生き物で、食べ物、薬品開発などで我々の生活は動物によって支えられている。動物を使うこと自体は一切やめるべきという主張は現実的ではない」と話す。一方、祭事・行事側は獣医師を設置するなど動物の安全に配慮しているか、疑問符がつくという。
メキシコの闘牛は約500年の歴史があり、年間300万人を超える観客が足を運ぶ。じわりじわりと闘牛を弱らせ、最後に屠られるスタイルは動物愛護の観点から批判の声が絶えなかった。そこで、制定された新条例では牛の殺傷、刃物の使用は禁止、牛の出場時間は15分などとされている。メキシコシティーでは闘牛の廃止を訴える団体、獣医師、畜産業者などを招いて協議が行われ、その様子はネットで公開された。世論は闘牛廃止に傾くなか、アルバレス議員らは経済的効果を提示。闘牛廃止ではなく、暴力のない闘牛を志向する改革が決まった。
- キーワード
- 闘牛
三重県の神社では上げ馬神事が行われてきたなか、馬の負担が大きく、足を骨折した馬が殺処分となった事例に批判が集まった。そこで馬が駆け上がる坂の傾斜を緩やかにするなどの変更が加えられた。神社が行政に相談し、専門家、獣医師、動物愛護団体らが加わった検討会が開かれ、改善策が話し合われたという。だが、上げ馬神事の愛好家からは「盛り上がりに欠ける」、動物愛護の団体からは「行事そのものをやめるべき」という意見があがっている。佐伯潤氏は「人と動物を隔離していくようなことは慎重に考えるべき。動物を身近に触れることによって、動物に対する思い、愛情が育まれている。それが動物愛護のこころになっていく。人と動物の共生に繋がると考える」などと語った。
- キーワード
- 上げ馬神事