- 出演者
- 辻浩平 藤重博貴 酒井美帆 小原凡司
アメリカ・トランプ大統領の就任から1年。去年1月20日、トランプ大統領は「アメリカの黄金時代が今から始まる。今日から我が国は再び反映し世界中で尊敬されることになるだろう」と演説した。この1年、世界を翻弄し続けてきた。去年4月にはトランプ関税を発表。各国に課された相互関税は自由貿易の枠組み大きな影響を与えた。6月にはイランの核施設を攻撃、軍事介入によりイラン情勢は緊迫化した。今年に入り、ベネズエラでの軍事作戦を実施、マドゥーロ大統領を拘束し国家運営に関与すると主張した。
オープニング映像。
アメリカ・トランプ大統領の就任から1年。笹川平和財団・上席フェロー・小原凡司の解説。トランプ大統領は、これまでのようにアメリカが国際法や規範に縛られるのをやめたのだろう。中国やロシアはアメリカが縛られている間に自由にできたが自由に動けるようになったアメリカを警戒をしている。一方で対等な立場でディールができると考えているのではないか。
アメリカがベネズエラに軍事作戦を実施。ロドリゲス暫定大統領が以前の体制を引き継ぐ形で政権を率いている。もう1人のキーパーソンは去年、ノーベル平和賞を受賞した野党指導者のマリア・コリナ・マチャド氏。トランプ大統領はベネズエラの国家運営に関与していくとしている。
ロドリゲス暫定大統領はベネズエラの反米政権で要職に就いてきた。今月3日、ロドリゲス副大統領(当時)は「ベネズエラの唯一の大統領はマドゥーロ大統領。決して帝国の植民地には戻らない」と当初はアメリカに対抗姿勢を示していたが、トランプ大統領がさらなる攻撃を示唆すると協力的対応に転じた。14日にはトランプ大統領と電話会談し石油や安全保障などをめぐり直接意見を交わした。トランプ大統領は「すばらしい人物で我々とうまくやっていけるだろう」と発言。ベネズエラ野党指導者・マチャド氏は去年、ノーベル平和賞の受賞に合わせてベネズエラの潜伏先から出国、マチャド氏は「きょう私がここに来るために命を危険にさらした全ての人たちに感謝したい。私たちはベネズエラをアメリカ大陸における民主主義の拠点に変える」と発言。マチャド氏はトランプ大統領がロドリゲス氏と電話会談した翌日にホワイトハウスを訪問、トランプ大統領にノーベル平和賞のメダルを贈った。トランプ大統領は「強く感銘を受けた。立派な女性」と発言。米海軍特殊舞台「シールズ」元隊員のブライアン・スターン氏はマチャド氏のベネズエラからの出国を支援した。スターン氏は「我々が構想、計画し実行した」「寒くて疲労困憊で空腹だったが、それでも彼女は一言も愚痴を言わなかった」と明かした。しかし、ベネズエラでは政権による監視が続いており、すぐに帰国すべきではないと考えている。スターン氏は「いずれ活躍する時が来るが、今の状況においては“よい人”すぎる」と述べた。
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1期目のトランプ政権でベネズエラ担当副特別代表を務めたキャリー・フィリペティ氏はトランプ大統領が見据えているのはベネズエラの民主化だとし、ロドリゲス氏に強い警戒感を示した。フィリペティ氏は「国の腐敗、中国やロシア、イランとの関係、弾圧。ロドリゲス氏は、いずれにおいても中心的な存在だった。ロドリゲス氏にはマドゥーロ前大統領への忠誠心がある」と指摘。マチャド氏については手腕を高く評価し「ベネズエラ国民は彼女の一貫した姿勢を評価している。自分のためだけではなく、すべてのベネズエラの人のために戦う女性。トランプ大統領も、すぐにその手腕に気づきベネズエラを率いることができる人物だと分かるだろう」と述べた。
アメリカ・ワシントンから中継。アメリカ・トランプ大統領は「ベネズエラ・ロドリゲス暫定大統領と野党指導者のマリア・コリナ・マチャドの2人とも素晴らしい女性」と評している。トランプ大統領は段階に応じて相手を変えようとしているようにみえる。先週、「なぜロドリゲス氏と連携するのか」と問われた際、トランプ大統領は「イラクを覚えているか」と答えている。イラクではフセイン政権崩壊後、組織解体や公職の追放が急速に行われ混乱が生じて過激派組織が台頭した。トランプ大統領は、このようなことが起きないように、まずは政府や軍の実権を握るロドリゲス氏に政権を率いさせて情勢を安定させる。次の段階の民主化を見据えてマチャド氏とも良好な関係を築いておく。2人の力量も図りながら2段階で臨もうとしているにみえる。
