2025年11月8日放送 1:36 - 3:16 NHK総合

BS1スペシャル
もうひとつのショパンコンクール〜ピアノ調律師たちの闘い〜

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(オープニング)
オープニング

2015年10月にポーランド・ワルシャワで5年に1度のショパン国際ピアノコンクールが開催された。その裏ではピアノメーカー4社の過酷な戦いが行われ、ヤマハ、カワイ、新興メーカーのファツィオリの調律師は日本人。3人には数々の艱難が立ちはだかった。

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ショパン国際ピアノコンクールファツィオリヤマハワルシャワ(ポーランド)河合楽器製作所
もうひとつのショパンコンクール 日本人ピアノ調律師たちの闘い
4つのピアノメーカーの熾烈な競争

ポーランド・ワルシャワはショパンの故国で、3週間かけて行われるショパン国際ピアノコンクールが幕を開けた。出場するピアニストは78人で、優勝すればスターダムにのし上がることができる。コンクール開催前にはコンサート用のピアノ4台が運びこまれ、ピアニストは4社のピアノを弾き比べて鍵盤のタッチ、ピアノが奏でる音の好みで自由にセレクトできる。採用されたのはピアノの王と称されるスタインウェイ&サンズ、売上金額で世界一を誇るヤマハ、欧州で根強い人気を誇るカワイ、イタリアの新興メーカーのファツィオリ。

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ショパン国際ピアノコンクールスタインウェイ・アンド・サンズスタニスラフ・ブーニンファツィオリフレデリック・ショパンマルタ・アルゲリッチヤマハワルシャワ(ポーランド)中村紘子国立ワルシャワ・フィルハーモニーホール河合楽器製作所
ファツィオリ調律師 越智晃

ショパン国際ピアノコンクールでイタリアの新興メーカーファツィオリの調律師を務めるのが越智晃さんで、同社のピアノは前回のコンクールで選んだピアニストが3位に入るという快挙を成し遂げた。格式あるルービンシュタイン国際ピアノコンクールでは1位~3位のピアニストがファツィオリを選択。いずれの調律を担当したのが越智さんで、創業者で元ピアニストのパオロ・ファツィオリ氏は卓越した耳と調律スキルを持ち合わせていると絶賛。

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アルド・チッコリーニサチーレ(イタリア)ショパン国際ピアノコンクールスタインウェイ・アンド・サンズスタニスラフ・ブーニンダニール・トリフォノフファツィオリヤマハルービンシュタイン国際ピアノコンクールワルシャワ(ポーランド)国立ワルシャワ・フィルハーモニーホール河合楽器製作所

ファツィオリの透明感のある音に魅力を感じ、現在は同社の調律を務める越智晃さんは鍵盤の調整や、鍵盤と鍵盤を支える金属ピンの隙間を一定にした。続いて243本の弦の張り具合を変えてはピアノが奏でる音をチェック。今回のショパン国際ピアノコンクールでは柔らかく、温もりがあって色気のある艶っぽい音を目指したいと語った。

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ショパン国際ピアノコンクールスタインウェイ・アンド・サンズファツィオリヤマハワルシャワ(ポーランド)河合楽器製作所

越智さんは出場するピアニストが調律したファツィオリのピアノを選んでくれるか見守っていたが、目指した温かみのある音がピアニストの嗜好に合致していないようだった。他社では豊かな音量があり響きの良い音を重視し、越智さんは限られた時間で戦略を一から練り直した。グランドピアノの心臓部にあたるアクションを入れ替え、調律を再開。今回の音は太く、大きくはっきりと響く音とし、越智さんもこちらの方がベターだと感じていた。

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ショパン国際ピアノコンクールスタインウェイ・アンド・サンズファツィオリヤマハワルシャワ(ポーランド)河合楽器製作所

新たに調律したファツィオリのピアノを選んだのは中国のティアン・ルーさんで、越智さんは選んでくれた人がいたことに安堵した。

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ショパン国際ピアノコンクールファツィオリヤマハワルシャワ(ポーランド)河合楽器製作所
カワイ調律師 小宮山淳

