- 出演者
- 牛田茉友 山下毅
急激な人口減少で暮らしに危機。運転手不足でバスが減便に。先月、総務省は日本人の人口が15年連続減少したと発表。去年より約86万人減り調査を始めてから最大の減少数となった。
今年1月1日現在の日本の総人口(外国人含む)は約1億2488万人。前年比53万人減少。東京都、千葉県、沖縄県では人口が増加。44の道府県で減少した。東北地方、中国地方、四国地方での減少が目立っている。地方の生活への影響が深刻となっている。2008年度から2023年度にかけて路線バスでは計2万3193キロが廃止。鉄道や路面電車などでは18路線計625.1キロが廃止された。国土交通省が行った意識調査によると人口規模が少ない市町村ほど「公共交通が減り自動車が運転できないと生活出来ない」などの声があがっている。インフラの維持に関わる支出も増え始めている。水道を巡っては今年4月以降、料金を値上げする自治体が相次いでいる。沼津市では14年ぶりに35.9%の値上げとなった。宝塚市では44年ぶりに19%の値上げなどとなっている。「持続可能な地域社会総合研究所」所長・藤山浩氏は「循環型社会への転換を見据えると活路はある」などと話した。福島県国見町「陽と人」代表・小林味愛氏は「生産年齢人口の減少による人手不足の問題と高齢化を感じる」などと話した。経済財政諮問会議議員/BNPパリバ証券GM統括本部副会長・中空麻奈氏は「地方にいると教育や就職の機会が少ないという状態。地方に産業を起こす視点が欠けている」などと話した。岩手県矢巾町政策推進課/岩手県立大学客員教授・吉岡律司氏は「地方の魅力をどのようにして、そこに住む価値を見出していくのか地方では議論できていないのが問題」などと話した。京都産業大学教授・塩津ゆりか氏は「人口減少が起こることによって税収が減少してしまう。高齢化が進むと福祉にかかる経費が必要になる。歳出が増えるのに歳入が減っていく状況が地方財政を圧迫している」などと話した。
地方では財政非常事態を独自に宣言する自治体もある。今後の自治体の財政の見通しに塩津氏は「2040年までにどのようになるかシュミレーションを行った研究では、住民税は30%ぐらい減少してしまうというふうに予測されている。この状況を考えると厳しい状況に置かれてしまう。その危機感を感じている方々が非常事態宣言を出していると感じる」と話した。吉岡氏は「財政危機という言葉を使っている人たちは財源不足にだけ着目しているが、限られた予算をどのようにやりくりしていくのかという財務の話が欠けていると思う。そういう所をやっていけば何をするべきなのか見出だせるのではないか」等と話した。小林氏は「私たちの世代は物心ついた時には人口が減ることが分かっていた。税収が減ることを前提に物事を考えている。税収が減るのであれば公共サービスを行政だけで本当に維持していくつもりがあるのかということは問わなければいけない。ただ、その議論が地方で出てこないので、民間でできることをやっていくということを考えた時に、サービスを作っていく中で縦割りの弊害が必ず出てくる。どこも人口が減っているということは人手不足というところで働く人がいなくなってきている。そうなった時にどう残りきっていくかはどの地方でも関係ある課題だと思っている」等と話した。
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- 財政非常事態宣言
「コンパクトシティ」について。コンパクトシティとは生活サービス機能や住居などを一定のエリアに誘導し、集約型の都市を目指す街作りの考え方。国は生活利便性の維持向上、地域経済の活性化、行政コストの削減などの効果があるとしている。集約的な街作りの考え方については能登半島地震の復興をめぐっても議論が行われている。今年4月の財政制度等審議会では、今後の復旧・復興にはインフラの維持にかかる負担などが課題として、住民の意向を踏まえつつ集約的な街作りを検討すべきと提言された。一方で委員からは「地域固有の問題にも対処すべき」や「取り残される人がいない形で進めるべき」など懸念の声も上がった。
「コンパクトシティ」について議論。中空氏は「基本的に進めるべき。今まで広がらなかったのは伝え方が悪い部分もあると思う。今後は利点をイメージしやすいようモデルケースを増やしていくべき」などと述べた。藤山氏は「日本は循環型社会に向かうべき。その鍵は周辺部にこそあるのに現状ではコンパクトシティという考え方が周辺部を切り捨てるという意味で使われてしまっている」などと述べた。小林氏は「コンパクトシティに対する住民の意見が適切に吸い上げられているか疑問を感じる。またコンパクトシティの議論と並行して地域の共助のあり方についても考えなければならない」などと述べた。中空氏は「今のままでは人口減少が加速するだけなのでコンパクトシティも含めて色々と考える必要がある。また各地域に特色ある産業を持ってくることも重要」などと述べた。塩津氏は「各地方の実情にあったコンパクトシティ化を進めることは大事。ただコンパクトシティ化の程度についてはまた別の議論になる」などと述べた。吉岡氏は矢巾町について「矢巾町は先輩方の努力によってスプロール化を抑制してきた。コンパクトシティの本来の意図は都市機能の集積による住民サービスの利便性向上で、周辺部の産業の活性化とセットで考えられるべきもの」などと述べた。また集約化の議論を行う際に大切なことについては「住民の声が大事。住民の声を無視して一定の価値観だけで集約化を進めることは行政として絶対にやってはならない。そして大切なのは住民同士が街作りについて話し合いができることだと思う」などと述べた。
