THE TIME, THE TIME,マーケティング部
やってきたのは東京・南青山にある雑誌「宣伝会議」の編集部。1954年に創刊された日本初の広告マーケティング専門誌で、70年にわたって世界中の広告業の最先端を掲載。今の編集長・谷口さんに話を聞いた。広告業界の最新事情を知る谷口編集長がいま注目するPR方法は「OOH」。「OOH」とは「アウト・オブ・ホーム」の略で、街なかの広告や電車内広告などの総称を指す。コロナが落ち着き外出が増えるとともに「OOH広告」の効果がアップし、注目を集めている。その瞬間・その場所でしか見られないため希少価値がある。人気アニメ「幽☆遊☆白書」の実写版PRではビルに映った主人公が反対側のビルにビームを放ち「リアル”霊丸”が出た」と話題に。相撲ドラマ「サンクチュアリ -聖域-」のPRでは駅のホームに巨大な力士が登場した。写真で共有する今の時代は効果が倍増するという。さらに体験型の「OOH」も登場。「LOVE BOARD」の大型ビジョンを使って行われたのは、マイクを通して質問するとビルが答えてくれるシステム。ChatGPTを活用したこのシステムは先週海外の「OOHアワード」でグランプリを獲得。デジタル化した屋外広告は「DOOH」と呼ばれ世界的に注目されている。その先駆けとなったのが2021年に新宿東口の巨大ビジョンに登場した3Dの巨大猫。「リアルすぎる」と大バズリした。実はこれは「渋谷のハチ公」に対抗して「新宿の猫」にしたという。渋谷の3D猫の制作チームに話を聞くと、猫をイチから研究して骨格から作り筋肉をつけるという緻密な作業で作られたという。いまは「モノを落とす猫」を新たに制作中で、8月から放映予定だという。
雑誌「宣伝会議」の谷口編集長によると、今注目のPR方法がもう1つ。ドラマ「VIVANT」、映画「君たちはどう生きるか」、映画「THE FIRST SLAM DUNK」などに共通するPR手法「ティザー」。「ティザー」とは「焦らす」という意味で、あえて情報を隠し少しずつ見せて期待感をあおる方法。「ティザー広告」はドラマ・映画だけではなく、最近ではビールのヒットにも貢献している。キリンビールの過去10年間で最高売上を記録している「晴れ風」。ここにも「ティザー広告」が使われていた。「ティザー」を成功させる鍵は絶妙な「情報小出し戦略」。あえて商品名を言わないCMを公開。しかし完全に隠しているわけではなく、CM中に少しだけ名前が見えている。撮影では見えるか見えないかをミリ単位で調整していた。SNSでは名前予想合戦で大盛りあがり。答えが知りたい中で会見を開いて商品名を発表した。しかしティザー手法には大きなリスクもあるそうで、まったく話題にならない可能性もあり担当者は大きな不安に苛まれたという。