2025年8月20日放送 19:30 - 20:42 NHK総合

NHKスペシャル
堺雅人が巡る古代エジプト!謎の王ブラックファラオの実像に迫る

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エジプト悠久の王国 追跡!謎の王ブラックファラオ
追跡!謎の王ブラックファラオ 堺雅人エジプトへ

俳優・堺雅人が史上最古の文明の一つ古代エジプトの謎に迫る旅に出た。なぜ古代エジプト王国は3000年も繁栄できたのか?今回出会ったのはエジプトを影で支えた黒人王国。古代エジプトは全盛期を過ぎた紀元前11世紀から国が混乱し、危機に陥る。このときに立ち上がったのが異国からきた黒人の王・ブラックファラオ。故郷スーダンで歴史を塗り替える新発見が相次いでいる。

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追跡!謎の王ブラックファラオ 古代エジプトの救世主!?

このシリーズでは一つの大きな謎に迫っている。「なぜ古代エジプト王国は3000年も続いたのか?」。古代エジプトの年表を紹介。前回は初期・中期の時代をみた。今回注目するのは混乱期。古代エジプトは紀元前11世紀頃から国をまとめる絶対的な王がいなくなり、様々な勢力が乱立した混乱期になってしまう。これを救ったのが異民族の黒人王国の人々。黒人王国の王はやがてエジプトのファラオにまでなりブラックファラオとも呼ばれている。ヨーロッパ人は自らのルーツを古代ギリシャ文明と認識していて、古代エジプト文明は古代ギリシャ文明に影響を与えたこともありブラックファラオの研究があまり進んでいなかったという。

ブラックファラオを生んだ黒人王国とは?

ブラックファラオを生んだ黒人王国とはどんな国だったのか?その国は現在のスーダンにあった。三大ピラミッドがあるギザからはるか1300キロ、ここにも無数のピラミッドがある。黒人たちが築いた国とし最も古いクシュ王国の王たちの墓だ。エジプトのものと比べ先端の尖った独特の形をしたピラミッド。その数はスーダン国内に250以上、エジプトの2倍以上に達する。のちにブラックファラオを生み出したのがクシュ王国。古代エジプトのミナミに栄えたが文字をほとんど残さず詳しく歴史はわかっていなかった。しかし、今新たな調査ピラミッド ダイビング プロジェクトが進んでいる。かつてピラミッドの地下には王の埋葬室があったとされるが、そのほとんど盗掘されていた。それが最新調査によって一部のピラミッドになナイル川の地下水が流れ込み、盗掘を免れている可能性があることがわかった。アリゾナ大学のクリースマン博士はダイバーたちとともに地下のダイビング調査を行った。当時掘られた通路に出た。30m進むと通路の天井が大きく崩れていた。さらに奥へと続く道、天井から落ちたがれきが行く手を阻む。小さな入口にたどり着くと、砂に埋れた大きな石・クシュの王の棺が現れた。フタをされた状態の石棺、水に沈んでいたため約2500年もの間、盗掘を免れていた。古代エジプト式の埋葬方法。クシュの王に捧げられた副葬品が見つかった。シャブティという死後の世界で主人に仕える召し使いの像。最も多く見つかったのが金だった。クシュの墓で純度の高い金が大量に見つかった。周辺のピラミッドからも膨大な数の金製品が見つかった。クシュは豊かな金に恵まれた黄金郷だった。

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クシュの金はナイル川でつながる隣国エジプトの繁栄を支えていた。古代エジプト人は膨大な量の記録を残し、その歴史を後世に語り継いできた。エジプト中部のルクソールにツタンカーメン王の側近だった人物の墓がある。ここにクシュの様子を描いた壁絵が残っていた。黒い肌、巨大なイヤリング、頭に鳥の羽。クシュはナイル川を下ってエジプトに必要な物を運んできた。家畜や香辛料、特に多いのが金だった。金は古代エジプトの繁栄の象徴。その大半が隣国のクシュからもたらされたものだった。

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エジプトの黄金を支えたクシュ王国

クシュ王国がエジプトの黄金を支えていた。ダイビング調査でクシュ王の棺が見つかり引き上げる予定だったが、その年にスーダンで内戦が起きて、調査がストップしてしまっている。棺は水の中に沈んだまま。金は古代エジプトの代名詞。ツタンカーメン王墓から出土した金製品を紹介。黄金のマスクが棺など。棺は総重量110キロ。トトメス3世の治世、クシュからエジプトに送られた金は1100キロ以上とされている。クシュは当時、世界有数の金の産出国だった。