インフラなどの維持について聞かれた中空さんは「メンテナンスが出来なければ落ちてしまうことになる。インフラは作った以上はメンテナンスが必要になる。1日1万人が通る道路と1人か2人しか通らない道路で自ずと皆が使う道路を優先するのは仕方がないと思うんですね。必要なものと不必要なものを分けていく必要がある。そこまでやらないで放っておくと事故を起こしてしまうと思います。」などと話した。財政的にみてどうかという質問について塩津さんは「今の状況では維持していくのは非常に難しいという風に考えています。」などと話した。道路など税金でメンテナンスされていたりする。水道になると利用料金で維持していくのが原則になる。それが観点になるとインフラと言っても一口ではない。」などと話した。必要なインフラを維持する負担について住民側はどう向き合っているのかを聞かれた吉岡さんは「水道料金は安いほうが良いっていう人がほとんどなんですよ。危機を迎えているっていうことをほとんどの方が知らないんですよ。」などと話した。維持するとしたらどういった方法があるのかと聞かれた小林さんは「今の行政と税収で何ができないのかを各地域で明確にしていかないとどう動いたらいいかっていうのが分からないんだと思います。住民全体で話し合って行かないと行けないと思います。」などと話した。
地方におけるインフラなどの無駄はないのかについて聞かれた藤山さんは「これからは再生可能な資源を繋いでおくという発想が必要だと思います。地域の住民も自分たちで会社を作ってやっていく。そういうものを含めてやっていかなきゃいけないかな。」などと話した。循環型の社会について聞かれた中空さんは「とても大切です。どうやって循環させるかっていう仕組みを埋め込むか。人が住まないと地方創生ってできませんので、循環型経済で持っていけたら理想的だと思います。」などと話した。インフラなどのハード面の維持にどう向き合っていくのかについて聞かれた吉岡さんは「老朽化が進むことは利用する方の安全性で大きなリスクを抱えていると思う。インフラのコスト構造は固定費がかなり占めている。水道で言うと9%占めている。人口が減って費用はかかり続けるっていうことが実際の怖さなんですね。岩手県ではみんなで広報のプラットフォームを作ってみんなにお知らせができるような取り組みも始めています。そういった工夫を様々な団体でやっていく必要性があるんじゃないかなと思います。」などと話した。
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住民サービスの維持は。市町村の役割は、介護保険、国民健康保険、生活保護、家庭ごみの収集、小中学校の設置運営、消防防災活動など。市町村の歳出額(京都大学・曽我謙悟教授作成の資料より)は増加傾向。中でも福祉関連の費用に充てる民生費が他の項目に比べ大きく増加。吉岡律司さんは、財政で扶助費の固定化と増大が非常に大きな部分を占めてきている。財源を確保するためには住民の行動変容、協力が必要だと述べた。塩津ゆりかさんは「民サービスの維持の持続性は財政面から見ると今の水準を維持するのは厳しいという。中空麻奈さんは、今まで使っていた無駄なお金があるとすればそれを減らすようにいかに持っていくか。鍵はデジタル化が必要だという。小林味愛さんは、行政として担うサービスは何なのか議論していかなければと述べた。
これからの行政は、住民は。「おはよう日本」4月25日放送、島根・邑南町の地区別戦略事業の紹介。12地区ごとに住民が考えた事業を提案し町が予算をつける仕組み。住民が主体的に地域づくりに関わることが特徴で担当者は「行政では手が届かないところを地域に担ってもらっている。新しい地域コミュニティーの形をつくっていきたい」とコメント。藤山浩さんは、住民が主人公になるような仕組み作りは、ますます不可欠になると言う。小林味愛さんは、住んでいる人たちが主役になれるようなコンミュニティが根付いていくことはすごく大事だという。吉岡律司さんは、主体的に町づくりに関わる方々が増えればいい町になっていくとコメントした。
地域の“稼ぐ力”はというテーマで話し合う。中空麻奈さんは「工夫が必要。特性を使った産業の振興は必要」だという。藤山浩さんは「地方で投資する仕組みが必要」だという。小林味愛さんは「働き甲斐と働きやすさが地方にあるか」が重要だとのこと。吉岡律司は「日本のeコマース市場を大きくすることで地域のチャレンジの可能性はまだある」という。塩津ゆりかさんは「デジタルを活用して産業化を進めていくことが基本にある」という。中空麻奈さんは、「地域活性と地方創生は違いがある。長く住んでもらうための工夫がもう一つ必要」とコメントした。
中空さんは、地方に長く住んでもらうための工夫が必要だという。藤山さんは、その場所でしっかりと人を養う力があるということを目指すべきだという。吉岡さんは、みんなが暮らしやすい地域ができればいいという。