- 出演者
- 林修 岡田愛マリー 丸山桂里奈 竹内まなぶ(カミナリ) 石田たくみ(カミナリ) 原田宗彦 山崎晴太郎 高田春奈
貧困、紛争、気候変動、感染症。今、人類はたくさんの課題に直面している。私たちがずっと地球で暮らしていくために、2030年までに達成すべき目標「SDGs」。その達成につながる手段として注目されているのがスポーツの力。
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- 持続可能な開発目標
丸山桂里奈はなでしこジャパンで、FIFA女子ワールドカップ2011初優勝。国民栄誉賞も受賞。石田たくみは中学時代、バスケ全国大会出場。竹内まなぶはサッカー部。
スポーツ×女性活躍。日本のジェンダーギャップ指数。日本は146か国中125位(主要先進国で最下位)。そもそも「嫁」「奥さん」「家内」などの呼称から差が生まれている。根本的な意識改革は難しい。昨年、スペインが優勝を果たしたFIFA女子サッカーワールドカップ2023が、女子スポーツの歴史の転換点になるかもしれないと言われている。去年開催の女子サッカーW杯。平均試合入場者数は約3万人。観客動員数は約200万人と史上最多。この大会では賞金の面でも注目を集めた。賞金総額は前回大会の3倍超の約158億円。優勝選手には約3900万円、グループステージ敗退でも各選手が約430万円の報酬を受けた。FIFA女子W杯2011優勝の報奨金は150万円、ボーナスが500万円。丸山桂里奈さんはそれでもうれしかったという。賞金を上げたことで盛り上がった点もあるという。
スポーツ×女性活躍。今、女性活躍の象徴として世界から注目されているのが米国の女子サッカー。そのプロリーグがNWSL。全米14のプロチームが所属。各国の女子サッカーリーグ平均観客動員数:米国1万432人、スペイン2500人、イングランド1924人、日本1560人、ドイツ804人、フランス663人。プレイヤーの年収ランキングでもトップ10のうち9人が米国人選手。1位のアレックスモーガンの年収は広告収入も含めると推定10億円。そんな米国サッカーの中で今、注目を集めているチームがロサンゼルスに本拠地を構えるエンジェル・シティFC。2022年のNWSL参入からわずか2年で、クラブのシーズンチケットホルダーを1万6000人にまで伸ばし、その資産価値は推定260億円。チームの人気を支える選手たちの中には、なでしこジャパンの遠藤純も。ピッチの外でも注目の的。選手たちは皆、華やかな衣装でスタジアムに入る。見る人に夢を与える存在であり続けるため。憧れの女性たちが集うクラブ、それがエンジェルシティ。このチームを立ち上げたのが、ハリウッド屈指の人気俳優・ナタリーポートマン。2018年から映画界のセクシャルハラスメントの撲滅運動「Time’s Up」をけん引。そうした中、スポーツの力で女性の地位向上を実現しようと創設したのがエンジェルシティ。クラブの運営を任されているのがジュリー・ウアマンさん。元ゲーム会社の経営者から一転代表に就任。女性活躍を推し進めるという理念を運営のさまざまな場面で貫いている。クラブの従業員90人のうち8割が女性。クラブの投資家の3分の2も女性。女子サッカー・元米国代表・アビーワンバック、女子テニス界のレジェンド・セリーナウィリアムズ、さらに、俳優・エヴァロンゴリアなどハリウッドセレブらがチームの理念に賛同し出資。クラブの年間収入はグッズやチケットなどを含め推定45億円。リーグきっての人気を誇る。
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- NWSLTime’s Upアビー・ワンバックアレックス・モーガンエンジェル・シティFCエヴァ・ロンゴリア・パーカーサラ・ゴーデンシドニー・ルルーセリーナ・ウィリアムズデスパレートな妻たちナタリー・ポートマンメサイア・ブライトメリット・マティアスロサンゼルス(アメリカ)遠藤純
