2025年6月8日放送 9:00 - 10:00 NHK総合

日曜討論
いま考える これからの介護

出演者
伊藤雅之 上原光紀 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像が流れた。高齢者の生活を支える訪問介護。今その担い手が不足。その中でもサービスを求める人は増え続けている。仕事と介護の両立に悩む人も増えている。

(日曜討論)
介護の現状は

これからの介護のあり方について議論。介護は必要と判断され要介護認定を受けると、介護保険制度の元で様々なサービスが受けられる。費用の自己負担額は所得に応じて1~3割。要介護認定者の数は、介護保険制度が始まった2000年以降増え続け、去年は約710万人と過去最多。厚生労働省の推計によれば、2040年度には843万人になると見込まれている。その一方で、介護の担い手は今後さらに不足すると見られている。2022年度の介護職員の数は約215万人。2040年度には約272万人必要になると推計。東洋大学の高野教授は、特に在宅サービスを中心に各地域での介護ニーズに十分に応えられない状況になりつつあるあるいはなっていると見ている。最大の理由は、介護人材確保が困難になっていること。その裏表の問題として、介護保険制度に十分な財源を割くことが出来ないことにより、人材確保が難しくなっていると見て取れる。最大の理由は、90年代に生産年齢人口の減少が始まり、縮小局面に入っている。それが如実に現れているのが介護保険の分野。75歳以上人口のピークは2045年、85歳以上の人口のピークは2065年と見込まれている。そこに向けて、介護保険制度がどうあるべきなのか、3年毎の見直しだけでなく中長期的なロードマップを示す必要があるなどと考えている。

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厚生労働省東洋大学

現状の介護についてとなりのかいごの川内さんは、そもそも介護保険そのものの目的がなんだったのかが改めて問われていると思っている。介護保険は高齢者の自立を支援する制度。家族の不安を解消する制度ではないので、整理をしないとそもそものロードマップを描く制度政策をいい方向に変えていくことがそろそろ難しいと実感している。介護離職防止対策促進機構の飯野さんは、介護のイメージがあまりにもマイナスイメージが付きすぎて、それがあるからこそ仕事をやめなくてはいけないと思い込んでしまうこともあると思っている。家族のあり方そのものも考えていかないといけないと思っている。日本ホームヘルパー協会の松下さんは、昨年追い打ちをかけるように訪問介護基本報酬が引き下げられ経営者は逼迫しているという。この1年、廃業や休業に追い込まれてる事業所が後を絶たない。この状況が続くといずれ介護難民が増え、住み慣れた我が家で暮らしたいという思いは崩壊していくという現状にあると思っている。慶應義塾大学の土居教授は、医療は高度成長期もあり物価上昇を機にどういう診療報酬改定に臨むかという経験があるがそれでも困っている。介護は2000年以降で全くそういう経験がない中で、資材価格が高騰や人件費の高騰などの中で、ある程度介護報酬をあげなければならないが、代わりに現役世代の介護保険料もあげなければならないとなると、現役世代の保険料負担は上げてほしくないともなると、ないものねだりはできない。今ある報酬の範囲内でどうやって工夫して介護を維持していくかを考えないといけないという境目に来ている時期だという。

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となりのかいご介護離職防止対策促進機構慶應義塾大学日本ホームヘルパー協会鹿児島県
「介護離職」背景は

介護離職について議論する。総務省が2022年の調査によると、10万6000人。離職理由は、勤務先の支援制度の問題や、介護休業を取得しづらい雰囲気が43.4パーセント、介護保険サービスが利用できなかった、利用方法がわからなかったが30.2パーセント。介護離職防止対策促進機構の飯野さんは、まず介護がどういうことかわからない人がいるという。買い物に一緒に行く、病院につきそうことも介護だ。東洋大学の教授の高野さんは、介護はネガティブな印象がある。10万6000人の介護離職者がいることは社会として考え直さなければいけない。慶應義塾大学の土居さんは、一億総活躍国民会議に参加し、介護離職ゼロの政策を考えていたという。育児・介護休業法につながるプロセスだったが抜本的な解決になっていない。事業者に周知することまでは行っている。介護保険は、要介護の方の保険であるが、要介護の家族への手助けをすることも含めた方がいい。NPO法人となりのかいごの川内さんは、介護離職のトレンドは、制度を活用した結果の離職だという。老いていく親を受け入れるクライシスを制度が受け入れていないので両立に向かっていかない。日本ホームヘルパー協会の松下さんは、介護従事者が支えていても、老いていく親を認められないケースがあるという。家族の気持ちの整理も必要だという。社会全体で介護を支える仕組みだった。飯野さんは、こころの問題がついていけてないという。介護はキャリアの中の一時的なものであると考えないといけないという。

