2024年5月19日放送 9:00 - 10:00 NHK総合

日曜討論
歴史的円安・物価高 今後の日本経済は

出演者
伊藤雅之 牛田茉友 
(オープニング)
オープニング

トヨタ自動車が日本の上場企業で初めてグループの営業利益5兆円を超えるなど好調な決算が相次いでいるが、日本経済の先行きについて経済団体のトップからは懸念の声も。先週発表されたGDPは4期連続のマイナスとなった。円安、物価高の構造的要因はどこにあるのか、日本経済を強くするために何が必要なのかを専門家と議論する。

キーワード
トヨタ自動車リーマン・ショック内閣府国内総生産新浪剛史東京証券取引所経済同友会
(日曜討論)
日本経済の現状は

円相場はおととい午後5時時点で1ドル155円81~83銭と円安が続いている。2024年3月の消費者物価指数は去年の同じ月より2.6%上昇、前月からは0.2ポイント縮小している。1-3月の実質GDP成長率は-2.0%と2期ぶりにマイナスとなった。新浪氏は株価は好調だが実体経済がついていっていない、中小企業にいかに価格転嫁を認めていくかがキーになるが先行きは厳しくなっていると述べた。清水氏は円安は日本経済に良いことだと教えてきたが大分変わってきている、貿易収支は黒字が続いてきたが大震災を機に構造が変わり輸入が多くなった、円安が日本経済に与える効果が変わっていることに気がつかなければいけないと述べた。早川氏はみんなが予想しているより景気はよくないと述べた。クラフト氏は今日本は大きな転換期にきている、海外の見方は国内よりは悲観的ではないと述べた。高山氏は相談に乗っていて非常にみんなが苦しんでいると感じると述べた。

キーワード
国内総生産消費者物価指数
企業への影響は

円安が企業に与える影響について。新浪氏はデフレの時代と違い企業は前向きに投資をしたいと思っている、日本はサプライチェーンの一角になる可能性がある、日本への投資のタイミングを逃さないと述べた。清水氏は円安の享受をみんなが出来ていないところが問題と述べた。クラフト氏は今の円安が増収減益の影響に変わりつつある、今までは増益だったのが仕入れコストが高くなって利益が増えなくなってきていると述べた。早川氏はこれだけ物価が上がり続けるとマイナスの影響は徐々に回ってくるので心配になっている人も多いと述べた。

円安いつまで?アメリカ経済は

先週発表されたアメリカの消費者物価指数は3.4%と上昇率が3か月ぶりに前の月を下回り利下げ時期が早まるのではないかとの観測が広まっている。クラフト氏はこのデータを見る限り利下げは近くないと思う、マーケットも金融政策頼みではなくて違うところを見ていかなくてはいけないと述べた。新浪氏は金利を下げていかないとアメリカの経済は持たない状況にあるのではないか、ただアメリカは需要がありドルが下がっていくことはないと述べた。清水氏はアメリカが今後どう利下げをしていくか、日本がどのように利上げできるのかで金利差がどれくらい縮小するかがポイントだが、日本は利上げをするにしても小さいのでアメリカの金利がどう下がるのかがより注目されていると述べた。早川氏は利下げのタイミングは今年の終わり頃ではないかと述べた。為替介入について清水氏は為替介入だけで今のドル円相場の円安局面を転換させることは無理、あくまで一時的なものだとみんなが知っておくべきと述べた。早川氏はここ2〜3年上手には介入しているが流れが大きく変わることは期待しないほうがよいと述べた。クラフト氏は過度な動きを抑制する意味では2年前と今回の介入は効果的だと思う、成果が出るまで日本政府は効果的な介入を打っていくと思うと述べた。新浪氏は日銀に対しての政府のメッセージと述べた。

キーワード
アメリカ日本銀行消費者物価指数
家計への影響は

高山氏は結構お小遣いを削減している人が多い、総務省の家計調査報告を最近見てもお小遣いを削減しているというデータが本当にあると述べた。早川氏は日銀としてはこの物価高が続いてほしいということで慎重にやっていると思うが、逆に消費を冷やし日本経済全体にもマイナスの面があるので柔軟に考えていく必要があると述べた。清水氏は賃金が上がっていけば価格転嫁を受け入れられることができるがそのサイクルがどうもまだうまく回っていないと述べた。新浪氏は我々はしっかりと賃金を上げている仕組みを作っていきたい、昭和の制度設計を直していく転換点で良いインフレに持っていく仕組みづくりをやっていかなきゃいけないと述べた。