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堺雅人が迫る!エジプトとクシュの深い関わり

エジプトとクシュの関係を探るため堺さんが向かったのはエジプト・アスワン、かつてクシュはこの周りまで進出していた。今でも末裔たちの村が点在する。彼らはヌビア人と呼ばれるアフリカの少数民族。かつてクシュの人々も古代エジプトと同じくナイル川の恵を糧に暮らしていた。村に入るとエジプトとの他の村とは別世界。堺さんが見つけた青色はヌビアンブルーと呼ばれる。クシュの時代からこの地の人々が愛する色でナイル川の青色からとられている。クシュからエジプトに送られた香辛料は今でも特産品。ナイル川の中流域でクシュ王国は独自の文化を育んでいた。クシュには金以外にも古代エジプトを惹きつけるものがあった。その一つが高度な工芸技術。ヌビアンブルーは近年、独自の技術であることがわかった。クリスタルのペンダントの上には女神の顔がついている。顔の横幅はわずか2センチ、驚くべき技が使われていた。エジプトが羨む軍事力も持っていた。戦争では象の部隊を率いて戦っていた。クシュは象の部隊に加え、弓矢の扱いにも優れ、エジプトに傭兵として雇われるほどの兵力を持っていた。勢力を拡大し、ナイル川支流の物資や富と独占するまでになった。紀元前1500年に大事件が起きる。エジプトがクシュの征服に乗り出した。時のファラオはトトメス1世。トトメス1世は一気に進軍し、クシュを屈服させることに成功。エジプトはクシュの支配を徹底するため両国の国境にアブ・シンベル神殿を建てた。ラムセス2世像が踏みつけているのがクシュ人。エジプトにとってクシュの金や技術力、軍隊は何としても手に入れたいものだった。そのため圧倒的な力を示し、クシュを抑え続けた。

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力による支配 エジプトの戦略

エジプトは力でクシュを支配した。クシュの一番のエジプトとの違いは食料だった。ツタンカーメンの副葬品・サンダルにクシュ人が描かれている。サンダルを履くたびにクシュ人を踏みつけるという意味があったという。

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堺雅人が迫る!隣国を取り込むエジプトの秘策!

スーダン北部、かつてこの場所にクシュ王国の都ナパタがあった。都を見下ろす岩山ジュベル・バルカルはクシュの人々が信仰する聖地だった。エジプトはクシュを力ではなく別の手段で取り込んでいく。岩山の先端にある細長い岩はコブラの形に似ている。コブラは古代エジプトでファラオを守る守護神であり、聖なる存在だった。そこでエジプトは神話を作る。クシュの聖地にはコブラの神聖な力が宿る、その背後には最高神アメンが宿っていると。アメンは古代エジプトの中期以降、神々の頂点に立つ存在。その最も偉大な神がクシュの聖地に住んでいるとした。エジプト人はこの神話をエジプトやクシュの各地に描き、広めていった。やがてクシュの人々に変化が現れる。その様子を示す遺構が岩山の下で見つかった。クシュの人々が祈りを捧げた神殿、エジプトの神・アメンを祀るためのアメン神殿。彼らは自らの都をアメンの一大聖地と考えるようになった。クシュの人々は一度アメン神を受け入れるとますますエジプトと融合していく。エジプト・アスワンにあるクシュの神を祀るカラブシャ神殿。クシュの最高神マンドリスが描かれている。冥界の神・オシリスの息子として生まれたホルス、生まれてまもなく父が別の神によって殺されてしまう。幼いホルスはその身を案じた母・イシスによってパピルスの茂みに隠された。成長したホルスは父の敵を討つとエジプトの天空の神となった。この神話は古代エジプト人に愛され、各地の神殿に幼いホルスが描かれていった。クシュの神と古代エジプトの神が全く同じ存在になっていった。神殿の奥にはクシュの神がエジプトの神々と一体化した様子が描かれていた。

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異民族との共存 古代エジプトの知恵/エジプトの危機を救ったブラックファラオ

古代エジプトのプトレマイオス朝時代には、ギリシャの神のルックスをしたエジプトの神様を作り出した。2つの文化を融合させて当時増えてきたギリシャ人をうまくコントロールしようとしたとされている。図像は視覚的に分かるのでそれによってうまく支配しようとしたという。古代エジプトは多神教であったことで、多民族が自分とは違う人々を認めるような土壌がベースにあったと考えられる。紀元前11世紀からエジプトは混乱期に入る。クシュの人々がエジプトを救う。

