2023年7月23日放送 2:35 - 3:25 NHK総合

NHKスペシャル
選 ディープ・オーシャン▽超深海地球最深フルデプスへの挑戦

出演者
三宅民夫 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像が流れた。

ディープオーシャン 超深海への挑戦
最終回はマリアナ海溝へ

シリーズディープオーシャンでは、世界で初めてダイオウイカを撮影して5年、去年は発光生物の王国に潜入、先月は南極の巨大生物に出会った。これまでに紹介したのは深さ1000mまで深海の入り口に過ぎなかった。今回挑むのは水深6000mを超える超深海。それは溝のように切れ込む谷の奥底にあり、探索できる探査機は限られているため今もなお未知の領域である。最新鋭の探査機を科学者とともに開発し、水深10920mのフルデプスと呼ばれる地球の最深部を目指す。指先の面積にかかる水圧は1トンで食料もほとんどいない。

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ダイオウイカ
地球の裂け目 マリアナ海溝

日本から南へ2500kmのグアム島沖の下が今回の舞台であるマリアナ海溝。地球の深海の殆どは平らで、深さ5~6000mほど。しかし太平洋の西側には裂け目のような場所があり、水深6000mを超える深さはこの裂け目にしかない。

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グアム島マリアナ海溝
深海とはどんなところ?

水深200mから先が深海であり、ごく僅かな光を捉えるため、ダイオウイカのように大きな目の生き物が大き存在している。自ら光を放つ発光生物にもたくさん出会うことが出来る。水深1000mを超えると光は全く届かなくなり、食べ物の確保が生死を分ける。口を大きく発達させて獲物を確実に捕らえるもの、海底にじっと立って獲物を待ち伏せるものなど、食べるための戦略がそのまま形に現れる。その体には凄まじい水圧がかかっていて、水深2000mでは厚さ2cmの鋼鉄製の球が潰れるほど。指先の面積に約200kgの重さがかかり、中が空洞の鉄球では水圧に耐えることが出来ない。この深さの生物のほとんどは体を水分で満たし、空洞を作らないようにして生きている。しかし、その戦略は水深6000mを超える超深海では通用しない。海に棲む様々なプランクトンに水深6000m同じ水圧を加えると、細胞内のタンパク質を押しつぶし動きが止まってしまう。普通は生き物は存在することが出来ないが、わずかながら生物が発見されている。

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タンパク質ダイオウイカデメニギス
マリアナ海溝 捜査スタート!

日本の深海研究をリードするJAMSTECの科学者とともにマリアナ海溝で水深6000mに生息する生物の謎に挑んだ。まず登場したのはランダーと呼ばれる深海探査機器。世界で初めて4Kカメラを搭載していて、新鮮なエサを取りつけ深海に沈め生き物を呼び寄せる。マリアナの海はどこまでも透明で、日本近海に見られるプランクトンの死骸が集まったマリンスノーがほとんどない。これは厳しい環境の証拠である。

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4Kカメラかいれいマリアナ海溝マリンスノー海洋研究開発機構
水深8178m 極限の生物を探せ!

3時間半後、ようやく水深8178mに到達した。指先ほどの面積に800kgもの水圧がかかっている。30分後、3cmほどの小さなカイコウオオソコエビが数匹やってきた。これは超深海だけで見つかっているヨコエビの仲間。巨大な水圧を物ともせずスイスイと泳いでいた。カメラは3時間毎に1時間撮影するように設定されていて、着底から2時間後にはカイコウオオソコエビが数え切れないほど集まっていた。時間とともにその数は増え、エサの魚は骨だけになってしまった。科学者は生きた魚を探していて、魚が撮影された最深記録は8152mであるため、8178mにいれば世界記録更新となる。変化が訪れたのは海底に到着後18時間が経過し、諦めムードが漂いだした時だった。

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大スクープ! 世界最深の魚

海底に到達してから18時間後、魚が現れた。これで深さ8178mでの魚の撮影となり世界新記録になり、魚の生存できる限界を30m近くも更新した。大きさ20cmほどのこの魚は3年前に発見されたばかりの新種と同じと考えられている。まだ学名は無く、研究者の間ではマリアナスネイルフィッシュと呼ばれている。研究者たちは魚が存在することの証拠になったことを喜び、遭遇まで18時間かかったことから魚の生息密度が低いのではないかと推測した。

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深海生物を捕まえろ!

超深海に生息する生物の謎に迫る国際合同調査が今年の1月に行われた。東京海洋大学の北里博士の呼びかけに選りすぐりの研究者が世界5か国から集まった。水深8000m付近で魚を実際に捕まえて詳しく調べようという計画。イギリスから参加したアラン・ジェイミソン博士は、10年以上に渡り超深海生物の研究をリードしてきた第一人者。今回は世界各国の多彩なランダーをスネイルフィッシュの見つかっている8000m付近に複数投入する。まずは捕獲用のフィッシュランダーを投入し、次に東京の町工場が作った小型の罠の江戸っ子1号を投入した。

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スネイルフィッシュ東京海洋大学江戸っ子1号神鷹丸

翌日、戻ってきた江戸っ子1号を確認すると超巨大ヨコエビが9匹捕れていた。体長19cmほどで鎧のような殻に覆われ尾は鋭く尖っていた。伝説などに登場する巨人の名前を取って、日本ではダイダラボッチと呼ばれている。戻ってきたフィッシュランダーにはスネイルフィッシュが入っていた。深海生物はすぐに傷んでしまうため、急いで分析を始める。

