- 出演者
- 寺門亜衣子 田中美里 ダンディ坂野
能登半島地震から1年5カ月、今でも多くの家屋が手つかずのままで残されている。復興の大きな妨げになっているのが、人手不足や人口減少。さらにもうひとつの課題が心のケア。住民が交流する場を作るなど、地域の取り組みが始まっている。番組ではボランティア団体に密着。支援する側も難しい問題に直面している。
- キーワード
- 令和6年 能登半島地震
田中純一は先日も現地に行ったばかりで、少しずつ震災前の生活を取り戻しているが、このままここで生活できるのだろうかと不安を抱えている方も少なくないなどと話した。復興において重要なのが、生活や住まいの再建。公費解体が完了した割合は、4月末時点で65%。まだ3割以上が解体を待っている。
石川県で進められている公費解体は自治体によって進捗に差があり、七尾市などいまだ50%ほどの場所もある。県内全体で1万棟以上が解体されずに残されていて、すべての公費解体の完了はことし10月の計画となっている。さらに、被害を受けたものの修繕工事がいまだ行われていない住宅がある。工務店には1000件を超える依頼が殺到していて職人の数が足りず、工事の開始までにさらに1年近くかかると見られている。加えて奥能登地域は交通アクセスが悪く宿泊施設が少ないため、都市部から職人の受け入れることも簡単ではない。珠洲市にある工務店では工事の依頼が地震前の約10倍に増えていて、金沢市の職人に応援で入ってもらうためプレハブの宿舎を設置した。
復興に向けて能登半島が抱える大きな課題は、人口減少。特に被害が大きかった6つの市と町は、地震が起きた去年の元日と比べると約8600人減っている。田中純一は、実態としてはこの数字より多い形で人口減少が進んでいるなどとコメント。人口減少の影響については、まちづくり全体を根本的なところから見直さなければいけなくなってしまうかもしれないなどと話した。石川県が被災者の心のケアを行うために設置した相談窓口に寄せられた相談内容は、最も多いのが不眠や食欲がないことなどで、次いで生活環境の変化による不安など。
輪島市門前町で仮設住宅の住民を招いたお茶会が開かれた。主催したのは地元商店街の店主たち。地震から1年、引きこもりがちになる住民が増えていることから交流の場を設けたという。商店街の人たちは参加していない人にも呼びかけをする。背景にあるのはボランティアの減少。この仮設住宅ではボランティアによって毎日のようにイベントが行われていたが、今では家にこもりがちな住民の増加が課題となっている。こうした中、今年4月にオープンしたのが仮設住宅で暮らす被災者の生活や交流を支援する施設。約40人が利用できる食堂の他、浴場などが設けられている。また、相談にも応じる他、見守り活動の拠点としても使われることになっている。
田中さんによると、被災者からは「生活費が高騰している、毎日の生活が苦しくなってきた」「自分に合った制度が分からない」などといった声が聞かれるという。田中さんは「声を受け止めて政策につなげていくことが必要。気軽に声を上げていける機会やチャンネルを多く作っていくことも重要」などと話した。「石川こころのケアセンター」では相談ダイヤルを設置している。支援者をサポートするダイヤルもあり、田中さんは「支援を継続していく中で、実は支援する側も疲れてきている」などと話した。
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- 令和6年 能登半島地震
被災地の復興を後押しするために私達ができることとは。石川県の「応援消費おねがいプロジェクト」を紹介。「買って応援」はアンテナショップや通販サイトを利用して離れていても応援できる。「食べて応援」は石川の料理や食材を食べて応援する。石川県のホームページでは情報をまとめたページがある。おすすめを聞かれたダンディ坂野さんは能登のブランド牛「能登牛」を挙げた。田中さんは「きのこ類、『こけ』って言うんですけど。能登のきのこ類本当に美味しいのでぜひ食べていただきたい」などと話した。他には義援金やふるさと納税といった応援方法もある。「行って応援」は被災地でボランティア活動をする。田中さんによるとボランティアはまだたくさん必要で、まずはボランティアセンターの情報を基本としながら最新の情報を調べてつながっていってほしいとした。原則は現地に負担をかけないことのため、装備品などは自分で準備をして現地に入ることが必要。田中さんによると、ボランティア活動に必要な装備のポイントは雨風に対応できるものを持っていくこと。事前準備としては宿泊情報を確認すること、交通手段を確保すること。ボランティア保険に加入するのも大切。