スポーツ×女性活躍。米国サッカーの中で今、注目を集めているエンジェルシティFC。クラブは収入の10%を費やし、女性や社会的マイノリティーを支援する地域貢献活動を実施。ファンたちの協力によって支えられている。LGBTQの高齢者への食糧支援、他にも農業支援、食料支援、人材支援、教育支援など地域貢献活動は年250回。その中には選手が参加しているイベントも。毎週金曜日に開催している、女の子を対象としたサッカー教室。試合の2日前にもかかわらずチームの中心選手が駆けつけていた。サッカー教室の2日後、エンジェルシティのホームゲームのエンジェルシティFC−ノースカロライナカレッジFCが開催された。チケットは完売。結果は2−1でエンジェルシティの勝利。試合が終わってもファンの声援に応える選手たち。ミーガンリード選手は「私たちは多くのファンに支えられてプレーができている。だからファンのみんなに少しでも恩返しができるなら、私はどこにでも駆けつけたい」という。サッカーで女性の地位向上を推し進めるエンジェルシティ。その活動はたくさんの人に夢と希望を与えていた。
ロサンゼルスにあるスポーツの名門校、南カリフォルニア大学。この大学でアメリカンフットボール部に所属する学生たちは、ロサンゼルスオリンピックで使われたメインスタジアムで試合ができる。そして、バスケットボール部の学生たちにはNBA並みのアリーナが用意されている。そんな大学で今、女性活躍を推し進める取り組みが行われている。女子バスケットボール部にも専用の練習場があり、部屋の広さや設備は男子バスケットボール部と全く同じ。南カリフォルニア大学では女子スポーツの育成に力を入れていて、男子運動部9団体に対し、女子が12団体。南カリフォルニア大学広報・グレンKオオサキさん「タイトルナインがあるから。女子学生にもスポーツが続けられる環境を整備しなさいと国が定めた」など話した。「タイトルナイン」とは、1972年に成立した教育改正法第9編の通称。教育現場における性差別を禁止した法律。男女の権利や機会の平等を義務化し、米国の女性活躍を大きく後押しした。そのタイトルナインによって特に発展したのが女子サッカー。団体競技ということで女子部員を大幅に増やすことができるため、多くの大学が女子サッカー部を設立。今や米国の女子サッカーの登録者数は170万人。世界一にまで成長した。そうした中、南カリフォルニア大学では女子サッカーの新スタジアムを建設中。そんな米国女子サッカーに憧れ、日本から留学してきた水本華さんは、「すごく恵まれた環境」と話す。
「タイトルナイン」とは、教育の性差別を禁止し米国女子スポーツにも変革をもたらした法律。その法案成立に大きな功績を残した人がいる。日系3世の政治家・パツィー・タケモト・ミンク。男女平等を進めたその法案には彼女の人生が色濃く影響していた。1927年、ハワイに生まれたミンク。医者になるのが夢だった。20歳の頃、医学部に願書を送るが、女性だからという理由で受け付けてもらえなかった。そんな理不尽な差別と戦うため弁護士を目指したミンク。しかしまたもや、女性だからという理由で受け付けてもらえなかった。差別を変えるためには法律そのものを変えなくてはならない。そう考えたミンクは政治の世界へ。1964年、人種差別反対運動が盛んに行われた時代。初の非白人議員として政界入りを果たした。そしてタイトルナインの作成に力を注ぐ。同じ頃、差別に苦しめられた女性がいた。ドナデバロナさんは、1964年の東京オリンピックに17歳で出場した元競泳選手。400m個人メドレーなど2つの金メダルを取ったレジェンド。しかし、東京五輪の後、引退。当時の女性は家庭に入るものだと考えられていたから。10代で引退を余儀なくされたデバロナさん。その悔しさを胸に、彼女はスポーツ界から男女平等の実現を後押しした。そして1972年、女性たちが立ち上がり勝ち取ったタイトルナインが成立。2002年、その生涯に幕を閉じたミンク。今年、彼女の功績を称え記念コインが作られた。タイトルナイン成立から半世紀余り。ミンクが生涯を捧げた男女平等の夢は米国女子サッカーという舞台に引き継がれている。
林修は「制度を変えていくためには根本を変えて戦う人がいないとなかなか変わるものではないと痛感」などと話した。山崎晴太郎は「社会的に意義がないものはみんなに応援されない社会構造になっている。チームもタイトルナインもよくデザインされている。日本は社会に出たあとで平等をどうデザインするかという思考で入ってる。でも教育から未来をつくっていく視点が必要」などと話した。高田春奈は「タイトルナインがあるからこそ普及して、女の子がサッカーをやっているのが当たり前の空気感がアメリカにはある」などと話した。丸山桂里奈は「大阪のチームなのに京都に行って練習してた。逆にそれがハングリー精神につながった」などと話した。原田先生は「ゴルフの競技は見ている人の9割以上がゴルファー。女子サッカーもアメリカの場合は競技登録者約170万人が来るから女子サッカーを共感の眼差して見る。日本はその杯がないから女子サッカーへの共感度が低い」などと話した。
