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環境の変化に影響されることなく食料を安定供給するにはどうすればいいのか、シンガポールで調査した。持続可能な未来を作り、困りごとを解決する数々の挑戦を追った。
シンガポールの農地は国土の1%未満、食料の90%以上を輸入に頼っている。住宅街にある立体駐車場の屋上には農園があった。ここでは土を使わずに肥料を加えた水だけで野菜を栽培している。シンガポールは熱帯気候で土に熱がこもりやすくトマトが育ちにくい。土の抵抗がなく根が長く育つため、栄養分を多く吸収して早く育つ。
シンガポールの「GKE Agritech」では「垂直農法」が行われている。農地にする土地がないシンガポールは、縦に空間を利用することで土地不足を解消している。「GKE Agritech」では部屋の湿度・温度などを自動でコントロールしており、気候や自然災害などの影響を受けないという。苗の植え付けや収穫もロボットが行うことで人手を大幅に削減している。また光合成に最適な紫色の光を当てることによって成長を促進。ケールであれば成長速度は露地栽培の1.5倍で、垂直農法により栽培量は7倍になり、かけ合わせると約10倍の収穫が可能だという。さらにコントロールされた環境なので無農薬で栽培しており、安全性も担保されているとのこと。このように都会の真ん中で育てられた野菜は味と品質、そして鮮度の良さから高級ブランド野菜となっている。
食料の90%以上を輸入に頼ってきたシンガポール。海外からの物流が途切れることは国家的な危機。この国の食卓事情を知るタレント・福田萌に聞いた。夫はオリエンタルラジオ・中田敦彦。2021年から家族でシンガポールに移住。福田は飛行機から見た農地が全く無い景色に驚いたという。やがてシンガポールの不安定な食料事情に直面することに。鶏肉の多くを隣国マレーシアからの輸入に頼っていた中で鳥インフルエンザが発生。鶏肉が入ってこなくなった。さらにシンガポールでは大きな川や湖がなく水不足も深刻な問題。マレーシアとの国境にかかる橋の横に見える3本のパイプ。1日最大9億4000万リットルの水がシンガポールへ送られ生活や産業を支えている。食料の輸入依存度に危機感を抱いた政府は自給率を高める仕組み作りに動き出している。スーパーの食料品コーナーにも変化が。新型コロナの流行をきっかけに政府はそれまで10%以下だった食料の国内生産を2030年までに30%に上げる政策30by30を推進。SGマークはその象徴。
産業の発展と地球環境との共生を目指し、1992年から始まった地球環境大賞。33回目の今年は17の企業や団体が各賞を受賞。その取り組みを紹介。
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- 明治記念館第33回地球環境大賞 授賞式
近年、日本各地で叫ばれる魚の不漁。水産資源の持続性、食卓の安定した魚の供給が求められている。日向灘に面した宮崎県中部の都農町。海水温の変化などにより漁獲高が不安定になり町が始めたのが魚の養殖。波が静かで養殖に適した湾にも恵まれる日本では、魚の生産量の4分の1が養殖。この町では海ではなく陸の上で新しい養殖に取り組んでいる。建物内にはタマカイが入った水槽が。タマカイは1kg約4000円で取引される高級魚。高級魚で希少価値が高いことから環境に左右されない陸上養殖で安定的な出荷が見込まれるとのこと。海での養殖は魚が出すフンやエサの食べ残しで環境に負荷がかかるが、陸上養殖ではフンやエサをバクテリアが分解。さらにフィルターで汚れを取り除き、きれいな水を循環させている。プロジェクトメンバーの中にスーツ姿の男性を発見。実はNTT東日本の社員。NTT東日本が提供しているのは魚の管理システム全般に関する技術。4年前には世界で初めて陸上養殖の紅サケを流通させた。都農町では陸上養殖したタマカイをふるさと納税の返礼品に。町おこしの起爆剤と考えている。地球環境の保全と水産業の発展を目指す陸上養殖の取り組みが評価され奨励賞を受賞した。
土地がないシンガポールでの魚の陸上養殖はどのようなものなのか。駐車場の片隅にコンテナを発見。コンテナの中には3つの水槽。1つのコンテナで300匹の魚がいる。養殖された魚は目の前の市場に並ぶ。これ以上ない鮮度の良さが好評。わずかなスペースで陸上養殖が可能。魚は海で獲るのではなく陸上で育てる時代に。