民間のボランティアセンター「おらっちゃ七尾」。参加者は、学生団体、NPO、個人など様々。週末のこの日は、県内外から92人が参加。宿泊先が確保出来なかった人は、センター内に泊まることもできる。センターでは、住民の依頼とボランティアをマッチング。作業内容とスケジュールを管理。家財道具の運び出しや、住居を一軒ずつ訪ね困っていることがないかを聞いて回るローラー型訪問が計画された。ボランティアは班に分かれ現場に向かう。公費解体前の家財の片付けを担当。捨てていいか迷うものは家主に確認。家主は、公費解体の申請から1年近く経った今も解体の目処が立たないという。代表の今井さんは、地震直後から七尾で支援活動をしてきた。別の班が作業を行うのは龍門寺。地震で本堂も住居も全壊の判定を受けた。住職は「こうなってしまった以上、せめてすっきりした状態で終えたい」などと話した。公費解体の日がきまったことで、センターに片付けを依頼。午後4時、各地で作業してたボランティアが戻ってきた。おらっちゃ七尾が去年10月に発足して以来、ボランティア参加者はのべ5000人以上。しかし大きな課題もある。民間のため運営資金は財団などの助成金に頼らざるを得ず、今年度は1000万円以上不足する見込み。センターの受け入れ体制にも限界があり、ボランティアの人数は制限している。そうした中でも、住民一人ひとりとつながっていくボランティアがこの先も欠かせないという。
人が足りないところは無数にあるという。ボランティアの状況について、年度が変わるところにガクンと数が減っていくという。現地のニーズが減っているわけではないので、支援する方々に向けて手厚い助成金を拡充してほしいという。スピード感で進めていくものとは別に、住民の生活スピードや復興の尺度の中で、一緒に向き合いながら歩んでいくことも必要だという。能登半島は、世界農業遺産「能登の里山里海」など観光資源が豊かな場所。石川県は、今行ける能登として様々な情報発信を行っている。七尾市の和倉温泉を取材。震災以前の宿泊者数は能登半島全体の約半数を占めていた。
石川・七尾市の和倉温泉は能登半島地震で大きな被害を受け、全ての宿泊施設が営業停止となった。それから1年5か月が経ち、地元の組合に入っている21施設のうち5施設が営業を再開させた。大きな被害のあった護岸の工事は始まったばかりで、温泉街全体の再建には数年かかるとみられている。こうした中で街は復興に向け歩みだしており、温泉を祀る地元の神社のお神輿が街を練り歩く姿がみられた。約60年の歴史を持つ旅館は和倉でいち早く通常営業を再開。再開していない別の施設の従業員を出向という形で受け入れているという。和倉では年内にさらに2つの施設が営業を再開予定。また七尾市は国の助成制度を活用して今年2月に「和倉湯の里復興商店街」をオープン。そこにある中華料理店の店主は「和倉の復興のことを考えると気が重いがお客さんは明るく話しているので皆前向きに復興しているんだなって思えます」などと話した。さらに県外からの観光客も少しずつ増えてきているという。
4月下旬時点で奥能登地域で営業を再開した宿泊施設は全体の半数以上にあたる63施設で、そのほとんどが観光客の受け入れを行っているとのこと。田中さんは「春蘭の里などの農家民宿に泊まって違う能登の一面を味わってみるのも能登を応援していく大事な力になると思う」などと話した。また田中さんは「踏ん張っている能登の人たちからはここで住み続けたいという強い思いを感じる。この思いを1つも取りこぼさないことが能登の復旧・復興には大事になってくる」などと話した。