視聴者からの声「マチャド氏がトランプ大統領にノーベル平和賞のメダルを贈ったのが、すっきりしない。このままでは強権的支配者が統治する構図は変わらない」を紹介。当面は他国であるアメリカ・トランプ大統領の思惑どおりになっていくだろう。命令から、わずか5時間後にマドゥーロ大統領は拘束され、アメリカ官邸に収容された。この軍事力を目の当たりにすればベネズエラに限らず、トランプ大統領の意向に沿おうとする国は出てくるだろう。トランプ大統領は「これが力による平和」と主張している。民主化が実現しベネズエラの人々が自分たちの手に国が戻ったと実感できなければ限界が出てくる可能性がある。トランプ大統領の強硬姿勢が今後も続く可能性はある。トランプ大統領が目指しているのはベネズエラのだけの安定ではなく西半球でのアメリカの優位性の回復。アメリカ・元国務省副特別代表のキャリー・フィリペティ氏は「トランプ大統領が考える主権とは自国の国境線に基づくものだけではない。対立国の影響を受けない状態が主権だと信じている」と指摘。トランプ大統領は麻薬の密輸対策などをめぐりベネズエラの隣国・コロンビアやメキシコなどに将来的には軍事行動を行うとも言及している。
アメリカ元国務省副特別代表のキャリー・フィリペティ氏は「トランプ氏が考える主権とは、国境線で区切られるものではなくロシアや中国といった対立国の影響力が及ばない範囲」と指摘。これは“勢力圏”とも言い換えることができる。トランプ大統領が影響力を発揮したいのは西半球。トランプ政権は去年12月、国家安全保障戦略でドンロー主義を打ち出した。南北アメリカ大陸を中心とする西半球でアメリカの国益を追及するとしている。笹川平和財団上席フェロー・小原凡司は「国境にとらわれない勢力圏をつくるという考え方は中国によく似ている。中華思想とは中華の光が届く範囲は中華圏という考え方で力が強まれば勢力圏が広がる。」と指摘。中国は1986年に「戦略的辺境」という論文を発表。中国が強くなれば戦略的辺境は拡大すると言い始めた。アメリカと中国が同じ用な考え方に基づき勢力圏争いを始めようとしているように見える。モンロー主義とは相互主義。アメリカはアメリカだけで安全と繁栄を享受するがヨーロッパの紛争には介入しないというもの。ドンロー主義の主の相手・中国と相互不干渉は成立するのか。現在は勢力圏を決定するために互いに経済力や軍事力を見せ合っている。アメリカなコアな部分としてはベネズエラ、コロンビア、キューバ、パナマ運河。今後、アメリカと中国は勢力圏をめぐり交渉やディールを続けていくだろう。第二次世界大戦後に欧米主導でつくってきた国境線で区切られる主権国家は非常に重要なものであり、主権は守らなければならない。これをアメリカが止めたように見える。モンロー主義は1820年代のもので中国が言っているのは王朝時代のもので、中国の言う戦後秩序は第二次世界大戦が終結直後のもの。アメリカ、中国、ロシアが戦後80周年の努力を無にして自分たちに都合の良い時代に戻ろうとしているように見える。
トランプ大統領が打ち出した“ドンロー主義”の舞台となる西半球では、波紋が広がっている。1959年に社会主義革命が起きて以降アメリカと対立してきたキューバと、4年前に初めて左派の政権が誕生し中国に接近したコロンビアが、今どうなっているのか取材した。
