- 出演者
- 村上龍 小池栄子
オープニング映像。
今年3月にオープンしたばかりのMEGAドン・キホーテ成増店は惣菜売場があり大盛況。幕の内弁当やピザがあるがピザはファンの心を掴んでいる。店内のオープンで1枚1枚焼き上げているために宅配ピザのような美味しさに。さらに、あんだく溺れ天津飯は食べている途中で餡がなくなるのが許せないという声をうけてありえないくらい餡を入れたドンキならではの天津飯。はみだしすぎィなニンニクチキンステーキおにぎりなどこれらはドンキのPBの一つの偏愛めし。
MEGAドン・キホーテ成増店は普通のスーパーとは一線を画す個性的な惣菜売場が客を呼んでいる。そんな戦略を打ち出したのは店長の中村。権限委譲の売場づくりで、中村が最も力を入れたのは寿司売場。もりもりうに丼は1707円、もりもりずわいがに丼が1275円など極上寿司のネタが並ぶ。中でもお客が次々に手にとっていくのは、極み本マグロ握りで、本マグロの中トロと赤身の贅沢な厚切りの9貫セットが1059円。こうした高額なネタの寿司をリーズナブルな値段で出すことにこだわった。結果全国のドン・キホーテの中で寿司は売上トップになった。この成増店は以前は総合スーパーのダイエーだった。閉店後4年以上は空き店舗だったがそこに今年ドン・キホーテが出店。店長の中村は地元のニーズを最大限に取り込んだ店作りで成功を勝ち取った。こんなことができるのは権限委譲という企業文化が根付いているため。
入社2年目の安田は、独自の判断で仕入れた商品の品出しを行っていた。品出しを終えた安田は値段の変更をしその商品の値段を下げたが上司への相談は一切なく売場担当者の判断がすべて。一人の商売人として勝負できるので高いモチベーションが生まれるという。また14年アルバイトをしている赤羽店の佐藤は衣料品売場を担当している。この日の仕事は発注。アルバイトでも社員と同じ様に仕入れの権限をもっていて自分の最良で発注もできる。売れ残った商品をセール品にするのも佐藤の判断。独自に仕入れヒットを生んだ商品は赤羽Tシャツ。周辺に飲み屋が多く、その店員が買ってくれると思い仕入れてみると大ヒットに。佐藤を訪ねてやってきたのは赤羽Tシャツ作ったメーカーのスタッフ。秋冬ものの提案にやってきたが佐藤一人で商談をうけていた。ドン・キホーテの権限委譲はここまで徹底している。全国に634店舗を展開しているドン・キホーテ。そのトップに立つのはパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの社長吉田直樹。ドンキは同じ様にみえて一点一点全く違う。例に繁華街にある渋谷の店舗の中は外国人だらけで、客の7割を海外からの観光客がしめているという。なので他のドンキでは見かけない英語、中国語、韓国語で書かれたポップが。この店で人気があるのは日本のお菓子。手軽なお土産と大量に買っていく人が多い。この店は外国人に人気の商品を中心に仕入れ、月間売上高は20億円を売り上げている。
インバウンド狙いの店作りを推し進めるのは店長の西川。得に強化したのはキャリーケース売場。今では国内外の商品1000点を販売している。手頃な商品が多く、100リットルで1万3000円ほど。毎日並んでいる商品の8割は売れてしまう。大量のお菓子とキャリーケースを買ったお客は店内の隅で買ったお菓子をキャリーケースへ。ドンキで土産物とキャリーケースを一緒に買って持ち帰るやり方が外国人観光客の間で広まっているという。この行動に気付いた店長の西川が売場をドンドン拡大したという流れ。一方で、京急蒲田駅の改札からすぐの場所で営業するドン・キホーテ京急蒲田店でがコンビニのような雰囲気が漂う。目立つ場所に並んでいたのはオリジナルの弁当やおにぎり。駅を利用する学生や会社員が立ち寄る事が多くコンビニ代わりに使用できる店作りを行っている。しかしドンキらしさにはカラーコンタクトレンズ売場が。ドン・キホーテでは実店舗のカラコン売上が1位。若い女性客が立ち寄るこの店でもカラコン売場を強化している。
吉田はアルバイトにも権限委譲することについて、その給料面は実力主義なのでアルバイトもそれに応じて評価されているという。またバイト出身から社員になる人もいて、役員にも多いという。また吉田は自身にも決裁権限があるのでCMへの意見を社員に伝えたが情報共有だと言われ意見が通らなかったという。またCMでは世界的アーティストのブルーノ・マーズを起用。ブルーノ・マーズがドン・キホーテのファンであり、こうした企画がいつの間にか進められていると答えた。村上は昔に雨が急に降ってきたがたまたま通りかかったドン・キホーテが現場判断で傘を100円で売っていてすごいと感心したという。吉田はそのことについて、現場の人達が自分で判断する訓練ができていると答えた。
