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本日の世界遺産はメキシコのテワカン・クイカトラン渓谷。最大20mの柱サボテンの世界一の密集地となっている。
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「テワカン・クイカトラン渓谷」はメキシコの首都メキシコシティから300kmほど離れた広大な渓谷で雨の少ない乾燥した地域。広さは東京都の3分の2ほどで空から見ると広い盆地となっている。山に生えている植物は一見木に見えるがその正体は柱サボテン。100m四方に最大で1800本生えている。柱サボテンは柱上の形をしたサボテン類の園芸的総称で一番高いサボテン「ネオブクスバウミア・メズカラエンシス」は全長18mで1年で10~20cm伸びる。「セファロケレウス・コルムナ・トラジャニ」は先が左側に曲がっている固有種で左側には花が咲いておりそれを守るために北側に日陰を作っている。直径8cmほどのコリファンサ・カリペンシスなどこの地にしかない固有種は他にも存在する。自然に折れていたサボテンを確認する。90%は水分でこれにより乾燥した環境に順応してきた。
テワカン・クイカトラン渓谷とメキシコ湾の間には2000m級の山脈が連なっており、海からの湿った空気が山脈が阻み渓谷は乾燥している。気温が40度に達する渓谷には人も暮らしている。ある家ではサボテンを使っている。枯れたサボテンの芯は木のように固く外壁などに利用されている。渓谷にはサボテン以外にも植物は存在する。ボーカルネア・グラキリスは1997年に秋篠宮ご夫妻が訪れた際に「象の足に似ている」と仰ったことから次の日から「象の足」と呼ばれるようになったという。地域によって生える植物は異なり、雨が多い地域では落葉広葉樹もありサボテンと混在している。
テワカン・クイカトラン渓谷にはハナジロハナグマやボブキャット、ピューマなど約600種類の動物が生息している。絶滅危惧種の美しい野鳥ミドリコンゴウインコも生息している。その美しさゆえ乱獲された過去がある。テワカン・クイカトラン渓谷は北中米の乾燥・半乾燥地帯で屈指の生物多様性を理由に世界遺産に登録された。さらにこの地はメキシコの食文化を育んだ地でもある。トルティーヤやタコスに使われる生地の原料であるとうもろこしはおよそ5500年前から渓谷で改良され今の姿になった。
テワカン・クイカトラン渓谷では約1万年前から狩猟採集生活があった。1960年代に見つかった「コシュカトラン岩陰遺跡」はおよそ1万年前から人が暮らしていた考えられている。その洞窟からは人が食べた動物の骨の他、トウモロコシの原種「テオシント」が発見された。約5500年前からテオシントの品種改良が始められ大きさが異なるものが見つかっている。先住民たちは今も先祖代々の手法を守って栽培をしている。狩猟採集生活から農耕生活へ移り変わったがそのためには水が必要だった。そこで先人たちが作ったのが水路で現在も当時の物を補強し使用されていて渓谷のあちこちに張り巡らせられている。さらにダムも作っていて現在も遺跡として残っている。短い雨季に溜まった水を畑に供給する仕組みで約4400年前から水路網が発達し農作地が拡大した。
食料の確保が安定すると集落も誕生する。紀元前300年頃から建てられた要塞の遺跡や神殿跡が残されている。さらに身分の高い人の墓もあり人が増えたことで統治するための階級社会になったと考えられている。トウモロコシなどの技術はオルメカなどに広まり古代文明の発展を支えた。そしてテワカン・クイカトラン渓谷は農耕などを発展させた痕跡があることから文化遺産としても評価されている。
テワカン・クイカトラン渓谷では約2000年前に塩づくりが始まり、その景色を上空からみると絵の具のパレットのようにカラフルとなっていた。かつては海の底にあったため地下水は塩分を含んでおり、それを利用した塩作りは現在も行われている。塩田の中にある井戸には水が溜まっており海水の10倍以上の塩が含まれており、それを組み上げ天日で約2ヶ月間乾燥させる。
エンディング映像。
世界遺産の次回予告。
ベスコングルメの次回予告。