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オープニング映像。
京都駅かたJR京都駅で15分の場所にある山崎駅。その家は駅の裏手にある天王山を登ったところにある。その石段の先に藤井厚二設計の聴竹居が。昭和3年に建てられた建坪50坪ほどの木造平屋建て。印象的な大きな窓に、落ち着いた色の土壁。勾配の緩やかな屋根は銅板葺き。その中を入ると上がり框には腰掛けがあり、スリッパが収納でき、傘立てもある。居室は18畳あり開放的。かは板張りだが随所に和の要素が取り入れられている。母と妻と子どもたちと使用人で住んでおり多いときは7人で暮らしていた。
リビングにはソファが置かれ、藤井夫婦の語らいの場となっていた。3畳の小上がり場は藤井の母が過ごしていた。板の間からの小上がりは33センチ。少々高めな理由は、畳に座った人と、椅子に座った人の目の高さを揃えるためにあげたという。畳と椅子での暮らしが共存できるようにと設計された。帰ってきた子どもたちが過ごすのはリビングに面した読書室。子どもたちの机と、藤井の机が置かれ、それぞれに本棚が配置。この家の家具は全て藤井のデザイン。勉強で疲れた時には障子をあけてリフレッシュ。それぞれの居場所がありながら家族の気配を感じられる。大きすぎず小さすぎずちょうどいい暮らしに。最も心地よい場所は縁側で、サンルームのようにも見える。
聴竹居の客室は6畳ほどの広さで、落ち着いた深緑色のソファと同系色の椅子。大きな窓にはちょっとした工夫に障子を開ければ、幾何学模様の格子のガラス戸が。少しずつ開けるとデザインが変化していく。専門家は藤井厚二について、日本の和の中にモダンを見出した建築家であり、当時流行していたモダエズムを竹などの日本の素材で調和を図ったという。食事室は弓型に抜いた間仕切りで隔たれながらも、リビングと繋がっている。作り付けのベンチと椅子が2脚で家族5人でちょうどいい広さに。
食器棚は台所と繋がっている配膳カウンターも設置されていた。調味料棚も同じ様に繋がっていた双方からとれるようになっているが機能性と合理性を兼ね備えた藤井のアイディア。そして調理室は、清潔で明るい白を基調としたキッチン。家具のようにも見える物体は冷蔵庫。スイス製の電気冷蔵庫は、当時とても高価で、外国車が一台買えるほど。100年前に作られた住宅は、オール電化。かつてはアメリカ製の電気調理台も置かれていた。100年前にして分電盤の大きさ、流し台の横には生ゴミを捨てるためのダストシュートまで設置されているが、そのまま外にあるコンポストに入る。聴竹居は100年前の最先端住宅出会えい、現代に通ずるSDGsな家だった。
藤井厚二は明治21年に広島県福山市で11代続く造り酒屋の次男として生まれる。東京帝国大学で建築を学んだ藤井は大正2年に神戸の建築会社に入社した。朝日新聞大阪本社やオフィスビルの設計に携わるも、わずか6年足らずで退社。きっかけは、神戸の地に自ら初めて建てた家に満足できなかったこと。藤井は海をわたり、欧米諸国に視察。理想とした日本の住宅を追求したいと向かった。9か月に及ぶ欧米の視察で、豊かな暮らしぶりや最先端の建築設備を目にした藤井は帰国後に、天王山の麓にある大山崎に1万2千坪の土地を購入した。その場所に8年間に4件の自宅を設計し建築した。実験的な自宅に暮らしながら、気温、湿度、風向きなどの膨大な気象データを積み上げて日本人の感性にある快適な家を研究。その答えが5件目の聴竹居。この時藤井厚二は40歳だった。
京都に自宅を建築した藤井。その蒸し暑い夏をどう過ごそうかと考えた。日差しを適度に遮るために大きな軒やひさしをめぐらせた。室内の土壁には湿気の吸収に優れた和紙が幾重にも貼られている。小上がりの床下に作られているのは、家の外に続く全長およそ12mのクールチューブ。導気口があり、聴竹居の眼科には桂川、宇治川、木津川と、3つの川が流れている。天王山の山麓に向かって拭き上げる川風を斜面に設置された穴から室内に取り入れている。土管を通る間に空気が冷やされるという仕組み。床下の換気口は建物の基礎の部分に12カ所。家の周囲をとりかこむように作られている。床下に入った空気は調理室の壁の内側に設置された通気筒を通り、天井裏へ。天井裏の空気は屋根の妻面に設けられた通気窓から排出。室内にこもった空気は、天井のあけしめが自在の排気口から天井雨裏に逃がす仕組み。こうして調理室は京都の暑い夏でも風の通る快適な住まいを実現。
聴竹居の縁側は全長10mほどのガラス窓がある縁側。目に付くのが上の部分にすりガラスが設けられていること。聴竹居ではすりガラスは軒を隠すための役割をしている。座った位置で隠れるように設計してあり、風通しもできる。また藤井はこのすりガラスの窓の景色を一幅の絵画のように切り取る効果も狙った。聴竹居から少し下った斜面には、こじんまりとし茶実の下閑室がある。藤井はここで客人を招き、茶を立て、自らデザインした茶器で至福のひとときを楽しんだという。
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