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キューバのハバナでは、ベネズエラで死亡したキューバ兵らの遺骨が先週戻った。友好国のベネズエラに派遣されていた32人はマドゥロ大統領の警護も担当していたとされ、アメリカ軍の攻撃で死亡した。元国家評議会議長のラウル・カストロ氏も遺骨を出迎えた。キューバはベネズエラから石油などの支援を受けていたが、アメリカの圧力とベネズエラの体制変化で見通しが立たなくなっている。アメリカの制裁で疲弊した経済は、いっそうひっ迫すると指摘されている。慢性的なガソリン不足で、ドライバーの男性はガソリンが手に入らず仕事ができていない。食料の配給が減る一方、食料品の価格は上昇している。国民の間で高まる不安を逸らそうとするように、政府が呼びかけた「反アメリカ」のデモ行進。トランプ大統領の次の一手に神経を尖らせている。ディアスカネル大統領は「脅しには屈しない」と演説した。
ベネズエラの隣国コロンビアは、大手自動車メーカーが進出するなど経済面で中国の存在感が増している。コロンビアで初めての左派政権を率いるペトロ大統領は「一帯一路」に協力する文書に署名するなど、中国への接近姿勢を示してきた。トランプ政権は、コロンビアで大量のコカインが製造されアメリカに流入していると主張。トランプ大統領は次の軍事作戦の可能性を示唆した。ペトロ大統領は反発し緊張が高まった。今月、大統領が呼びかけた集会に集まった支持者はトランプ政権を批判したが、ペトロ大統領は予想に反してアメリカとの対話姿勢を強調。集会の直前にトランプ大統領と電話会談し、ホワイトハウスで対面でも会談することになったと明らかにした。関係改善の可能性が見えてきたものの、市民の評価は分かれている。元コロンビア対外貿易相のカルロス・ロンデロス氏は「コロンビア側が緊張緩和を図る背景には、経済的にアメリカに依存している事情がある」と指摘する。
コロンビアのペトロ大統領はトランプ大統領に対し融和的な姿勢に転換したように見えたが、ほかの中南米の国々の中にもアメリカに近づく動きが出てくるのか。エクアドルやボリビア、チリでトランプ政権との連携を目指す候補が大統領選挙で勝利するなど、右派や親米派の影響が強まっている。コロンビアはもともとアメリカと経済的にも密接な関わりがある親米の国のため、トランプ大統領への批判を繰り返してきたペトロ大統領を批判する市民も多い。コロンビアでは5月に大統領選挙が予定されている。ペトロ大統領としては、来月のトランプ大統領との直接会談で危機を回避することで、左派にとって有利な展開を作りたい狙いもあるとみられている。今年はブラジルやペルーでも大統領選挙が行われる。アメリカと一定の距離感を保ちつつ中国などに接近してきた国々にとっては、“ドンロー主義”への難しい対応を迫られることになりそうだ。
アメリカは“ドンロー主義”によって西半球で優位に勢力を広げようとしている。背景のひとつは存在感を増す中国への危機感。中国の「一帯一路」では、中南米の多くの国々が参加してきた。笹川平和財団の小原凡司上席フェローによると、中国は経済力だけではなく、アルゼンチンには人民解放軍が運用する宇宙観測施設を、キューバには情報収集施設を作った。2020年前後には「中国のラテンアメリカへの影響力の拡大は、アメリカで軍と民が共に使える港や空港を作り中国が軍を展開することだ」と言い始めた。トランプ大統領は、自分が駄目だと思ったものはすべて排除するという方向に動き始めた。中国はディールができるという可能性も視野に入れ始めた。中国はアメリカと中国は不平等だと思っているため、アメリカが中国を中南米から排除しようとする動きに抵抗するだろう。
西半球での勢力安定を目指すトランプ大統領がさらに手を伸ばそうとしているのが、デンマークの自治領であるグリーンランド。領有を主張するトランプ大統領に、グリーンランドでは反発が広がっている。グリーンランドから中継。いたるところにグリーンランドの旗が掲げられ、アメリカへの反発が強いことがわかる。本来値段のつけようのない自分たちのふるさとの土地をディールで奪おうとするトランプ政権の姿勢に、誇りを傷つけられうんざりしている市民の気持ちが伝わる。ヌークでは先週、トランプ政権に抗議する大規模なデモが開かれた。これまでのところ、トランプ政権の呼びかけに同調する動きは見られない。第二次世界大戦後の国際秩序の要となってきたアメリカとヨーロッパの関係だが、大きく変わりかねない局面にきている。トランプ政権が新たな関税をかける方針に、ヨーロッパの8カ国は強く反対している。欧米の安全保障体制の維持のためにもアメリカとの対立は避ける必要があり、ヨーロッパ各国は慎重に対応を進めている。デンマークとグリーンランド自治政府はアメリカと作業部会を設けることで合意しているが、ヨーロッパ側は不信感を募らせている。
