- 出演者
- 眞鍋かをり 高橋茂雄 織田信成
ニッポンには全国に約50種類の染物がある。皇后陛下も着用された「絞り染め」は日本を代表する伝統工芸で海外でも「SHIBORI」と呼ばれ世界共通の言葉になっている。そんな絞り染めを愛してやまないフランスの翻訳家・コルネリアさんが初来日。来日を機に人生が一変する事態に発展する。
コルネリアさんは若い頃パリで服の方正や裁縫の仕事をしていた。結婚を機に翻訳家に転職。イギリス人作家が書いた絞り染めの本と出会い若い頃の情熱が再燃し、1週間のうち30時間以上を絞り染めの製作に費やすようになった。自身で作った作品は友人のアトリエやイベントなどにも出展。コロナ禍の際、絞り染めと出会ったためまだ日本に行ったことはないという。今回、番組が日本への招待券を渡すとコルネリアさんは感激。2023年7月、初来日を果たした。早速向かったのは京都。フランスにいた時に手に入れた絞り染めの一種「京鹿の子絞」の染め方を学ぶのがコルネリアさんの夢ということで、京都絞り工芸館館長の吉岡さんの元を訪ねた。吉岡さんは絞り染め職人であると同時に京鹿の子職人グループ「京都絞栄会」の会長でもある。京鹿の子絞は分業で制作。下絵・括り・染色などの工程を分業することにより専門性を高めることで精密で豪華な絞りを生み出してきた。今回は吉岡さんがコルネリアさんのために各分野の職人を紹介。すべての工程を知ることで京鹿の子絞の真髄を学んでほしいと話した。
まず吉岡さんが紹介してくれたのは絵師の松本さん。松本さんは日本に数人しかいない京鹿の子絞の絵師で、50種類もの模様を描き分けることができる。早速コルネリアさんに作業工程を伝授。どんな模様を絞り染めにするか決めていく。絵に描いた原寸大の下絵を型紙の上に写し、小刀で型彫り。京鹿の子絞は分業制で作られるため次の職人が絞りの違いがわかるよう道具を使い分け彫り分けしなけらばならない。京鹿の子絞の着物を作る際には15万以上の粒を正確に彫るという。下絵から型彫りを終えるまでは丸4日。型紙に色を付ける工程では青花紙を使用。青花は水に浸せば消えるため下絵の色が生地に残ることはない。
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水に溶いただけで消える青花紙の製造工程を探るためコルネリアさんは滋賀県草津市へ。草津市では日本で唯一青花紙が生産されている。青花農家の中村さん夫妻を訪問。青花紙の原料となるのはツユクサの一種「青花」。江戸時代に染め物の絵の具として使用が始まり最盛期の大正時代には専業農家が約500軒もあった。現在は化学染料の登場などで生産量が激減。生産する農家はわずか3軒のみとなっている。青花は毎日早朝に花が咲きき昼ごろにはしぼんでしまうため作業ができるのは早い時間のみ。収穫時期は夏場で、花を摘んでも次の日にはまた咲くため毎日昼までに花摘みを行わなければならず「地獄花」とも呼ばれていた。摘んだ青花を潰して取り出した液を丁寧に和紙へ塗り込む作業を1週間から10日間繰り返し青花紙は完成する。
京鹿の子絞の括りの作業へ。下絵に沿って糸入れをするため括り職人の村上友司さんの元を訪ねた。村上さんは生地を筒状に絞り上げて染め、開いた傘を上から見たような模様を作る「傘巻き絞り」専門の括り職人。傘巻き絞りに使うのは絞り台という道具。絞り台に輪郭を縫った糸の両端を引っ掛け生地を均等に折りたたんでいくことで輪郭のラインを一直線にしていく。まっすぐに整えた糸を引き絞ることで染料の侵入を防ぎ形がしっかりとした傘巻き絞りが作られていく。
コルネリアさんのため職人さんたちが集まり歓迎会を開いてくれた。歓迎会には4人の職人の皆さんも参加。その中の1人・小島基裕さんは括り職人歴49年帽子絞りの達人。帽子絞りとは染めない部分をビニールで覆う技法で、染めなかった部分に後から絵を描くことなどができ表現の幅が広がる。染める際水を吸って膨らむ紙を使用し生地に密着させることで染料が侵入することを阻止。隙間のない芯を作ることが重要だという。芯を生地の内側に仕込みビニールで覆うが、まだビニールがなかった時代は竹の皮が使われていた。
小島さんの指導を受け、コルネリアさんの帽子絞りが完成した。
最後に訪問した職人は染め師・若林さん。若林さんはあらゆる色を勘で再現するスペシャリスト。コルネリアさんは自分で3000色以上の中から選んだ「あずき色」の再現を希望した。若林さんは50種類の染料を組み合わせ3000種類の色を作っている。繊維は熱によって開き色に染まりやすくなるため、染色を始めたら常に湯を沸かし続ける。色の出方は種類や状態、天気や温度・湿度によって常に変化。この微妙な違いは機械や分量だけでは測れない。モノをいうのは染め師の経験と色彩感覚。若林さんは色の調合を幾度も繰り返したことで今では感覚と目分量で組み合わせが可能になったという。コルネリアさんが希望した色はわずか10分で完成。一度布を染料に浸してしまうと元には戻らないため一発勝負の染色作業となったができあがった生地はまさしく理想通りの色だった。翌日、染め上がった手ぬぐいを吉岡さんが糸解き。コルネリアさんの手ぬぐいが完成した。
コルネリアさんの手ぬぐいが完成。完成した手ぬぐいは職人さんが作ったものと比べても遜色ない出来栄えだったがコルネリアさんは「私のは輪郭の部分が滲んでしまっています」と指摘した。原因は生地を縛る強度。強度が弱いと浸水し輪郭が滲んでしまう。正確に絞るには安定した絞りをマスターする必要があると学んだ。
2年後の今年、コルネリアさんの驚きの進化を伝えるため番組スタッフが京都絞り工芸館を訪問。2年前コルネリアさんを指導した職人さんたちを再び招集しフランスから届いたビデオレターを見てもらうことになった。
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2年前コルネリアさんを指導した職人さんたちがフランスから届いたビデオレターを見ることに。VTRのコルネリアさんが挨拶するとみんなで乾杯をした。
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コルネリアさんは現在フランスで初心者向けの絞り染め教室を開催。生徒の皆さんからは親切な指導だと評判を得ているという。コルネリアさんはフランスでは手に入らない材料を代用品で賄うなど独自の制作法を編み出し作品作りを継続。中でも傘巻き絞りや帽子絞りに欠かせない絞り台は自作し練習を重ねてきた。実際にコルネリアさんが作った作品を職人さんたちに見てもらうことに。2年前とは絞りのうまさなどが格段にレベルアップしており全員舌を巻いた。
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今年2月、コルネリアさんはヨーロッパで絞り染めを広めるための団体を設立。フランスで絞り染めの非営利団体が設立されるのは初のこと。フランスだけでなくイタリアなど団体の理念に共感した会員が41名集まり、展覧会や交流会などを開催している。また、コルネリアさんは現在している翻訳の仕事を徐々に減らし来年を目処に職人として独立することを決断。自らの作品を販売するオンラインショップを準備中だという。
「世界!ニッポン行きたい人応援団」の次回予告。
「ワールドビジネスサテライト」の番組宣伝。総裁候補が経済で討論。