- 出演者
- 寺門亜衣子 村上健志(フルーツポンチ) 羽田美智子
オープニング映像と本日の内容を紹介した。
常総市 生涯学習センターで収録。ゲストは羽田美智子と村上健志。羽田は常総市出身。常総市は関東・東北豪雨で甚大な被害を出したが、水害対策の新たな取り組みの契機ともなった。常総市内には一級河川の鬼怒川が流れており、97か所で被害が生じ浸水面積は市の約3分の1。死者15人(関連死含む)負傷者は40人以上、全半壊家屋は5000棟以上にのぼった。
2015年9月9日 関東から東北にかけて線状降水帯により大雨となった。10日午前0時15分、国土交通省は鬼怒川に氾濫危険情報を発表。午前4時 常総市は若宮戸周辺地区に避難勧告、2時間後川から水が溢れる「溢水」が始まった。午後0時50分、鬼怒川の堤防が決壊。午後1時8分 鬼怒川東側全域で避難指示が出たが、避難勧告が遅れた地域もあった。浸水域には4200人が孤立した。
関東・東北豪雨から10年。教訓をどう生かすか。4つに分けて説明する。1は想定外の雨量。この雨量をもたらしたものは「線状降水帯」。湿った空気が流れ込み、積乱雲が帯状に連なり通過または停滞することで強い雨を降らせる。9月9日から10日にかけての24時間で鬼怒川の流域平均雨量は410ミリに達した。当時国土交通省が想定した100年に1度の鬼怒川の流域平均雨量は326ミリだったという。短時間で強い大雨が降ったために鬼怒川の排水能力を上回ってしまったと考えられる。こうした極端な大雨は今後も増えるう傾向にある。後に当該地域に居住していた男女1000人に行ったアンケートによると30%が孤立していたことがわかった。そのうち7割が自宅で避難しなかったのは自宅が浸水するとは思わなかったという。自宅の浸水リスクはハザードマップで確認できる。関東・東北豪雨の被害は降水量こそ想定外だったが、浸水域は市によるマップとほぼ一致していた。しかし当時はハザードマップの認知度は低かった。
茨城・常総市ではより早く避難情報を発出するための最新システムの導入が始まっている。関東・東北豪雨で多くの人が取り残された原因の1つは避難情報の発出の遅れ。この問題の解消に役立てようというのが「IDR4M」。浸水する危険性の高い地域をリアルタイムに地図上に示すことができ、6時間先まで予測できる。また、河川の氾濫リスクを下げる“田んぼダム”などの取り組みも進められている。広域非難でより安全に逃げる取り組みなども行われている。
村上さんは「田んぼダムは知らなかった、ちょっとしたことで災害を予防できてるというのはすごい」とコメントした。最近は、流域に関わるあらゆる関係者が共同して対策をおこなう「流域治水」という考え方が広まっているそう。また、大切になってくるのが広域避難。避難のタイミングなどに困らないように、あらかじめ記載しておく人一人の防災行動計画「マイタイムライン」を作っておくと良いそう。高齢者や障害者など支援を必要とする人たち一人一人の避難行動計画「個別避難計画書」を事前に作成しておくことも重要となる。
鬼怒川沿いにある三妻地区では10年前に堤防が決壊し高齢者や障害のある人が逃げ遅れた。これを教訓に市では5年前から要支援者約2000人を対象に個別避難計画の作成を呼びかけている。しかし、去年までに応じた人は300人あまり。そこで市が始めたのが三妻地区の自主防災組織との連携。メンバーは日頃の近所付き合いを通じ地域の家庭事情にも精通している。自主防災組織のメンバーは市からの情報を元に要支援者を訪問。石塚晴彦さんは視力が弱く、同じく要支援者の92歳の母と暮らしている。個別避難計画については分かりづらさを感じ作成していなかった。自主防災組織の有田さんは近所に住む顔なじみで、有田さんが計画の作成について声をかけたところ石塚さんが同意したという。避難の際の支援者は近所に住む親類に頼むことを話し合って決めたという。自主防災組織はこの1年間で約60件の計画を作成。近所だから生まれる信頼関係が作成の実現につながっているという。要支援者の情報は随時、市と共有している。市は今後も地域住民同士の信頼関係を頼りに計画の作成を広げていきたいとしている。
常総市のケースを受けてのスタジオトーク。羽田美智子は近所ってありがたい、煩わしいところかもしれないが、役に立って助け合えるなら素敵なこととコメント。個別避難計画は地域で共助を実現するための手段だと梅本通孝氏はいう。
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常総市には現在約7000人の外国人が暮らしている。これは市の人口の約1割にあたる。10年前の豪雨では災害の情報が十分に伝わらず多くの外国人が命の危険にさらされた。常総市で外国人の暮らしを支援するNPOの代表・横田さんは外国人は日本のニュースを見ないので情報が入らないと指摘。そのために取り組んだことは災害が起きる前に知識をつけてもらうこと。8か国語でハンドブックを作成。また、災害発生時の情報伝達の仕組みづくりにも取り組んでいる。自治体はここ数年ホームページ等を通じて多言語での災害情報の発信を強化。しかし、外国人はそもそもその情報がどこにあるのかわからずアクセスできていない人も多いという。そこでNPO代表は地域にいる発信力のある外国人に情報を届けてもらう仕組み作りに取り組んだ。自治体などの情報を横田さんが分かりやすくまとめ、キーパーソンが各言語に翻訳。それぞれの国の人が多く使っているSNS等で仲間に拡散してもらうというもの。常総市では外国人の多様化が進み、出身の国や地域は約50に及ぶ。接点の少ない国のキーパーソンを見つけようと訪問活動も行っている。全ての外国人に情報が伝わるようキーパーソンを増やしていきたいと横田さんは考えている。
関東・東北豪雨から10年。様々な対策を見てきた上で梅本氏が大事だと考えていることが避難スイッチを押すことだという。避難スイッチとは災害時にいつどのように避難行動をするのかの判断基準のこと。災害時によくあるのは今まで大丈夫だったからきっと今回も大丈夫だろうと思ってしまうこと。この正常性バイアスが避難の開始を遅らせてしまうと梅本氏は指摘。避難スイッチを確実に押すためには事前に避難先まで歩いてみることが大事と話した。羽田美智子は常に備えることが大事、日頃からできることをやっておくことが大事などとまとめた。