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トンガリロ国立公園はニュージーランド・北島の中央にあり、3つの火山とその周辺エリアが世界遺産に指定されている。まずは3つの火山のうちの1つトンガリロ火山を登山する。湿地帯には溶岩でろ過された透明度の高い水が流れていて、湿地帯を抜けると火山灰が覆う溶岩の大地が広がっている。山頂には内側の壁が赤いレッドクレーターがあり、クレーター内には噴火の跡が確認できる。トンガリロは現在も火山活動が続いていて、最近では2012年に噴火している。山頂からはいくつかの湖が確認でき、火山性の物質が溶け出したエメラルドグリーンの景色が広がっている。ニュージーランドはプレートの境界線に位置していて、北島のトンガリロ国立公園は火山帯になっている。3つの火山のうちの1つルアペフ火山は北島最高峰の標高2797mを誇っていて、山頂にはブルーサファイアのような色の火口湖がある。
トンガリロ国立公園近くには先住民のマオリが暮らしている。彼らはトンガリロを聖地として代々守ってきていて、式典ではマオリ伝統のハカを披露するなどしている。マオリは南太平洋の島々がルーツで、約800年前にカヌーを使ってニュージーランド北島に移住した。彼らは北島をアオテアロア(白く長い雲のある地)と呼び、繰り返される火山の噴火と共に生き、山を神聖なものとして崇めてきた。
トンガリロ国立公園は3つの火山が並ぶ風景が特徴であり、先住民マオリの聖地として知られている。集落の重鎮はダンカン・マッケンジーさんで、マラエと呼ばれる集会所を案内してくれた。血や生命力の象徴である赤い色をしているのが特徴で、形は先祖の形を表すとともに先祖の懐も意味しているのだという。マラエの脇を固める彫刻も先祖を指すのだといい、命の誕生・再生の意味が込められたシダの新芽がかたどられている。トンガリロ山が男性の山であるのに対し、ピハンガ山は女性の山なのだといい、男の山たちは山の女神・ピハンガを巡って争い、トンガリロが勝利したことでピハンガと結ばれたとされる。マオリは部族の首長が亡くなるとトンガリロに埋葬してきたが、その場所は門外不出という。テ・ンガエヘ・ワニカウさんは文字を持たなかったマオリが伝説や教えを顔や体のタトゥーに込めてきたと紹介し、トンガリロを望む丘を紹介してくれた。先祖代々聖地としてきたこの山はマオリの魂であり、私たちの記憶はこの土地に眠っている、私はいつも先祖と一緒に歩いていると話しハカを捧げた。マオリの霊が宿る神聖な場所であり、トンガリロ国立公園は自然遺産であるとともに文化遺産にも登録されている。かつてトンガリロは自然を脅かす危機に見舞われたが、マオリの主張は聖地を守るため大きな賭けに出たのだった。
マオリの聖地・トンガリロ国立公園はかつて危機が訪れたことで知られている。ダンカンさんが案内してくれたのはキリスト教の教会で、ニュージーランドはイギリスの植民地となるとキリスト教の布教活動も行われたという。イギリス人が森を切り開いて牧場にしていったのもこの頃であり、マオリの土地は奪われることとなった。心の拠り所である聖地を失うことへの不安の中、首長のテ・ヘウヘウ・トゥキノ4世は開拓を止めるため自然の保護を条件にトンガリロを国に献上することを選んだ。これによりトンガリロとその周辺は国立公園として守られることとなった。ダンカンさんはマオリ語を禁じられ英語での教育を強いられてきたが、現在は再びマオリ語で話すことも認められるようになった。現在は国に奪われた土地もマオリに返還されていて、ダンカンさんはここで薬草として使われるマヌカを育てている。ニュージーランドのミツバチは巣を地中に作りはちみつもつくらなかったが、養蜂技術がヨーロッパからもたらされるとマヌカハニーが特産品となっていった。マヌカはマオリ語で復活の木という意味であり、かつて火山灰が降り注いだ土地にしっかりと根を張る姿を見せている。訪れた人々を魅了するトンガリロ国立公園はマオリの人々が守ったことで世界遺産として記録されることとなった。
「世界遺産 聖なる山の奇岩と結界 プー・プラバート ドヴァーラヴァティー時代のセーマ石(タイ)」の次回予告。
「ベスコングルメ ナインティナイン岡村隆史と埼玉・飯能へ!」の番組宣伝。