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スネイルフィッシュダイダラボッチヨコエビ江戸っ子1号
ついに対面!世界最深の魚

捕獲したマリアナスネイルフィッシュの体は鱗ではなく透明なゼラチン質で覆われ、しっかりとした目があった。観察を続けていくと、口の周りにたくさんの穴が開いていて頭に多くの感覚器があることがわかった。しかし皮膚は繊細で穴はどんどん塞がってしまう。穴の位置を素早く記録し、水の振動を感じ取るセンサーのようだと推測した。

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マリアナスネイルフィッシュ
解明!魔法の正体

凄まじい水圧を跳ね除ける魔法の正体として、生物が深海にどう適応してきたのか長年研究してきたポール・ヤンシー博士は、魚の持つTMAOという物質に目をつけた。TMAOは魚市場で嗅ぐ魚の臭いの正体で、深海の高い水圧の中で生きていくために欠かせない物質だとヤンシー博士は話す。

超深海の中では細胞の中で異常事態が起こっている。たんぱく質を水分子が押しつぶすように取り囲み、機能を停止させてしまう。ここで役に立つのがTMAOで、TMAOは水を引きつける性質を持っていてたんぱく質に水分子が集まることを防いでくれると考えられている。またヤンシー博士は深い水深の生物ほどTMAOが多く、マリアナスネイルフィッシュが最も多く持っていることを最近突き止めた。ヤンシー博士はマリアナスネイルフィッシュを最も深海に適した生物だと考えている。というのもマリアナ海溝が深くなり始めたのが5000万年前で恐竜が絶滅した後だと考えられていて、ほとんどの魚が浅い海で進化をしてきたことで深海への適応が充分でないため。

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選ばれしもの ヒミツの戦略

超深海を生き抜く生物の暮らしぶりをカメラを投入し、覗いてみる。水深8098mではマリアナスネイルフィッシュが2匹も映っていて、カマキリのようなヨコエビの仲間も周りにいた。さらにマリアナスネイルフィッシュがカマキリ型のヨコエビを捕食する瞬間を捕らえることが出来た。最新の研究によってマリアナスネイルフィッシュをCTスキャンした骨格には、100本以上の鋭い歯が並んでいることが分かり、さらの咽頭顎というもう一つの顎が口の中にあることがわかった。これは獲物の少ない超深海で獲物を確実に仕留めるために進化させてきたと考えられている。

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マリアナスネイルフィッシュヨコエビ
生態系を支える さらなる魔法

今回の調査で超深海に生息する生物の暮らしぶりが少しだけ分かってきた。まずエサにあつまってきたのはカイコウオオソコエビで、それをカマキリ型のヨコエビが巧みに捕らえていた。さらにそれをマリアナスネイルフィッシュが素早い動きと特殊な顎で食べていた。8000mの深海にカイコウオオソコエビを出発点とする生態系が出来ていたのだ。普段カイコウオオソコエビは最新の研究で、死骸の他に意外な食べ物を食べていたことが分かった。マリアナ海溝は鋭く深い谷の地形であるため、木の破片が沈んでくることがあり、カイコウオオソコエビはこれを非常に高い効率で分解しエネルギーに変える特殊な分解酵素”エキソセルラーゼ”を持っていることが分かった。水圧だけでなく食糧難を生き抜くための特殊な力も持っていた。

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初公開!マリアナ海溝の奇観

世界で一番深いマリアナ海溝。日本の研究チームが水深5700mの海溝の縁に鍾乳石が並んだような神秘的な光景を発見した。湧き水から生まれた鉱物が積み重なってできたと考えられている。チューブワームやシロウリガイといった深海生物の生息も確認された。これらは湧き水に含まれるメタンなどを栄養源として生きているという。

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フルデプスに挑んだ男たち

地球最深部フルデプスはマリアナ海溝の南端のチャレンジャー海淵にある。1960年にドン・ウォルシュとジャック・ピカールがトリエステ号がこの場所にもぐった。ドン・ウォルシュは海底に降りる直前にヒラメのような魚をみたと語った。

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海のミステリー 地球最深部の魚

地球最深部フルデプスでウォルシュは魚をみたと証言した。しかし多くの科学者が水圧などの観点から見間違いだと考えている。トリエステ号の挑戦以降、「かいこう」「ネレウス」などの無人探査機もフルデプスの調査を行った。2012年にはジェームズ・キャメロン監督がディープシー・チャレンジャーで調査を行っている。しかし魚の存在は確認されなかった。

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新型探査機で 地球最深部へ!

JAMSTECはフルデプスの調査のために新型の海底探査機UROV11KBCを開発した。2017年5月にUROV11KBCはかいれいとともに調査に出発した。細い光ファイバー1本でランチャーにつながれたビークルが海底を動き回る仕組みになっている。ランチャーからの切り離しは成功し、ビークルはフルデプスに沈んでいった。潜行開始から6時間20分でついに海底に到着した。

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地球最深部 フルデプスに到着!

ついに地球最深部フルデプスに到着した。水温2.4度、海底には泥が降り積もっていた。地球で最も深い場所と考えられている。

指先に1トン以上! 地球最深部を探査

指先程の面積に1トン以上の水圧がかかっている世界、地球最深部の探査を開始した。カイコウオオソコエビが泳いでおり自然に泳ぎ回る姿を捉えたのは初めてだった。さらにナマコのような生物を発見した。ナマコは全て同じ方向を向いており海底に流れがある証拠でもあった。

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