2021年5月、日本サッカー界に新たな歴史が刻まれた。プロレフェリーの山下良美さん。Jリーグの試合で女性が初めて主審を務めた。今年3月、Jリーグ担当審判員の合同トレーニングが行われた。そこに男性審判に混じって走る山下さんの姿が。早い展開にも動じず常に的確な判断をするため不可欠なのが体力。さらに審判員として必要とされるのはメンタル。そして、今年のAFCアジアカップ2023でも女性初の主審としてピッチに立った山下さん。男子の試合で笛を吹くたびに話題となった。ただ、その一方でプレッシャーを強く感じたという。女性審判として活躍を続ける山下さんの原点。山下さん「Jリーグが開幕したのがちょうど小学1年生の時。まさにその時にカズ選手(三浦知良)を意識して11番を背負ってサッカーしていました」。サッカーを始めたのは4歳の時。男の子の中に女の子一人、夢中でボールを追いかけた。転機が訪れたのは大学時代、サッカー部の先輩に誘われ審判としての第一歩。軽い気持ちで歩み始めた審判の道だったが、今や女性審判として日本サッカー史に刻まれる存在に。山下さんが思う女性が活躍する世界とは。「男性の試合に女性の審判員がいても当たり前になることが目指していることなので、それができるように、私も今いただいている機会を継続していく責任があるし、女性活躍という意味でも、目を向けてもらうことで何か変化があるなら、すごく嬉しいなと思います」。
SDGsにまつわるクイズ。阪神甲子園球場で始まっている新たなリサイクル。暑い時期に観戦をしながら飲みたくなるのがビール。そのプラスチックカップを回収して、帝人フロンティアが球場内のあるものにリサイクルしている。答えは「野球場のラバーフェンス」。
スポーツ×地方創生。国民体育大会、通称「国体」の名称が「国民スポーツ大会(JAPAN GAME)」に変わる。体育という言葉は身体教育の略でどこかで教育を引っ張っていて、これまで教育委員会の管轄だったが今は行政のトップがやるような時代になった。体育からスポーツへの流れのなかで、国体の名前が変わったという。2020年から、「体育の日」は「スポーツの日」に変わっている。
今年10月に開催される国民スポーツ大会に向けて、佐賀市中心部に作られたのが「SAGAサンライズパーク」。広々とした陸上競技場から相撲場まで、25の競技に対応できる総事業費540億円の一大拠点。その中心となるのが「SAGAアリーナ」。本拠地とするのが、去年、B1リーグに昇格した「佐賀バルーナーズ」。選手のプレーを間近で見られるコートサイドは毎試合完売するほどの大人気席。このアリーナを仕掛けたのは山口祥義知事。「アスリートのみんながスポーツの力によって一生飯を食っていける世界ができればいいなと思って。多くの皆さんがスポーツに親しんでお金を使ってくれる。そのお金をアスリートに回してアスリートはもっと生き生きとプレーができるようになる」と話す。そんな構想に向けて新設されたのがSAGAスポーツピラミッド推進グループ。県職員により組織された特別チーム。トップアスリートの育成を進めながら引退後もサポート、県民にスポーツに関わってもらいスポーツ文化を広げ、地方創生に繋げようという。オリンピック出場を目指しているフェンシングの古田育男さん。東京の大学を卒業後、東京で働きながら、フェンシングを続けようと思っていたが、希望に沿った就職先が見つからなかった。古田さんをサポートしたのが佐賀県のジョブサポという制度。アスリートや指導者を企業と結びつけ、社員として働きながら、競技を続けることを支援するマッチング事業。これを利用して地元の建設企業に就職。フェンシング練習のため週3日は午前中勤務。さらに海外の遠征費も会社が負担。古田さんを支援する企業は「初めての採用だったので、どんな形になるか分からない部分があったが、アスリートを採用している企業として着目されるし、相乗効果でいい効果が生まれてきている」と話した。佐賀県は引退した選手もサポート。元新体操選手の松本愛香さん。福岡で働いていたが、ジョブサポの制度を使って佐賀県内の会社に転職。働きながら新体操教の指導者として競技に戻ってきた。佐賀県は高校生の育成にも力を入れている。佐賀学園高校・末松拓磨さん。3歳から始めた水泳で目指しているのは全国大会入賞。末松さんが暮らしているのが佐賀市内にある寮。熊本から単身で寮生活。部屋は個室で食事付き。寮費は月5万5000円。この寮には学校も競技も違う高校生たちが。
