- 出演者
- 曽我英弘 豊島実季
オープニング映像と挨拶。トランプ外交は世界にどのような影響をもたらすのかを議論する。
トランプ大統領就任から3か月。外交面ではどのような動きがあったのか振り返る。ウクライナ情勢では“24時間以内に終わらせる”としていたが、未だ停戦・合意に至らず。中東情勢は“すべてがうまくいく”と公言したものの、双方の隔たりは埋まっていない。中国に対しては政権の要職に対中強硬派を起用し貿易摩擦が激化している。薮中三十二は“未だに42%の支持率があり内戦のような状況”、三牧聖子は“関税政策は共和党支持者からも批判、移民は堅調な支持があるがやや怪しい”などとコメント。服部倫卓はプーチン政権はトランプ政権は追い風になったが、あまりの荒波に苦労していると指摘した。
追加関税の応酬が続き、互いに100%以上の関税をかけあう米中。23日、中国の呼びかけによって開催された国連安全保障理事会の非公式会合で、中国は、アメリカは世界の経済秩序を混乱に陥れていると強く非難。アメリカは、会合はパフォーマンスにすぎないとし、アメリカは公正な経済競争の場のために戦うと主張した。トランプ大統領は先週、中国に対する関税の引き下げを視野に入れていることを示唆し、24日、けさ会談したと述べ、両国間で協議が行われたと説明した。中国外務省の報道官は25日、関税問題について、協議や交渉は行っていないと否定している。三牧は、トランプ大統領の対中姿勢が軟化している、背景には、関税政策に対する批判が高まっていることがある、ペンシルベニアなど大統領選激戦州での補選などでは、民主党が優勢となっていて、関税政策後、トランプ氏などへの批判が噴出している、トランプ政権としては軌道修正せざるを得なくなったなどとし、今回の関税政策では、製造業を取り戻すことが大きな目的となっているが、アンケートでは、製造業が取り戻されたら工場で働くと答えた人は2割程度、アメリカ国民が実際に望んでいることかどうかは疑問などと話した。川島は、関税政策をめぐっては、中国がアメリカに直接投資することは難しい、そういった意味では対策は限られている、報復関税を行いながら、それを利用してディールをすることしかなかったなどとし、米中の主張が食い違う状況が続くと、首脳会談が難しくなる、両国の情報管理も課題になってくるなどと話した。中西は、世界的に孤立しているのは、トランプ政権であり、中国に対しては、自由貿易の擁護者として頑張ってほしいという声はある、中国はそうした追い風を利用し、対米関税をこれ以上上げないと宣言するなど、大人の対応をしてアピールしている、アメリカ側も譲歩の姿勢を見せていて、今後、どのようなかたちで妥協を図るかという段階に徐々に入りつつあるなどと話した。
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藪中は、米中対立について、トランプ氏は、株価や米国債の下落により、足元が火をついている、中国は、アメリカに屈してはならないといった国内世論もあって落ち着いている、両国間の主張が食い違っているのは、水面下でのチャンネルが途絶えているということ、それが問題だなどと話した。川島は、米中交渉は、中国にとって、中国の方が世界を味方につけているという構図を作る良い舞台、関税政策においては次の一手を持ちながら交渉ができるなどとし、アメリカからグローバルサウスへの援助が減っている、それを利用して中国が入り込みたい、中国の人権問題を摘発していたラジオ・フリー・アジアへの援助も切れた、中国にとっては有利な状況である、そうしたことを利用しながら、アメリカの評判を下げるような方向でやっていくなどと話した。服部は、トランプ氏が始めた関税戦争は、ロシアにとって高みの見物、米ロ2国間の貿易は少なくなっていて、関税の脅しはロシアに効かないが、関税戦争によって世界的に貿易が麻痺し、石油価格が下落すると、産油国のロシアにとっては痛手、また、関税戦争によって中国経済が失速すれば、中国への依存度が高まっているロシアへの影響も大きいなどと話した。
今月、習近平主席はベトナムなどを訪問した。インドネシアとの間では、2プラス2も行い、外部への働きかけを強めている。川島は、トランプ政権になってから、アメリカと同盟国との関係が揺らいでいるという期待を中国は持っている、米中関係が不安定になると、中国は往々にして周辺との関係を固める傾向にある、中国は、アメリカに対して一致した行動をとることを目指しているが、東南アジアの国々も米中どちらかにつくという発想はなく、バランスをとるなどと話した。三牧は、関税政策の修正を中心に行っているのはベッセント財務長官で、アメリカ・ファーストは、アメリカを孤立させることではないと強調している、同盟国との関係など、これまでアメリカを強くしてきた要素をアメリカ自らが打ち消してしまって、中国に対しては、アメリカがオウンゴールしてしまっている状況だなどと話した。服部は、グローバルサウスが脚光を浴びて以来、米中ロは触手を伸ばしてきた、ロシアは、ヨーロッパとの関係が悪化するなか、アジアやグローバルサウスとの関係を強化するという路線があるが、実際には、中国・トルコ・インドとしか関係を伸ばせていない、ロシアとしては、より多角的にアジアやグローバルサウスへの取り組みを図っていきたいという思惑があるとみられるなどと話した。藪中は、中国にとって重要なのは首脳会談、中国がトランプ氏の対中姿勢を見極め、うまく関係を築こうとするかどうかが焦点だなどと話した。中西は、米中双方ともに政権の体制が不安定で、アメリカは、中国との交渉担当もはっきりしていない、互いに対する不信感も絡み合って、ある種の危機状態を回避するという危機管理のメカニズムが働くかどうかが関心事だなどと話した。