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エジプトの危機を救ったブラックファラオ

エジプト最盛期のファラオたちの墓が集まる王家の谷。巨大な墓や豪華な装飾は王たちの絶大な力を示す。ところが紀元前1000年頃、国を一つにまとめる王がいなくなり、エジプトは存亡の危機に陥る。王家の谷の裏側に誰も立ち入らない山の奥深くに現れたのは深く掘られた縦穴。縦穴に偉大な王たちのミイラが隠されていたという。クシュ人を踏みつける壁画を作ったラムセス2世のミイラもある。この混乱はエジプトの西にいたリビア人の侵略がきっかけだった。彼らはエジプト各地の都市を奪うと、ファラオの名を名乗る者が次々と現れる。これに抵抗する勢力も加わり、エジプト国内が7つに分断された。争いが絶えず、神殿も廃れ、エジプトの繁栄は失われていった。このエジプトの窮地を救ったのがクシュだった。初代ブラックファラオのピイはクシュの軍隊を率いてすべての勢力を降伏させると分断していたエジプトを一つにまとめあげた。古代エジプトで黒人が王になったのは初めてのこと。その後4人のブラックファラオがエジプトを80年に渡り統治した。ブラックファラオたちが取り組んだのはエジプトをかつての姿によみがえらせることだった。

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ブラックファラオが都を構えたエジプトのテーべにはアメン神を祀るカルナック神殿がある。ブラックファラオはこの神殿の正面にエジプト復興のシンボルを建てた。高さ22m、当時のエジプトで最も高い柱。ブラックファラオは神々と人々の前でエジプトの復活を宣言した。さらに、各地の神殿を修復し、神々と向き合うための小さな礼拝堂も新たに作った。エジプトの人々の心の拠り所を取り戻していった。ブラックファラオたちのエジプトへの愛を最も象徴するのがピラミッド。莫大な労力がかかるピラミッドはすでにエジプト国内では作られなくなっていたが、クシュは初代ブラックファラオから500年もの間、故郷に作り続けた。

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女性が活躍したブラックファラオの時代

ブラックファラオの最大の目的はエジプトをかつての姿に戻すということだった。他にもブラックファラオたちはピイの妹をアメンの神妻として宗教界をおさえる重しとして絶大な権力を与えた。政治・軍事は男性のファラオが担い、宗教は女性がまつりどごとを行っていくようにした。クシュは女性の地位が高い国だったという。

堺雅人が見た古代エジプト文明の最後

紀元前671年、ブラックファラオ率いるエジプトに強大な敵・アッシリア帝国が襲いかかる。アッシリアは最新鋭の鉄製武器や騎馬戦術で歯向かう敵を倒した。聖地ジュベル・バルカルにあるコブラに似た岩。頂上に文字が掘られていることがわかった。発見したのはケンドール博士。博士は5年かけて岩に刻まれた文字を判読していった。そこにはエジプトのファラオの紋章とアッシリア軍に勝利したことが刻まれていた。ブラックファラオはエジプトを侵略から守っていた。繰り返されるアッシリアの攻撃についには敗れ、紀元前663年にブラックファラオは故郷のクシュへ退く。その後、古代エジプトはアッシリアやペルシャなど異民族の支配を受ける時代が長く続く。その間もブラックファラオが復興させたエジプトの神々や伝統は受け継がれ、エジプト王国は繁栄を続けた。しかし、紀元前30年古代エジプトはローマ帝国に敗れその領土の一部として組み込まれる。紀元前30年、古代エジプト王国は滅亡した。

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ジュベル・バルカルナパタ(スーダン)

堺さんは古代エジプトの最後を物語るエジプト・アスワンにあるフィラエ神殿にやってきた。エジプトを滅ぼしたローマ帝国は自分たちが信じるキリスト教以外の神々を破壊していった。神殿の片隅には古代エジプトのシンボルである象形文字ヒエログリフが刻まれていた。堺さんが旅の終わりに訪ねたのはクシュの末裔にあたるヌビア人のお宅。目に飛び込んできたのはクシュの人々が愛した青色。オサーマさん一家は伝統料理でもてなしてくれた。現在、ヌビアの人々はスーダンやエジプトで少数民族として生きている。彼らの使うヌビア語は固有の文字がない、クシュの歴史は書き残されてこなかった。しかし、受け継がれる歌がある。異なる文化や伝統を持つ隣国と波乱の歴史を刻んできた古代エジプト、それは3000年の文明を支える礎になった。

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古代エジプトは人類に何を残したか

大城道則さんは、古代エジプトが3000年もの歴史を残すことができたのは古代エジプト文化・文明の懐の深さではないかと話した。3000年の繁栄の理由は周辺の宗教・慣習・文化・民族すべてを吸収し丸抱えしてきたことにある。現代世界で国の中が分断されたり戦争・紛争の火種がたくさんある、それに対する解やヒントを得ることができるのがエジプト、エジプト文明は奇跡的な文明だと話した。堺さんは今回は考古学者の大変さを知ることもできたと話した。

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