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となりのかいご介護離職防止対策促進機構全世代型社会保障検討会議厚生労働省日本ホームヘルパー協会東洋大学総務省鹿児島県

介護離職は個人のキャリアにとっても、社会への影響もとっても大きい問題だ。高野さんは、40歳代後半から50歳代前半が多いという。どの会社にとっても貴重な人材の年代だ。管理職として実力を発揮する年代だ。介護離職を避けるために、産業医の活用も増やすように制度を活かしていくことも必要になってくる。土居さんは、ワークライフバランスを整えることが必要だという。浸透させることが大事だ。要介護の家族がいるからはじめるという通念がある。社会が介護をどう支えるかを考えなければいけない。川内さんは、老いの受け止めの考え方を企業がプッシュすることが必要だという。個人は老いに対する受け入れを習ってきていない。成長を求められてきた。老いに直面してからだと遅い。企業が発信することが重要だ。情報にあふれているが直面しない限りは、情報を得ようとしない。企業がプッシュすることは大切だ。介護離職チェックを企業が行うことが大事だと高野さんがいう。自分の親が介護が必要になったときに、自分はどう歩むべきなのか、社会的な教育が不足している。高齢者福祉介護の制度は進んでいるが、ケアラーに対する支援策が必要になっている。

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となりのかいご介護離職防止対策促進機構全世代型社会保障検討会議厚生労働省慶應義塾大学日本ホームヘルパー協会東洋大学鹿児島県

土居さんに聞く。余力のある人は保険外サービスで対応はできるはずだという。経済力を持っていない人が、要介護の家族を持ったときの対応が問題だ。いままでの介護保険サービスは、介護する側のキャリアの希望は検討されていない。育児・介護休業法は、介護休業は家族1人につき、最大93日間。仕事と介護の両立に向けて体制を整える狙いだ。この法律は去年5月に改正された。制度の利用の意向確認、40歳の従業員に情報提供をすることが企業に義務付けられている。飯野さんは改正自体は広く周知されているという。介護をしながら仕事ができるようになることが、広がったという。休業を与えればいいという問題だけではなく、キャリアを保ちながらやっていけることにならなければいけない。介護休業の取り方については、93日を細切れでとりつつ、使い切らずに仕事をする体制が狙いだ。それを理解されていない企業、従業員が多い。休業の正しい使い方を知らなければいけない。その中で、介護離職を防ぐための適切な相談の専門職につながることを、企業が後押しすることが重要になるという。日本ホームヘルパー協会の松下さんは、人手不足で、休業はとりにくいという。中小企業、や個人企業は、なかなかとりづらいという。川内さんは、われわれは親の介護の責任を課せられていると思っているという。それは高齢者のよりよい生活に結びついていない。親子関係を保ち続けるための介護サービスでなければならない。それを事前周知していくのか、育児・介護休業法の本質だ。飯野さんは、休みを与えることで何をしたらいいのか、踏み込まなければいけないという。一緒に考えることが必要だ。親の介護、高齢者の介護だけではない。どういう休みをとるのか、どういうキャリアを形成するのかは個別のケースだ。土居さんは、男性の育休取得が参考になる。日本では男性の育休が進んでおらず、それを進めようとしている。介護休業の促進も、同じように社会全体で取り組まなければいけないという。

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となりのかいご介護離職防止対策促進機構全世代型社会保障検討会議厚生労働省慶應義塾大学日本ホームヘルパー協会日本介護クラフトユニオン東洋大学鹿児島県
訪問介護の現状は

去年1年間に倒産や休廃業した介護事業者は784件。内訳は、529件が訪問介護。訪問介護事業所の管理者に行ったアンケートでは、55.2%が前年と比べ減収したと回答。理由は、7割を超える人が人手不足により依頼を受けることができなかったと回答。松下さんは、昨年基本報酬が引き下げられ、訪問介護の職員が過酷な業務を強いられているという。求人募集してもなかなかこないのが現状だという。高野教授は、経営悪化に関しては2024年介護報酬引き下げもあるが、2015年の介護報酬マイナス改定がじわじわ効いて今に至っているという。合わせて人材不足問題も懸念し、今回の介護報酬マイナス改定が経営の継続に冷水を浴びせているということで撤退などがあるという。土居教授は、介護報酬が引き下がった圧力として強いのは保険料が引き上げられることについて。保険料を上げてでも介護報酬を上げていいというふうになりにくいところがあり、介護事業者側ないしは介護関係者から声を上げないとなかなか一方的に保険料を上げられないから報酬も上げられないという話に終わってしまうというところがあるという。飯野さんは人材確保について、まず報酬を上げないときついという。川内さんは、日本に住んでる以上、介護サービス不足のなか高齢期を過ごしていく考えを一方で持っておく必要があるという。働いてる方々が、家族で介護を抱え込んで依頼されると、利用者の強い拒否反応によって介護職が傷つくことはよくあるので、これらを防いでいくのも重要。自分の子供が介護職をやりたいと言った時に応援するような雰囲気が本当にあるだろうかというところも課題があると強く思っている。土居教授は、処遇改善加算をこれまで累次にわたってやってきてるが、それをとる事業者が少なく積極性のなさもあると指摘。根本的な背景は、小規模事業者が多すぎること。大規模化もしくは協業化を進めていかないといけないなどとした。高野教授は、処遇が悪いというのは過去の話だということを理解してもらうことが必要だという。人材確保のためにどんな手立てが必要かについて、松下さんは自分の会社で考えると、処遇改善、メンタルヘルスなどいろんな研修をしながらスキルアップしているが、特定事業所の加算や処遇改善加算をとるにはそれなりの条件があるため、書類を作るのも大変で時間がないからしないというような話もよく聞くという。