今回のコンクールで根強い支持を集めたのがカワイで、フレデリック・ショパンの故国であるポーランドでも根強い人気を誇る。ワジェンキ公園の野外コンサートで使用されているのもカワイで、低音の効いたまろやかな音色はコンクールの出場者に好評だった。同社の調律師は小宮山淳さんで、カワイは会場近くにピアニストがリラックスできるように休憩室を用意。小宮山さんらにとっても寛ぎながらピアニストから忌憚のない意見を聞ける場でもあり、90年のコンクールで5位入賞を果たした高橋多佳子さんは休憩室は大きな支えとなったと語った。

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ショパン国際ピアノコンクールスタインウェイ・アンド・サンズフレデリック・ショパンワジェンキ公園ワルシャワ(ポーランド)国立ワルシャワ・フィルハーモニーホール河合楽器製作所

小宮山淳さんが期待を寄せているのはロシアのガリーナ・チスチャコーバさんで、今回のコンクールで有力候補に名前が上がっていた。チスチャコーバさんは小宮山さんのホスピタリティ溢れるサポートはありがたいと語った。

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ショパン国際ピアノコンクールワルシャワ(ポーランド)河合楽器製作所
ファツィオリ調律師 越智晃

ファツィオリのピアノを選んだ中国のティアン・ルーさんはショパンコンクールに初参加で、夫でピアニストのユーリ・シャドリンさんが献身的にサポート。越智さんは本番用のピアノでもルーさんが気に入った音色を再現しようと細かくチェックした。シャドリンさんも前回のコンクールに年齢制限ギリギリで出場し、3次予選まで進出。だが高熱と手に違和感を覚えたために棄権していた。ルーさんはコンクールは私の音楽家としての人生全てに影響するだろうと語った。

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ショパン国際ピアノコンクールファツィオリワルシャワ(ポーランド)中国

越智さんはファツィオリを理解してくれるルーさんの演奏をさらに引き立たせたいと、ギリギリまで入念な調律計画をまとめて最後の調律へと臨んだ。

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ショパン国際ピアノコンクールファツィオリワルシャワ(ポーランド)
ショパンコンクール

2015年10月にポーランド・ワルシャワで5年に1度のショパン国際ピアノコンクールが開催。審査員席には歴代優勝者らが顔を揃えるなか、1次予選が開幕した。

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ショパン国際ピアノコンクールファツィオリマルタ・アルゲリッチヤマハワルシャワ(ポーランド)河合楽器製作所海老彰子
ショパンコンクール 1次予選

ショパン国際ピアノコンクールの1次予選が始まった。コンクールではピアニストの名と共に使用されるピアノの名前も読み上げられる為、ピアノメーカーにとっても晴れ舞台となる。ティモテウシュ・ビエスはヤマハ、チョ・ソンジンはスタインウェイ、ケイト・リューはヤマハのピアノを使用した。カワイのピアノを使用するガリーナ・チスチャコーバの出番の前には、調律師の小宮山淳さんが最終チェックをしていたが、彼女は風邪を引いてしまっていた。

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ショパン国際ピアノコンクールスタインウェイ・アンド・サンズヤマハ河合楽器製作所

ファツィオリの調律師、越智晃さんはたった一人ファツィオリを選んでくれたティアン・ルーの為に出来る限りの事をしていた。ティアン・ルーは演奏後に満足気な様子を見せていた。

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ショパン国際ピアノコンクールファツィオリ

1次予選の結果が発表された。カワイを選んだガリーナ・チスチャコーバは通過したが、ファツィオリを選んだティアン・ルーは通過する事が出来なかった。ファツィオリの調律師・越智晃さんは「良い時もあれば悪い時もある」と話した。調律師としてコンクールの優勝を目指す越智晃さんの次の挑戦は、5年後の事となる。

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ショパン国際ピアノコンクールファツィオリ河合楽器製作所
ショパンコンクール 2次予選

ショパン国際ピアノコンクールの2次予選が始まったが、3日目にハプニングが起きた。1次予選でカワイを弾いていた小野田有紗さんがスタインウェイに変更していたが、それが伝わっておらずカワイのピアノがステージに用意されてしまっていた。実は参加者は各ラウンド毎にピアノを変更する事が出来るのだった。演奏後、小野田さんはカワイの調律師・小宮山淳さんに話しかけており、ピアノを使ってもらえなかった小宮山さんも暖かく励ましていた。カワイの演奏者の内、2次予選を通過したのは2人で、小野田さんは通過する事が出来なかった。

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ショパン国際ピアノコンクールスタインウェイ・アンド・サンズ河合楽器製作所
ショパンコンクール 3次予選