5年前に傘下に入ったスーパーのユニーが絶好調。売場は以前とはさほど変わっていない用に見えるが中身は別の店になったようだという。ユニー時代から24年働いているパートの女性は発掘商品が変化したという。以前は本社が決めた商品が届き、どの店舗も同じような商品が同じく並んでいた。今はドンキ式の権限委譲が進み売場担当者の裁量で仕入れもできるように。パートの橋本が仕入れたのはピーナッツせんべい。お菓子売場の人気No.1商品になったという。各売り場の担当者がそれぞれの判断で商品を仕入れ特色を出すと店全体に相乗効果が波及。買収から5年で年間売上は900億円増加。利益は2倍以上に。
9月、ユニーの本社に集まった社員たち。集まったのは新たな人事制度のもと、支社長を任された人たち。ミリオンスター制度は人口100万人の商圏ごとに区分けし、そこにある数件の店舗の経営を支社長に任せるというもの。権限は社長と同等だという究極の権限委譲。ドン・キホーテにはこうした支社長が158人もいる。しかし一度就任したら安泰というわけではなく支社長の竹内はかつて降格の危機に。ミリオンスター支社長は成績が悪ければ留まることができないという。竹内は売場改革のテコ入れを行い、残りの半年で結果を出し、降格を免れた。支社長同士を競わせることで全体の底上げをはかるのも狙い。
ミリオンスター制度は創業者の安田が権限委譲をより根付かせるために導入した。安田に乞われて入社した現社長の吉田は、この権限委譲に頭を悩ませてきたという。吉田がドン・キホーテに入社したのは2007年。数年後、権限委譲について深く考えさせる出来事があった。それは吉田が部下の法務部長にあれこれ細かく指示を出したが、しばらくすると安田から電話があった。安田は電話口で権限委譲について聞かせてほしいと問い詰めてきたが納得してくれなかったという。
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ドン・キホーテの安田が吉田に権限委譲について問いただしてきた。現社長の吉田が何を言っても違う違うとけんもほろろ。安田は権限委譲はプロセスコントロールをしないことと言ってきたというが、権限委譲をするならどんな正しいことでも言ってはダメという言葉に驚いたという。安田が大事にしている本は源流。安田が2011年に記したドン・キホーテの理念集のことで、その中には企業原理の顧客最優先主義や、経営理念の権限委譲が選びぬいた言葉で書かれている。吉田が繰り返し開いているページには信頼と尊敬の善循環。どんなに正しいことを言っても人がついてこなければ意味はないという意味合いだという。
吉田はミリオンスター制度について支社長は全権限をもち、採用や予算を提案する権利ももっているというが、そこから毎年20%は陥落しているという。昇格する人も多ければ降格する人も多く、吉田も専務になった翌月に降格になった経験があると答え、どちらも繰り返したほうが偉くなるという伝説もあると答えた。また創業者の安田隆夫の源流の中身を解説。吉田はその中の一つの言葉に感銘を受け、いちばん大事なのは嘘はつかない、お客に正直にが大事だという。また権限委譲は難しいと答え、上司に対して部下にちゃんとできているかというテストをされているようなもので部下との信頼関係で成り立っていると答えた。
今年4月にグアムにオープンしたのは、 ヴィレッジ オブドンキ。売場面積は1万1000平米で、ドンキとしては世界最大級の店舗。店内には観光客の姿が。しかしこの店のメインターゲットは観光客ではなく日本産の野菜や果物が、現地の他のスーパーより安く販売している。食品数は8200点。5割が日本の食品だという。また牛丼を日本風に試食販売するなど日本の食を徹底的に売り込み、食品輸出の最前線に。今ドン・キホーテは海外進出を加速させてる。5年前には社名をパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスに変えたのも戦略の一環。その名の通り太平洋をぐるりと囲むように海外進出し、すでに113店を展開している。
ヴィレッジ オブドンキで買い物したテセウスさん一家がそこで購入した商品を調理する様子を紹介した。吉田はドンキの海外戦略についてインバウンドの客が来ているのをみるとどこでも行けるような気がすると答え、自分たちのノリや雰囲気は海外のお客に受け入れられるのではないかと答えた。今海外の売上に占める割合は10%台だがこれを50%くらいにはしていきたいと答えた。
村上龍は今日の総括に20年くらい前の夏、渋谷で夕立が来た。ドンキの店頭にビニール傘が売っていた。マジックで黒々と100円と書いてあった。すぐ買った。夕立が来たのとビニール傘はほぼ同時だった。今考えると誰が用意したのだろうと思う。創業者が書いた「源流」の企業原理は「顧客最優先主義で、第3条は「現場に大胆な権限委譲をはかり」とある。店のバイトがビニール傘を用意し100円という値段を決めたのだ。このエピソードは、ドンキの全てを象徴している。売上高は2兆円。その全ての努力は、バイトが用意したビニール傘が担っている。とした。
カンブリア宮殿の次回予告。