2024年8月19日放送 1:43 - 2:43 TBS

ドキュメンタリー「解放区」
ダライ・ラマ ーまだ見ぬ祖国を夢見て

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(オープニング)
オープニング

オープニング映像。

ダライ・ラマ ーまだ見ぬ祖国を夢見て
ダライ・ラマ ーまだ見ぬ祖国を夢見て

中国南西部にあるチベット族のとある村でこの日、年に一度のお祭りが行われていた。神を降臨させ、大地の恵みに感謝し祈りを捧げる。中国国内のチベット族は約700万人。その多くがチベット自治区とその周辺の青海省などで暮らしている。チベット仏教を信仰するチベットの人たちは早朝から熱心に祈りを捧げる。自治区の街にはいたるところにチベット文化が色濃く反映されているが、唯一チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の写真は飾られていない。写真店にはチベット仏教の高僧の写真が並べられているのに対し、ダライ・ラマの写真は販売が禁止されている。理由は中国政府の「宗教の中国化」という政治政策にある。中国政府は2015年から信仰よりも中国共産党への忠誠を優先させる宗教の宗教の中国化を推し進めており、ダライ・ラマ14世をチベット独立を企む分離独立主義者と位置づけ、信仰はおろか写真を飾ることさえ厳しく禁じておりその存在はタブー視されている。中国の人口の9割を占める漢族はダライ・ラマに対し冷ややかな反応があがるが、チベット族は密かにダライ・ラマへの信仰を続けていた。チベット仏教の信者のほとんどは中国政府に国を追われインドに亡命しているダライ・ラマの帰還を強く望んでいる。

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現在ダライ・ラマが暮らしているのはインド北部のダラムサラ。インドとチベットの人たちが入り交じる独特な雰囲気を醸し出す街。1949年、中華人民共和国を建国した中国共産党は人民解放軍をチベットに進駐させ1951年にチベットを中国の一部にした。しかしチベットを開放するという名目での一方的な支配に僧侶や市民らの不満が募り、抵抗運動がチベット全域に広がっていった。1959年、ついにダライ・ラマは大規模蜂起。チベット動乱を機にインドに亡命しダラムサラにチベット亡命政府を打ち立てた。それから65年後の現在、ダラムサラには約1万人のチベット族が暮らしている。信仰の自由がないチベットを捨てインドに逃れてきた人々は堂々とダライ・ラマを信仰できる暮らしを幸せだと話したが、同時にチベットに残してきた家族に会いたいとも吐露した。近年は国境の警備やSNSの監視が強化され、亡命する人の人数は減少しチベットにいる人々との連絡をとることも困難な状態になっているという。

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インド・ダラムサラでダライ・ラマとともに暮らすチベット族。最大の課題はチベットの継承。ダラムサラには薬草を使用し病を治すチベット伝統の治療法を守り続けている病院があり、人々の暮らしの一部になっている。1960年に作られたチベット子ども学校では授業がすべてチベット語で進められ、幼稚園から高校まで約1100人がチベットの言葉や文化を学んでいる。その多くは良心や祖父母がチベットから亡命してきた後、インドで生まれた子供たち。彼らはチベットを訪れたことはないが言語や文化を学ぶことでチベット族としてのあり方を継承している。チベットの人々が多く暮らす中国南西部では寄宿学校制度が導入され、国際社会から厳しい目が向けられている。中国政府がここ数年、チベットの子供たちを強制的に寄宿学校に入れ、中国語を学ばせるなど漢族との同化政策を強いているのではないかと指摘されている。アメリカのブリンケン国務長官は去年8月、「寄宿学校に送られた子どもは100万人を超える」と非難。国連や欧米諸国からもチベット独自の文化を消し去ろうとする行為だと問題視する声が相次いでいる。

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今、国際社会から厳しい目を向けられているチベットの寄宿学校制度。寄宿学校の校舎は固く閉ざされ中の様子は不明。近所の人は「不気味だ」と寄宿学校を表現した。匿名でインタビューに答えたチベット族の男性は「寄宿学校の授業にはチベット語ののものが少ない。このままではすべて中国語になりチベット語を子供たちが話せなくなるだろう」と証言した。欧米諸国の批判に中国政府は「遠隔地の子どもに質の高い教育を提供するためであり寄宿学校に入れるかどうかは親の選択にゆだねられている」と反論した。チベット亡命政府のペンパ・ツェリン首相は中国政府の目的は中国人的思考を持つ人を育てることだと指摘している。

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中国の同化政策を避けるため、子どもを密かにダラムサラへと送る親が後を絶たない。親たちの切実な思いに背中を押されかつては毎年700人から1500人の子どもがダラムサラへ送り出されていたが、中国政府が国境警備を厳しくしたことで2015年以降その数は激減。2023年はたった4人しかダラムサラの子ども学校に入学しなかった。中国の同化政策とともに問題となっているのがダライ・ラマの後継者問題。チベット仏教ではダライ・ラマの死後、後継者は生まれ変わりを探す伝統があるが中国政府が自分たちに都合のいい「ダライ・ラマ」を擁立するのではないかとの懸念が生まれている。実際、中国政府は1995年にダライ・ラマに次ぐ高僧「パンチェン・ラマ」の「生まれ変わり」を連れ去り別の後継者を擁立している。チベット側が選び中国が連れ去った生まれ変わりの行方は現在もわかっていない。チベット亡命政府のツェリン首相は中国政府はおそらく偽のダライ・ラマの生まれ変わりを擁立するつもりだろうと指摘し「私はパンチェン・ラマの教訓から何も学んでいないのかと言いたいのです。誰も彼を尊敬していないではないですか」と語った。

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チベットでは今、急速に観光地化が進んでいる。チベット仏教の僧院「ラルンガル・ゴンパ」をはじめとする美しい景観を求め中国人観光客が殺到。ここ数年で飲食店やホテルなど街は観光地としての整備化が進んだという。しかし、外国人の立ち入りは許可されていない。宗教活動を徹底的に管理しながら観光地化し多様な中国を見せるためのショーウインドウにする、一方で外国人を立ち入らせないことで宗教や政治に絡む批判を覆い隠そうという中国政府の意図が透けて見える。中国政府はことあるごとにチベット自治区などの経済発展やインフラ整備貧困対策に力を入れているとアピール。2019年には脱貧困を達成したと宣言した。2021年はチベット解放から70年の節目だったこともあり、チベット自治区のラサに海外メディアをわざわざ招待してその発展ぶりや共産党統治の正当性をアピールした。しかし、今年2月、ラルンガル・ゴンパがある四川省カンゼ・チベット族自治州で水力発電ダムの建設により、6つのチベット仏教寺院と2つの村の住民約2000人が移転や破壊の対象になることに抗議し建設中止を求めるデモ動画が流出。大規模な経済支援と引き換えに宗教の中国化とチベット族の漢族化は確実に進められている。

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65年前、ダライ・ラマを慕い、ともにインドにやって来たチベットの人たちはチベットに戻れぬままインドに定住しすでに子どもや孫の世代に入っている。ダラムサラで暮らすチベットの人達は「帰りたいけど帰れない」という複雑な気持ちを抱え、日々暮らしている。

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