- 出演者
- 桑子真帆
結婚して名字が変わった女性、経営する会社の名義変更に100万円以上かかったという。こうした中、ビジネスの世界から夫婦同姓か別姓かを選べる選択的夫婦別姓の制度を求める声があがった。制度の導入は様々な意見を踏まえる必要があるという声もある。
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- 山下貴司
オープニング映像。
日本では夫婦は同姓にすることが決められているが、同姓でも別姓でもいいという選択的夫婦別姓制度の議論が動き出している。いまから30年前の1996年、2010年には法務省から法案が出され野党からも複数回法案が出されたが、国会には提出されず具体的な議論には至っていない。30年ごしの議論が動き出したきっかけはビジネス界からの声だった。
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- 法務省
家事支援の会社を経営している大津たまみさんは旧姓を使って働いている。自分の名前を使った掃除用品のブランドを作るなど名字は仕事に欠かせないものとなっている。前の夫と離婚後、1人で息子を育てながら会社を立ち上げた大津さん。3年前にいまの夫と結婚し、戸籍名を大津から鈴木に変更したが、仕事ではブランドやキャリアを守るために旧姓の大津を使うことにした。しかし、会社の登記や銀行口座は戸籍名のい鈴木を記載しなければならず、名義変更に追われることになった。事業を5つ抱えていたため、手続きに3か月かかり、費用は100万円以上かかったという。
名字の変更は企業の労務管理にも影響を及ぼしている。従業員75人のスタートアップの会社。旧姓で働いく社員の管理が企業の成長の妨げになると懸念している。旧姓で働く場合でも、住民税や健康保険などは戸籍名での手続きが原則。そのため、会社では旧姓と戸籍名の照合作業をしなければならない。照合作業に対応するためのコストはスタートアップにとって負担となるため、1人ずつ手作業で照合している。大企業を中心に構成される経団連にも照合で業務効率が低下する、年末調整が煩雑などビジネス上の不便を訴える声が多く寄せられている。そうした声をうけて、経団連は国に対し、選択的夫婦別姓の導入を提言した。
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- 日本経済団体連合会
どうすればビジネス上の不便を解消できるのか?政府は旧姓を仕事で使う上での利便性を高める対策をとっている。国家資格や不動産登記、パスポートなどに旧姓を記載できるようにし、キャリアを継続しやすいようにしている。北海道の医療大学では女性職員312人のうち約1割が旧姓を通称使用している。助教授の藤崎博子さんもその1人。論文などは旧姓で書けるという。選択的夫婦別姓が認められたとしても旧姓の通称使用を選ぶという。この大学の労務管理システムは旧姓の通称使用をしている職員にも対応できる。職員一人ひとりに個人番号をふり、その番号に旧姓や戸籍名、給与や税金などの情報を紐づけて対応できるようになっている。
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- 北海道医療大学
日本の夫婦のうち、妻が名字を変えて夫の名字を名乗っているカップルは約95%。この9割以上の妻が名字を変える状況は30年間変わらずにいる。変わってきたのが女性の働き方。結婚してからも仕事を続ける人が増えている。こうした中で国は旧姓の通称使用の拡大を図っている。パスポート、運転免許証、マイナンバーカードは旧姓を併記することができる。国家資格や不動産登記なども旧姓を併記できる。女性役員の88%が旧姓の通称使用が可能でも不便さ・不都合・不利益が生じると思うしている。混乱が起きているのは、運用のルールであって法律になっていないという状況があるから。制度の導入に慎重な国会議員は、旧姓の通称使用の法制化が整えば選択的夫婦別姓を性急に導入する必要はないとしている。
去年3月、夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法に違反するとして国を相手に訴えが起こされた。原告の1人である新田久美(仮名)さん。夫婦同姓のみの国は法務省によると世界で日本だけ。そのことが海外での仕事においてリスクになるという。JAXAの技術者として働く新田さんは、新田姓を使い独身のころから大きな実績をあげてきた。28歳で同じ技術者の夫と夫婦になったが、積み上キャリアを維持するために名字が変わらない事実婚を選択した。出産やペアローンを組みときなどに法的な婚姻関係が必要になる。キャリアと家族の生活を両立するためには、結婚と離婚を繰り返さざるを得なかった名字を変えると海外で身分を証明する際に不都合があるという。国際会議ではパスポート名で本人確認される。旧姓を併記したパスポートでダブルネームを疑われることや、名前の不一致などトラブルを避けようと新田さんは現在も事実婚を選択している。新田さんらの訴えに対して、国は制度の創設は立法の問題であり司法の場で判断するのは適さないとして訴えを退けるよう求めている。
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- 宇宙航空研究開発機構法務省
投資ファンドを運営するキャシー松井さんは。今、グローバルなマーケットでは企業の多様性が重視されているという。特に重視されているのが女性の活躍。今の夫婦の姓のあり方ではその環境整備が不十分ではないかと松井さんは言う。
海外では1970年代から夫婦別姓が選べるようになってきている。アメリカやドイツ、タイ、スイスなどと続いている。これまで国連による勧告を4回、日本は受けている。日本の現在の制度は女性差別にあたるという指摘。こうした中、去年10月に行われた国連の女性差別撤廃委員会で政府は現状の制度につい問われた。政府は旧姓の通称使用拡大を進めているとし、夫婦別姓を認めることは日本社会でも家族のあり方に関わる重要な問題で幅広い国民の理解を得る必要があ考えているとした。名字は家族に関わることだから慎重に考えなければならないという考えもある。夫婦別姓を選んだ場合、子どもの名字はどうなるのか?夫婦が婚姻時に子どもの名字を決めるという案、出生時に考えて決める案がある。夫婦別姓に慎重な立場をとる方たの考え方としては、親子や兄弟で名字が異なるのは家族の一体感が損なわれてしまうのではないかという指摘がある。去年10月の世論調査では、選択的夫婦別姓に賛成が52.7%、反対が25.8%だった。内閣府の最新の世論調査、夫婦同姓を維持し旧姓の通称使用の法制度を設けた方がいいという項目を加えるとこれが一番多くなった。選択的夫婦別姓をめぐってはこれまでに繰り返し裁判が行われてきた。最高裁はこれまでに2回夫婦同姓は合憲だとしている。最高裁は国会で論ぜられ判断されるべき事柄であるとしている。