グリーンランドをめぐってアメリカとヨーロッパの間に亀裂が入っている。笹川平和財団の小川凡司上席フェローによると、ロシアはウクライナに対して軍事侵攻したが、北極圏でもそれが起きている。アメリカはロシアと直接対峙し、ロシアに対して自分たちの優位を示したい。世界中で起きるとなると、勢力圏の争いによって他の国は大国の思惑だけで国益を損ねられたり維持できたり、となりかねない。非常に危うい世界になるだろう。中国は2019年の国防白書の中で「中国は世界の東にそびえ立つ」とある。アメリカ、中国、ロシアといった大国が力でねじ伏せていく時代になっているのかもしれない。日本は同盟国であるアメリカを大事にする必要がある。アメリカが国際法や規範を無視して動いていることに対しては、日本やヨーロッパは受け入れられない。こういった国と力を合わせることによって、アメリカの計算の変化を起こすことができるのではないか。日本は価値観を共有できる国との協力を強めて、同盟国アメリカの計算を変える努力をすべき。
笹川平和財団の小川凡司上席フェローによると、ヨーロッパ諸国が一緒になってグリーンランドに軍隊を送ったり、トランプ大統領の関税に対する報復措置を全体でとることで、アメリカに対して強力な対抗措置となる。日本もこのような価値を自分たちは守るという力をアメリカに見せる、しかし同盟国として一緒にやっていくことも忘れないという重要なバランスは必要。グリーンランドについては、アメリカが軍事力を行使するまでもなく、ヨーロッパ各国がこの周辺で軍事力を展開することになった。結果として中国やロシアはここに影響力を行使しにくくなった。
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トランプ大統領がグリーンランドの領有を主張しているときに、トランプ大統領をなだめながらもうまく付き合って実を取っていく、というこれまでの手法が通用するのか。笹川平和財団の小川凡司上席フェローによると、トランプ大統領が求めているのはアメリカの安全であり繁栄。北極圏でもアメリカが欲しい権益をヨーロッパが守るなら、トランプ大統領はディールをしてくるだろう。日本についても中国が太平洋に自由に出てくるような状況を許すと、トランプ大統領はもっと強く日本に出てくるだろう。自分たちでちゃんと守るという意図と能力の計画を示すことは重要。ベネズエラの一例について、日本を含む西側諸国は国際法に触れるのではと明確に批判することはなかった。冷徹な外交の計算もあったが、ベネズエラは強権的な権威主義的な体制を敷いており、マドゥロ大統領の拘束に対しては賛成をする人もいる。目的達成のためにアメリカは実力を行使した。オバマ大統領はパキスタン領内でウサマ・ビンラディン氏を殺害したり、シリアに介入したこともある。グリーンランドは違い、アメリカが取ることによって救われる人は誰もいない。計算とともに目的をしっかり見極める必要はある。
ガザ地区の暫定的な統治を監督する平和評議会をめぐりトランプ大統領が各国首脳にメンバーに加わるよう呼びかけているが足並みが揃うか不透明な状況。ハンガリー・オルバン首相は18日SNSに“招待を受け入れた”と投稿。イギリス・スターマー首相も19日、記者会見で“役割を果たしたい”と述べた。複数のメディアはトランプ氏が各国に送った書簡ではあらゆる紛争を対象にする可能性に言及していると伝えている。フランス・マクロン大統領に近い関係者は“ガザの枠組みを超えるものだ”として現時点ではフランスとして参加しない意向を示した他、アイルランドも同様の懸念を示している。
「ダボス会議」がスイスで始まった。会議には6年ぶりにアメリカ・トランプ大統領が対面で参加するほか、ウクライナ・ゼレンスキー大統領やヨーロッパ各国の首脳も参加を予定していて、グリーンランドやウクライナ情勢をめぐる議論の行方が注目される。