佐賀学園高校2年生、水泳部の末松拓磨さん。生活している寮には学校も競技も違う高校生たちが一つ屋根の下で暮らしている。2022年、県内に3カ所整備された高校生向けのアスリート寮。栄養バランスを考えた食事が提供される。競技を超え同じアスリートとして切磋琢磨してもらうのが狙い。各スポーツでトップを目指す人材を育てようとしている。「部活の話をしているとウォーミングアップとか自分の部活に取り入れたりできる」と話した。さらに佐賀県は医療からも女子選手を支援。競技をする中で無月経や生理不順などに悩む選手らをサポートするため、佐賀県と病院が連携して女性アスリート外来を開設。治療と相談の両面で選手を支えている。「産婦人科は男性の先生が多かったり、ちょっと抵抗はあるが、なんでも相談できるのは心強い」と話した。佐賀県が進めるスポーツの力を使った地方創生への取り組み。佐賀県・山口祥義知事は「佐賀県民が喜びを分かち合えるようなものは何だろうと考えた時に、佐賀自体が本当のスポーツ王国として、スポーツの真の価値を分かち合う地域として、楽しみながら地方創生が繰り広げられる、成果が出てくる、果実を享受できる流れになっていくと信じている」と話した。
林修は地方は厳しい状況であるため。こういった思い切った仕掛けはとても評価すべき等と話した。去年沖縄で開催されたFIBA バスケットボール 2023では県内での経済効果は100億円以上で、毎年行われるプロ野球のキャンプでも100億円の経済効果がある。世界のスポーツツーリズム市場は急成長しており、2030年までに年平均17%で成長している。
能登半島地震で液状化による被害を受けた石川県かほく市を拠点とするPFUブルーキャッツはVリーグで戦う女子バレーボールチームだと紹介。2023年には黒鷲旗で初優勝を果たし、今シーズンに期待がされていたものの、選手も震災被害に遭って難しいメンタルの中チームは5連敗した。PFUブルーキャッツは被災した輪島市を慰問することとなった。輪島市は選手たちにとって過去に試合や合宿を何度もした場所であったが、実際に輪島の人が何を求めているのかわからず難しく感じて選手らは様々なアイデアを出し合った。石川県立輪島高校には市内7つの小中学校があつまり仮教室で授業を受けているが体育館や校庭は使えないため、選手らは中庭でみんなで体を動かす遊びを提案した。
石川県七尾湾に浮かぶ能登島。震災で大きな被害を受けた。その島に暮らしている小川さん一家。三女の杏梨さんはバレーボールを始めて3年。しかし震災後は練習できてない。練習の場所だった体育館は震災で使うことができなくなっていた。そのため遠征をしながらバレーボールを続けていた。4月14日、ブルーキャッツの本拠地となるアリーナ「とり野菜みそ BLUECATS ARENA」のこけら落としに合わせて、復興支援のチャリティーマッチが開催された。チーム、地域にとって復興に向けた第一歩。この日は日本代表の選手も駆けつけた。おけら落としの目玉イベントがバレーボール教室。招待されたのは被災地の小学生チームに所属する80人。その中に能登島に暮らす杏梨さんの姿も。憧れていた選手たちとの練習。最後はブルーキャッツの選手たちによる紅白戦。スポーツを通して被災地に元気を届けた。復興に向けて動き出したブルーキャッツの選手たち。広報・マネージャー・中原亜樹さんは「子どもがバレーボールを諦めずにできる環境は、バレーチームとして大事にしていきたい」と話す。
スタジオからは「日常生活が不安な中でスポーツ選手と遊ぶという非日常を提供できるのは良いことだと思った」などの感想が出た。
林修さんは「スポーツは非日常の充実を担っていて、震災から落ち着いた時に人々を元気にする大きな力を持っている」など話した。