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オープニング映像。
この日、東京地方検察庁に告発状を送った上脇博之は、政治と金の問題を追求し続け25年が経ち、政治家が最も恐れる男と呼ばれている。2023年12月、自民党・安倍派事務所などでは裏金問題で家宅捜索が入り、そのきっかけは上脇の告発であった。上脇は自分が知ったことはなかったことにはできず、誰も告発できない状況にあるならば自分がやろうと思ったのだなどと語った。2024年1月、神戸学院大学で法学部の教授を務めている上脇は学生たちに基本的人権を保証した憲法の成り立ちと意味を理解し、自らの意見を持ってほしいと伝えていた。2022年11月、上脇は政治資金パーティーの収入不記載を指摘したスクープ報道をきっかけに調査を開始し、自民党の派閥による組織的な裏金作り疑惑を見つけた。政治資金規正法では1回の政治資金パーティーで20万円を超える購入者の氏名・金額を収支報告書に記載しなければならない。上脇は派閥側の収支報告書とパーティー券を購入した側の収支報告書を突き合わせて不記載を発見した。自民党は5派閥で2018年からの5年間、約7000万円の不記載していた。上脇は収支報告書で国民は政治家を判断するため不記載は背信行為であり知る権利を侵害しているなどと伝えた。政治資金を透明化する理由は、金によって政治が歪められてきた歴史があるためであった。
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1989年、大物政治家が値上がり確実の未公開株の受けたリクルート事件により竹下登元総理率いた内閣は退陣を余儀なくされた。1992年、当時の自民党副総裁であった金丸信元副総裁が東京佐川急便から5億円の闇献金を受け取っていたことが明らかとなり、1993年には自民党は初めて政権を失った。1994年、政治改革で政党交付金が導入され、政党と政党支部への企業・団体献金は温存された。政党交付金は所属する国会議員数などに応じて交付され、2024年分は計314億3700万円にも及び、うち自民党には156億5000万円が交付されていた。上脇は政党交付金と企業団体献金の二重取りが続いているなどと指摘した。上脇は神戸市内に住んでおり、時間があれば政治資金収支報告書を読み込んでは不明な箇所を見つけると告発状を各準備に取り掛かっている。上脇は裏金の存在に気づいてから正月に休むこともなく調べて、これまでに150件を超える告発状を送っている。そんな上脇は学生時代はハンドボール部でゴールキーパーを任され、浪人時代からトレードマークのバンダナを身に着けるようになった。関西大学に入学した上脇は酒と麻雀に明け暮れる生活を送っていたが、唯一哲学の講義には出席し、法哲学に関心を向け、神戸大学大学院に進み憲法を学んだ。1994年、現在の北九州市立大学に講師として赴任した上脇は、北九州市の税金の使い方を監視する市民オンブズマンに参加していた。上脇の最初の告発は2000年に6党に対する政党交付金の受給問題であり、不起訴となったが大きな話題となっていた。その2年後に政治資金オンブズマンを弁護士らとともに立ち上げ政治家を刑事告発する活動を本格化させていた。
メディアが上脇を注目するようになったのは2018年の森友学園の土地売買を巡る決済文書改ざん問題であった。上脇は財務省の当時の理財局長らを刑事告発したが、大阪地検特捜部は関係者全員を不起訴とし、処分は不可解に終わった。2019年、上脇は参議院選挙で発生した大規模な買収事件を告発し、妻を当選させようとしていた河井克行元法務大臣は現金を配ったとして実刑判決を受け服役した。2024年2月、自民党の裏金問題が明るみになってから講演会に呼ばれることが増えていた上脇は、この日も講演に参加していた。上脇は人々の変化を感じ取っているが、SNS場では非難の言葉が並ぶこともあるが、中傷に上脇が怯むことはないものの、密室などでは警戒しているなどと打ち明けた。
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2024年2月末、自民党の裏金問題が大きな局面を迎え、岸田文雄前総理大臣が政治倫理審査会に現職総理として初めて出席した。上脇は当時の中継映像を仕事の合間に確認した。しかし真相解明につながる新事実は語られなかった。安倍派の幹部たちも会計に関与していないと強調し、収支報告書の不記載について秘書らに任せていて認識していなかったと繰り返した。その後、上脇は新たに告発状を提出する準備に取り掛かった。
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2024年4月、政治資金規正法の見直しを巡り国会が大混乱する中、上脇は普段通りに新年度を迎えていた。上脇はゼミ生を迎え、憲法を学び考える授業を続け、空いた時間を見つけては告発状を作成し続けている。5月、上脇は東京地方検察庁から通知書が届いていた。上脇が告発していた萩生田光一議員について、東京地検特捜部は告発事実を認めるに足る証拠を収集するに至らなかったとして不起訴とし、一方で当時の萩生田議員の秘書は起訴猶予となった。上脇はこれを受けて不起訴は不当だとして国民の代表が判断する検察審査会に審査を申し立てた。2024年6月、改正政治資金規正法が成立し、パーティー券購入者を公開する基準額を20万円超から5万円超に引き下げるに終わり、企業・団体献金の見直しには一切手が加えられなかった。上脇は国民の手で政治改革に尽力する政治家を選ぶ必要があるなどと語った。上脇は不起訴になろうと絶対に諦めず、政治家の逃げ得を許さないために告発を続けていく。2024年10月、衆院選で自民党が大敗し、少数与党となり、12月には政治資金規正法を再改正し、使途公開不要な政策活動費を全面廃止し、一方で企業・団体献金の禁止は先送りとなった。
エンディング映像。