2025年12月16日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
令和のゴールドラッシュ 空前の金価格高騰で日本・世界は

出演者
桑子真帆 川村洋平 根岸祥子 
(オープニング)
金高騰 世界・日本で何が? 令和のゴールドラッシュ

今回のテーマは“金”。ことし最高価格を更新し続ける金。世界ではさらなる値上がりを見越して獲得競争が激化している。眠れる金はどこにあるのか、今熱い視線が注がれているのが日本。世界の企業が最新技術を使って日本各地で宝探しを始めている。資源のない国と言われてきた日本にどんな可能性があるのか、令和のゴールドラッシュの最前線に迫る。

オープニング

オープニング映像。

#5081 令和のゴールドラッシュ 空前の金価格高騰で日本・世界は
金高騰 世界・日本で何が? 令和のゴールドラッシュ

鹿児島・霧島市の山間にある山ヶ野地区でカナダの資源探査会社の日本法人が新たな金鉱脈を発見した。山ヶ野地区は江戸時代から国内有数の金鉱山を持つ町として栄えたが採算が取れなくなり戦後に閉山。そんな地域にカナダの企業が注目したのは、同じ鹿児島にある国内で唯一稼働している菱刈鉱山の存在。鉱石1tあたりの金の量は世界トップクラスで年間3.5tを産出している。鹿児島北西部のこのエリアにはかつて多くの金鉱山があり、地下深くに眠る金を見つけられる可能性にかけた。金鉱脈の発見を可能にしたのは最新技術による地質調査。ポイントは電気の通しにくさで、日本では電気を通しにくい石英に金が含まれることが多い。データを元にボーリング調査を実施すると推測通りの場所で金が見つかった。調査を繰り返してデータ精度を上げ、より多くの金が眠る鉱脈を探り当てようとしている。地元住民も金鉱脈の調査に期待を寄せていて、金鉱山が復活すれば雇用や観光客増加につながると地域再生の夢を託している。地元自治体からも鉱産税など税収アップが見込まれると期待が寄せられている。

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アービングリソースジャパンエネルギー・金属鉱物資源機構伊佐市(鹿児島)尚古集成館山ヶ野地区(鹿児島)経済産業省菱刈鉱山霧島市霧島市(鹿児島)

今、全国で外資系企業が金の調査を進めている。あるカナダ系企業が13年前に日本進出した決め手となったのは2011年の鉱業法改正。鉱業権の取得について、改正前は技術力や資金力は問われなかったが、改正後にこれらの条件が加わり開発能力がある事業者が権利を得られるようになった。この企業はこれまで約380件、金鉱脈を調査する権利を獲得。現在、金の調査を行っている外資系企業は少なくとも3社で全て法改正以降に参入している。

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ジャパンゴールド
スタジオトーク

スタジオには金の地金が登場。1本で約2400万円(1kg)だという。金の価格はこの2年で2倍以上と急上昇。世界では新興国を中心に金で国力を高めようと様々な動きが出てきている。

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田中貴金属工業
金高騰 世界・日本で何が? 令和のゴールドラッシュ

東南アジアのラオスでは去年、政府が主導して金の専門銀行を設立した。取り扱うのは通貨ではなく金。ラオスでは伝統的に金を重んじる文化があり、贈り物や宝飾品として好まれている。この銀行は国民が持っている金を預金として集める。狙いは世界的な物価高によるインフレと通貨安への対策。金を多く持つことで国の信頼度を高めて苦境を乗り越えようとしている。銀行設立から1年、預けられた金は2t以上、約460億円に上る。

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ラオスラオス・ブリオン・バンク

高まる需要には弊害もある。アフリカ最大の金の産出国ガーナは金で国力を高めてきたが、その現場は政府の管理が行き届かない状況に陥っており、金の違法採掘が増えている。貧困が問題になっているガーナでは違法採掘が手軽な収入源になっている。こうした採掘が原因で環境汚染が引き起こされている。最後作業で水銀を使い、そのまま排水。世界銀行のまとめでは80か国で鉱物の小規模採掘が行われ、その8~9割が違法だと報告されている。ガーナでは違法採掘の中止や保障などを求めた住民の抗議活動が広がっている。

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ガーナ世界銀行
スタジオトーク

スタジオで国際金融に詳しい根岸さんと世界の採掘技術に詳しい川村さんが解説。根岸さんは「いま最も信頼できる資産が金。その背景にはウクライナや中東情勢による世界経済への見通しへの不安感が高まっていること、トランプ政権下で利下げが予定されドルの価値低下になることがある。去年、金を増やしたポーランドは軍事費を増やしていて安定した金を保有する方向。インドや中国は何年か前からアメリカとドルからの脱却を目指して金を増やしている」とした。

金はこれまで50mプール約4杯分が採掘され、残りは1杯分(約5万トン)しかない。こうした中で日本にも熱視線が注がれている。川村さんは日本で金を採掘する上でのハードルについて「鉱山操業は基本的に地下水が汚染される。浄化装置のお金がかかったり閉山後のコストも考えなければならない。外資系企業が探査をメインで行っているが、探査と開発の企業は別で、外資の場合も日本企業の場合もある。土地所有料や鉱山税など日本への恩恵もある」とした。日本は採掘に関してはブランクがあり技術面で遅れをとっているが、電子基板のリサイクル分野でリードしていた。しかし、この分野でも激しい争奪戦が起きている。

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山ヶ野地区(鹿児島)田中貴金属工業菱刈鉱山
金高騰 世界・日本で何が? 令和のゴールドラッシュ

秋田県北部にある製錬所では約20種類の金属を精錬している。原料は使われなくなったパソコンの基盤などEスクラップと呼ばれているもの。この中には、天然の金鉱石の数十倍から100倍の金が含まれているという。この会社は海外を中心にEスクラップを集めてきたが、いま入手が難しくなっている。EUは今年1月からEスクラップの国境を越える移動への規制を強化。その結果、日本への輸出にあたっては審査時間が長期化しコストもかさむようになった。さらに他の地域でも規制が始まっている。この企業では金を確保するため南米や東欧などこれまで重視してこなかった地域にも営業を拡大しようとしている。

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DOWAエコシステム小坂町(秋田)小坂製錬欧州連合

世界でEスクラップの囲い込みが広がる中、横浜の企業が開発した新たな技術に注目が集まっている。新たな技術は、金を吸着する特殊な性質がある藻を使った金のリサイクル装置。開発の最終段階だが、この企業のもとには海外からの問い合わせが相次いでいる。IT産業の発展が著しいインドは電子廃棄物の発生量が世界3位でありながら自国でのリサイクルが十分に発展していない。インドの企業は藻の装置を導入することでEスクラップを海外に出さずに自ら金を回収したいと相談してきたという。

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インドガルデリア横浜(神奈川)
スタジオトーク

川村さんは「日本のリサイクル技術は世界最高水準にある。サプライチェーンの中で両輪として資源を有効利用する必要がある」とした。根岸さんは「現在、国際秩序の安定は容易に望めない。今後も金への依存、その結果としての金価格の上昇は続く可能性が高い。ただ、いまの価格高騰はかなり異常事態。これほどまでに金に頼る必要のない世界に戻ることが望ましい」とした。

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国際連合
(エンディング)
エンディング

人々を魅了する金の高騰には世界の様々な出来事が大きく関係している。

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