キーワード
家計調査少額投資非課税制度日本銀行総務省
円安の要因は

経常収支の推移を見ると、貿易による黒字が減少する一方で日本企業が海外の子会社から受け取る配当や利子などが増えている。ただ稼ぎの半分程度は現地での再投資などに充てられており必ずしも日本国内の投資や実質賃金の上昇につながっていないという指摘もされている。清水氏は企業自体は日本にお金を持って帰るより現地で再投資をした方がさらに大きなリターンが得られるといった判断で再投資をしているのであれば、それほど深刻な問題ではないと述べた。新浪氏は企業としては海外で収益が上がっても賃金は国内で働いている人には還元している、日本国内の魅力度をどう上げるかが重要と述べた。早川氏は海外のほうがリターンが高いと思って海外に投資しているわけでそのお金を一旦日本に戻す動きは出にくい、たださすがに海外に投資して儲かっても国内に投資もしなければ賃金も上げないという行動様式は変わりつつある、海外の投資が日本に入ってくれるような努力をしなければいけないと述べた。クラフト氏は近年は安全保障で日本が見直されている、日本のほうが安全ということで様々な投資も来ていると述べた。

キーワード
財務省
”デジタル赤字”は

デジタル赤字がインバウンドの黒字分を上回っている。清水氏はコロナによるオンライン化で教育やテレワークのためのデジタル出費が大きくなったのが源泉になっているが、赤字の分デジタルスキルを上げていくことを率先していかなければいかないと話した。早川氏はデジタルサービスについては圧倒的にアメリカ依存なので赤字が増えてしまう、日本企業がDXに本格的に取り組むようになったから増えている面もあるので生産性に結びつくかが勝負と述べた。高山氏はデジタル費は家計の中で外せない固定費になっていると述べた。新浪氏は失われた30年の中でイノベーションをやってこなかったことを深く反省しなければいけない、国と民間がイノベーションのために投資しなければいけないと述べた。

キーワード
SARSコロナウイルス2アメリカデジタルトランスフォーメーションデジタル赤字総務省
国内投資 どう呼び込む?

日本経済を強くするためには海外からの投資がカギ。海外から日本への直接投資の数を見ると増加傾向にあり、おととしは46.2兆円となっている。ただ名目GDPに占める海外からの投資の割合を各国と比較すると38位でOECD加盟国で最下位。クラフト氏は国内市場を拡大するイノベーションを進める、規制緩和を撤廃していく必要があると述べた。清水氏は対外直接投資と対内直接投資はバランスしなければいけない、円安の今この機を逃さずに対内直接投資を積極的に受けていくことが重要と述べた。早川氏は投資をする立場としてもインバウンドと同じ環境なのでどれだけアピールできるか、それぞれ地方の強みを活かして地方単位で策を練っていく必要があると述べた。新浪氏は海外からは規制があると思われてるので規制がないことを明確に、人材も流動化して良い人材がとれるようになっていることを海外にアピールしていくべきと述べた。

キーワード
名目GDP日本貿易振興機構経済協力開発機構
日本経済をどう強化?

企業の設備投資の割合はアメリカやイギリスなどに比べて日本は低い水準となっている。早川氏はここ30年日本企業はモノへの投資も人への投資もサボってきた、結果として生産性が伸び悩んだが少し変わりつつあると述べた。クラフト氏は投資に積極的な企業が成長し投資しない企業は淘汰されていくというのが見え始めたのは転換期にはプラスと述べた。清水氏は横断的な形での規制を見直して対内直接投資を呼び込む、日本からのサプライチェーンになるようなことを考えていく必要があると述べた。新浪氏は賃金を上げるだけでは集まらない状況になってきており人手不足をどう考えていくか、人材がもっと成長して優位な企業に移っていく環境を早く作っていくと述べた。

キーワード
アメリカイギリス内閣府
暮らしどう守る?対策は

ことしの春闘では大手企業を中心に高い水準の賃上げ回答が相次いだ。平均の賃上げ率は5.17%と33年ぶりの高い水準となった。一方で先月の景気ウォッチャー調査では物価上昇による消費の押し下げや原材料高による企業の負担を懸念する声が寄せられ、景気の現状を示す指数が2か月連続で前の月を下回った。来月からは電気ガス料金も値上がりする。高山氏は消費者が賃上げがされる未来が思い描けず不安になっているのを感じる。クラフト氏は満額回答は労働交渉の中ではあってはいけない、中には提示した金額より多く回答してる企業もおりこれは労働組合自体がデフレマインドにあると述べた。早川氏はデフレマインドは色んなところに残っている、物価上昇率の見通しを見ても毎回必ずエコノミストの見方よりも高いと述べた。清水氏は無理やり欧米に追いつくよりはデフレマインドのまま日本の良さを続けていくほうが良いかもしれない、デフレマインドで困っていなかったのはサブスクやカーシェアリングなど安くても楽しく生活できる術があったからでもっと注目していくのも手と述べた。

キーワード
内閣府日本労働組合総連合会景気ウォッチャー調査

© 2009-2024 WireAction, Inc. All Rights Reserved.