関税交渉の行方について三牧聖子氏は「アメリカでは中間選挙のことが念頭に置かれてきている。共和党支持層というのは、グローバリゼーションで自分達の雇用が奪われたという考えのトランプ氏のコアな支持層と、グローバリゼーションで得をしている人たち。水と油の関係性の支持者たちが共和党の中にはいる。これらが中間選挙に向けて亀裂が明らかになってきている。これについてトランプ政権は問題視している。関税政策をここまで看板に看板に掲げている以上、なかなか根本的な解決はない。そういったところでむしろ関税政策は修正されていく可能性が高まっている」などコメント。川島真氏は「中国。習近平の場合には、失敗ができない。国内政治の問題もあって。表に問題が出ないように注意しながら、経済に影響を及ぼさないように交渉をまとめたいと思っているのではないか」などコメント。中西寛氏「アメリカは意外に早く関税について修正する方針を中国に向けているので、やはり内心ではトランプ政権としてはこの状態は持続可能じゃないと考えて、何らかの形で妥協点を見出すということを考えていると思う。中国としては、罠にはめられたという形になると習近平政権にはダメージになる。その点を見極められるかというのが中国にとって重要だと思う」などコメント。薮中三十二氏は「トランプ氏自身が交渉についてどう捉えているか、それが大事。トランプ氏としては失敗とは言えない。成功しなければいけない。色んな国が自分達と交渉したがっているという感じにしたいところ。そのトップバッターがたまたま日本だった。具体的にはアラスカのLNGの開発についてなど。トランプ氏にとって日本は最大の投資国。そこに少し色をつけるとか」などコメント。
今後トランプ大統領は国際社会の中で、どう動くのか。日本はどう向き合っていくのか考える。今後の主な日程を紹介。来月には関税措置をめぐる日米交渉の2回目が予定されている。トランプ大統領は中東3か国を訪問。6月にはカナダでG7サミットが開催される。7月には相互関税措置の停止の期限である90日を迎える。そして、来年にはアメリカの中間選挙が行われる。三牧聖子氏は「中間選挙がすでに意識され始めている。選挙に向けて(共和党内などで)不人気な政策はトランプ氏も修正していく可能性はある」などコメント。中西寛氏は「トランプ政権としてはこれまでスタートダッシュをしてインパクトは出したが成果が出ていないということでいまは立て直しの時期に入りつつあると思う。ウクライナを巡る和平の問題。あるいは日米関税交渉、イランとの対話、米中交渉。できるだけ7月の独立記念前後にはなにかの形で成果をあげたいと見て動いてきていると思う。トランプ政権内部の人事がどうなるかで今後ヘグセス国防長官やウォルツ安全保障担当補佐官については色々なスキャンダルが出始めていて。彼らを交代サせるという話もありえる」などコメント。藪中三十二氏は「昨年の選挙でトランプ氏が勝ったのは中間層とか色んな人たちは経済も大事だということで投票したと思う。いま、その経済についてトランプ氏の評価が落ちている。もう一度そこを立て直さないと中間選挙が危ない」などコメント。
日本はトランプ政権にどう向き合っていけばいいのか。服部倫卓氏は「日本にとってはアメリカとの友好関係と自由世界の基本的な価値を守ることが、まさか二律背反になるとは思いもよらない事態。日本としては自由世界の価値を後回しにしてはいけない。自由貿易の原則を守っていくという立場だし、日本には資格があると思う。日本にとってはウクライナのクリミアの問題が日本の北方領土問題にもパラレルとなる。トランプ氏にある程度歩調を合わせることが必要だとしても、原則を曲げてはいけない」などコメント。川島真氏は「第1に日米同盟の件。2つ目に自由貿易の体制を維持していくことは大事。3つ目に東アジアの地域での平和と安定。中国に対しては抑止力をあげながら対応していくと。4つ目に、米中交渉でのアメリカのオウンゴールのダメージコントロールを日本がカバーしていくこともできる」などコメント。三牧聖子氏は「トランプ政権は戦後80年間の国際秩序をかなり否定しようとしている傾向があらわに。日米関係を維持しつつも原理原則をどう守っていくかが重要な課題に」などコメント。中西寛氏は「日本は他国のことも考えないと、日本が正論や原理・原則を守るため、日本としても意識していく必要がある。欧州などとも関係を深めている。それを日本外交の柱として打ち出していくことが日本の発言力を高めるということになる」などコメント。藪中三十二氏は「トランプ政権のやり方はなかなか心配だなということが多い。日本としてはそのアメリカときちんとやっていかないといけない。その上で原理原則で自由貿易の柱が大事」などコメント。
エンディングの挨拶をした。