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日本介護クラフトユニオン鹿児島市(鹿児島)

様々な産業でDX化されているが介護の分野の導入について高野教授は、入所施設ではICT、DX化はそうとう効果をすでに上げているという。職員の負担軽減にもつながっているという。訪問先のサービスでは、訪問先の自宅にということになるのでなかなか進めにくいという。それでもバックヤード業務や打ち合わせなどでICT、DX化をすれば業務負担を軽減することが可能だという。松下さんは、いつまでも住み慣れた我が家で暮らしていきたいという思いを一番支えているのが訪問介護だと考えており、仕事する中で利用者が良かったと、ご家族も自宅で最後を見ることが出来て次のステップにもつながってると思っており、気持ちを支えるところがやりがいに繋がっているという。介護に必要なことその重要性をどう理解を求めていくかについて土居教授は、いざ必要になるというときにきちんと対応してもらえるだけの備えや、社会のインフラなどを介護職員の人材確保というところでも同じように必要になってると考えている。まだ処遇改善する余地が介護にはまだまだあると考えている。高野教授は、人口推計をみると2020年~2045年にかけて生産年齢人口は33%減少するという。その中で介護職員を確保し続けることはこれから先相当難しい状態だと感じている。生産性向上や様々な計上の工夫が欠かせない等と述べた。

介護費用をどうする

介護保険の総費用は年々増え続けている。介護保険の財源の内訳は、国や都道府県などが負担する公費が50%、40歳以上が支払う保険料が50%。松下氏は「処遇改善がついたとしても経営者が経営していかないと廃業に追い込まれてしまう。報酬を上げるための介護の財源が必要」、川内氏は「介護サービスの議論だけで良いのか」、高野氏は「介護サービス自体が衰退してしまっている。介護報酬など、地方の特性に応じたものに変えていくべきではないか」、飯野氏は「まずは本人の資金を使ってやっていく訳だが、足りなくなれば家族が払う。結局は介護保険サービスを使わないようにしようとなってしまうのではないか」などと話した。また、川内氏は「親が長生きすることを喜べなくなるような経済負担を子がするのは介護としては本末転倒ではないか。経済的なものは本人のお金でというのが大前提にしていきたい」などとした。地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自立した日常生活を送れるよう、医療などが包括的に確保される体制のこと。松下氏は「鹿児島県三島村という小さな島に毎月訪問して10年になる。限られたサービスだが、周りが支え、三島村独自で訪問介護事業所で介護じゃない支えの部分のヘルパーという形でやっている。地域包括ケアシステムは様々な自治体が取り組んでいるところ」などと話した。土居氏は「都道府県がまずは積極的に関与する、そういうところから始めるというのも1つ」、高野氏は「現下の制度では介護保険制度がさらに充実していくという方向性を私は見いだせない。そうなると給付と負担の議論は避けられない」などと指摘した。土居氏は「経済力や地域や事業者など差が大きい。全国画一的に仕組む介護保険サービスをどうやって差を活かしてやっていくか、今後さらに問われるところだと思う」などと話した。

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三島村三島村(鹿児島)厚生労働省島根県
安心な老後へ 何が必要か

誰もが安心できる老後を迎えるために何が必要か。飯野氏は「介護を安心してお願いできる事業所をキープし、キャリアを潰さないように頑張って乗り切れるような仕組み」、松下氏は「訪問介護の事事業所が持続できるような状況にあること、介護に頼るだけではなく包括ケアシステムを整えること」、川内氏は「老いの受け止め。父や母が本当はこうだったんだと分かった時に、私達の生き方が本当の意味で問われる。まずは私達自身が自分を大事にすること」、高野氏は「介護保険制度の持続可能性は相当危うい状況だと考えている。介護保険制度にどれほどの財源をつぎ込むことができるのかの議論をすべき」、土居氏は「今こそ介護保険制度の改革の1つ1つを着実に実行していく」などと答えた。

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