ショパン国際ピアノコンクールの3次予選が行われた。トップバッターはカワイのピアノを選んだガリーナ・チスチャコーバで、この日も風格ある演奏を披露したが、ファイナリストには選ばれなかった。カワイをファイナリストを出せずに今回の舞台を去る事となり、小宮山淳さんにとっても無念の敗退だった。一方、今回大躍進を遂げたのがヤマハで、ファイナリスト10人の内7人がヤマハ、3人がスタインウェイを選んでいた。

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ショパン国際ピアノコンクールスタインウェイ・アンド・サンズヤマハ河合楽器製作所
ヤマハ調律師 花岡昌範

ヤマハは腕利きの調律師チームを送り込んだ。ピアノはこのコンクールのために制作されたもの。調律するのは花岡昌範。花岡が重視したのは音の響き。会場に合わせた調律で議論を重ねてきた。ヤマハがショパンコンクールに初めて参加したのは1985年。当時は日本人がつくったピアノは受け入れられず、結果も出せなかった。ヤマハポーランド支店長の田所武寛は「基本的に我々がアクションをかけないとヤマハを進んでえらんでくれない。そこでいろいろな方に触ってみてもらうところから始めた」と語った。今年は参加ピアニストたちが宿泊しているホテルの全ての部屋に電子ピアノを貸しだした。そんな努力が実を結び、ピアノ選びではヤマハを選ぶピアニストが続出した。78人のうち36人がヤマハを選択した。

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ショパン国際ピアノコンクールヤマハ

花岡昌範が最も期待を寄せているのはシャルル・リシャール・アムラン。アムランは「コンクールは大変な状況ですが、僕は幸運でした。勝ち抜くには練習や能力だけでなく、運も必要だと思います・すべてがラッキーだったと感じています・僕が好きなピアノは鍵盤が軽いピアノです。重いのは好きではありません。ヤマハのピアノはクセがないので自分の個性を100%出せるんです」と語った。イーケ・トニー・ヤンは最年少参加者。ヤンは腕試しのつもりで参加したコンクールでファイナル出場を決めた。ヤンは「このコンクールに出るのは子供の頃からの夢でした。まさかこんなに早く出られるとは思わなかったけど、本当に光栄です。ヤマハのピアノは僕のスタイルに合っています。音がコントロールしやすくて表現したいように演奏できます」と語った。

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ショパン国際ピアノコンクールヤマハ
スタンウェイ

スタインウェイはこれまで数多の優勝者を輩出したピアノメーカー。調律師のヤロスワフ・ベドゥナルスキは会場の専属調律師でもあり、音の伝わり方を熟知している。ヤロスワフ・ベドゥナルスキは「スタインウェイの音は普遍的なものです。ショパンやバッハなどどんな曲にも合います。あとはピアニスト次第です」と語った。スタインウェイ・アンド・サンズはアメリカとドイツを本拠とする世界的メーカーで現在のピアノ作りの基礎を作ったと言っても過言ではない。これまで取得した特許は127にのぼり、その品質の良さから、世界の主なコンサートホールにはスタインウェイが採用されている。優勝候補のチョ・ソンジンもスタインウェイを使用する。チョ・ソンジンは「1次予選はピアノが合わなかったんです。僕はかなり強く意見を言いました。本線ではスタインウェイを弾く人が少ないので僕の要望を聞いてくれましたよ」と語った。

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ショパン国際ピアノコンクールスタインウェイ・アンド・サンズハンブルク(ドイツ)
本戦リハーサル後…

オーケストラと共演するファイナルが始まる前、ピアニストたちにはリハーサルの機会が設けられた。ヤマハは7人のピアニストに選ばれるも、演奏者毎に調律をやり直すことはできず、選んでくれたピアニストに満足してもらえる調律は難しかった。調律師の花岡昌範さんは動画サイトに配信されたコンクールの演奏に耳を傾け、ピアニストの癖や好みを頭に叩き込んでバランスの良い調律を模索した。だが3次予選までヤマハのピアノを弾いていたケイト・リューさんが力強い演奏を追求すべくスタインウェイに急遽変更。そしてもう一人もスタインウェイに乗り換え、ヤマハを弾くピアニストは5人となった。

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ショパン国際ピアノコンクールスタインウェイ・アンド・サンズヤマハ河合楽器製作所
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