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オープニング映像。
今回は川越氷川神社の 超絶技巧の彫刻の謎を相川七瀬が巡る。物資供給の拠点として江戸とつながり発展した川越。そのシンボルは400年前に建てられた時の鐘。江戸の各地にあった時を知らせるための鐘にならって作られた。黒漆喰の重厚な蔵造りで、名物の焼き芋や串団子、全て江戸からもたらされたもの。そんな街を守護してきたのは川越氷川神社。始まりは1500年の昔から。
相川七瀬が川越氷川神社へ。高さ15mの鳥居があり、木造の鳥居としては日本最大級。扁額の文字は幕末の偉人の勝海舟によるもの。境内は思いの外。こじんまりとしている。相川が訪ねたのは今年重要文化財になった本殿。今回特別に中へ。その聖域は今回の作品の川越氷川神社本殿が。正面、側面ともに幅5mで、格式ある入母屋造り。普段一般の人は立ち入ることはできない。柱や梁、覆い尽くす無数の彫刻が施されている。東西南北四方全てに、精緻で細密な彫刻施されている。ノミの超絶技巧で施された息を呑む美の世界。江戸後期の1842年から4年賭けて彫刻が施されたという。
川越氷川神社の調査員の松山さんによると、上段は徳川家が祖先とした、源氏物語が描かれている。歌舞伎の「一谷嫩軍記」という物語でもしられる有名な一幕で、梅の木の下で源義経と武蔵坊弁慶の姿が。規律の厳しさと主従の絆を伝える場面。いかつい弁慶の表情は緊迫感が漂う。北の面には源頼朝が千羽のツルを放ち、生き物下の慈悲を示したという放生会が彫られている。逆巻く荒波のうねりの中で、天高く舞い上がらんとする鶴たちの躍動感が木肌から伝わる。
西面は美しい浄瑠璃姫のために笛を吹く牛若丸。今生の別れを予感させる静かなノミのあとに対し、正面南側には凄まじい質感で迫る彫刻の塊が。睨みをきかせる鳴気龍は大胆で圧倒的な彫りの極み。その作者は嶋村俊表。
嶋村家は江戸時代に関東一円で社殿彫刻を手掛ける名門だった。中でも天才と謳われたのが八代目嶋村源蔵俊表。国の重要文化財の成田山新勝寺 釈迦堂や、東京都指定文化財の田無神社の本殿の彫刻も手掛けた。伊東龍一氏は嶋村源蔵俊表について近代の彫刻家に相当するような素養みたいなものを備え始めた最初あたりだと答え、自分の作品を後世に見てもらいたいという思い出で名前が刻まれているのではと答えた。元々神社の彫刻は、無名の職人たちが施す装飾だった。俊表はそれをアーティストの作品だと宣言したとも考えられる。極めたのが江戸彫りといわれる技巧。それを受け継ぐのは宮彫師の井上進一さん。井上さんは、今では数少ない社寺彫刻を手掛ける職人。彫っているんは祭りにつけられる飾り物。ひとかたまりけやきの気を形が違う200本のノミを使って龍の姿を掘り出す。江戸彫りの特徴は籠彫り。ノミを奥へと深く彫り進め、木の内部にさらなる情景を生み出し圧倒的な立体感を生み出す。
川越氷川神社には籠彫の技巧が結実している。咆哮する昇り龍は、渦巻く雲と荒波のその奥へ我が身をよじらせる躍動感。ノミが生み出した極限の美。江戸彫りにはもう一つの特徴は、彩色をしないで素木だけで立体的にみせること。江戸初期に作られた日光東照宮の陽明門は目もくらむばかりの極彩色。江戸後期の川越氷川神社には彩色がない。その理由は、江戸時代財政難に陥った幕府は度々倹約令を発令。それは浮世絵や彫刻にも及び、華美な色彩が禁じられた。彫刻師が頼れたのはノミの力のみ。この息を呑むほど密度の濃い彫りの造形は、色彩を使わなかったからこそ生み出されたもの。川越氷川神社には目を見張る彫刻があり、本殿の下段には、日本神話の天岩戸が描かれたシーンには布袋様や、三国志の英雄の関羽の酒盛り、下段は多彩でどれも身近なテーマ。
相川七瀬がやってきたのは川越まつり会館。川越まつりで実際に引かれる山車が展示されている。高さおよそ8m重さ3トンの出しが。川越まつりでは町内それぞれが山車にこれぞという人形を置いて華やかさを競い合う。江戸時代の川越まつりを描いた絵馬は、当時は10の町内1本柱に人形を掲げていた。江戸時代の10の山車の人形は、川越氷川神社の本殿下段にある彫刻と全く同じモチーフ。
川越氷川神社の風物詩は無数の風鈴が櫓にぶら下がる風鈴回廊。縁結び祈願もあるが、他の願いも。風でチリンと鳴ると神様に届いた合図。普段は入ることのできない本殿も玉垣越しに観ることができる。その本殿は川越まつりと深い関係があった。
川越城本丸御殿は江戸後期に17万国を誇る川越藩。藩主は松平斉典。築130年のすっかり老朽化していた半の総鎮守の川越氷川神社の本殿を建て直したいと考えていた。大雨や冷害が相次いで発生し、大飢饉が発生した。追い打ちをかけたのは、川越城二の丸御殿の大火。不慮の出来事が重なり、神社本殿の建て直し資金がなくなってしまった。そこで立ち上がったのは川越まつりを運営してきた氏子たちだった。街の人たちがお金を出し合い、その力を尽くした証に山車の人形を本殿に刻んだ。それに応えるかのように、嶋村源蔵俊表は上段に徳川家がルーツの源氏の歴史を。下段に川越庶民の誇りを刻んだ。
川越氷川神社本殿の一番下の源為朝と鬼の力くらべの彫刻が。伊東龍一氏は遊び心あふれる彫刻で、自分のやりたいことをしていると答えた。本殿を囲う玉垣には隙間が空いているが、中に入らずともわが街の誇りを観ることができる。
新美の巨人たちの次回予告。
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