香川県にやってきた。香川県立多度津高等学校の生徒たちが地域の困りごとに対応するためにいろんなものをつくっているという。ウニにうどんをあげている。ウニが増えすぎて海藻を食べ尽くしてしまったという。生徒たちはウニを駆除。殻を開くと中はスカスカ。海藻のかわりになるエサはうどんがいいことに気づいた生徒たち。香川県では1人当たり年間230玉食べる。うどんのフードロスがあった。廃棄されるうとんは年間3千トン。ウニは雑食性。うどんを気に入って食べたという。遊食房屋の副総料理長の岡嶋さんは濃厚な味だという。香川県立多度津高等学校は「讃岐うどんウニ」projectで奨励賞をもらった。
大阪・関西万博にやってきた。培養肉が注目を集めている。動物の細胞を人工的に培養して作られる肉だとのこと。食用にしている国は少ない。シンガポールでは培養肉の販売が認可されている。Huber’s Butcheryでは培養肉が並んでいる。GOOF MEAT CULTIVATED CHICKEN EROZENは鶏の細胞から作られている。FURAというレストランではウズラの培養肉で作ったメニューA QUAIL WALKS INTO A BARが人気。食肉生産は大量の温室効果ガスが発生。世界規模で問題になっている。培養肉はその問題を解決できるため、世界中の企業が開発に力を入れている。
鹿児島の天然記念物・薩摩鶏。現在は観賞用として飼育されているが、養鶏家が困っているのは餌の高騰。餌として与えているのはトウモロコシに魚粉を混ぜたもの。近年その両方の価格が跳ね上がり倍近く餌代がかかるように。養鶏家が相談をもちかけたのは高校生。県立市来農芸高等学校は農業・園芸・畜産などを幅広く学んでいる。魚粉の代わりになるタンパク質として目をつけたのがコオロギ。コオロギの飼育は電気を使わず、餌や水にかかるコストもわずか。環境負荷が少ないタンパク質。成長したコオロギは冷凍して乾燥。これを粉砕し粉状にする。トウモロコシの代わりに低価格の米ぬかに混ぜることで栄養価は変わらず価格の安い餌を完成させた。従来の餌に比べて1キロあたり37円のコストダウンになる計算。これまでの当たり前を見直し困りごとを解決した高校生たち。コオロギをタンパク源として養鶏に活用する研究を実施したことが評価され文部科学大臣賞を受賞した。
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福井県坂井市では資源を循環させる問題に挑んでいる。アルミニウムのリサイクル工場を社会科見学。日本でのアルミ缶のリサイクル率は97.5%。しかし、リサイクルの壁がアルミ缶の蓋。炭酸などの圧力や運搬時の衝撃に耐える強度が求められる。これまではリサイクル素材に66%分の新しいアルミ地金を混ぜないと強度が保てなかったが、新たなアルミの生成には多くのエネルギーが必要。しかし、特殊な技術を開発し、新しく加える地金の量を25%以下まで減らすことに成功。こうして出来たアルミ材は茨城県石岡市の工場に送られ、蓋が作られる。この工場で作る蓋が全てこのアルミ材に置き換わると年間約14万トンの温室効果ガスを削減。環境負荷を軽減した次世代のアルミ蓋を共同開発したことが評価され経済産業大臣賞を受賞した。
栃木県宇都宮市ではサステナブルなまちづくりが始まっている。長年、宇都宮市民の困りごとだったのが渋滞。特に通勤・通学で多くの人が通る橋の渋滞は深刻だった。その困りごとを解決したのが2023年8月に開業した宇都宮ライトライン。次世代型路面電車は予想を上回る数の乗客に利用され渋滞が緩和された。全長14.6キロを約45分で結ぶ。市の中心部から郊外の工業地帯までを渋滞無しで移動できるだけでなく、生活に必要なポイントを路線上に網羅。JR直結の宇都宮駅にはスーパー・ホテル・病院が。沿線にはマンションなどの住宅街にショッピングモール・映画館などの商業施設まで。さらには小学校・高校・大学も。これがネットワーク型のコンパクトなまちづくり。ライトラインは100%再生エネルギーで運行している。家庭ゴミ等の焼却によるバイオマス発電で生まれた電気で走っている。地域の再生エネルギーで走る次世代型路面電車。100年先も持続可能なまちづくりが評価され環境大臣賞を受賞した。
今年の地球環境大賞に輝いたキヤノンの画期的な発明とは。今や世の中に欠かせない半導体。性能を上げるためにはより複雑で微細な回路が必要。回路の線の幅の単位はナノメートル(10億分の1メートル)。現在、光を焼き付け製造されている半導体の回路は細かくなるほど膨大なエネルギーが必要になる。そこで開発されたのがナノインプリントリソグラフィ技術。従来の10分の1のエネルギーで回路を作ることに成功。版画の技術の応用とキヤノンが保有しているインクジェットの技術を組み合わせることにより確立できたもの。
キヤノンで半導体製造の革命が起こった。ウエハーと呼ばれる半導体の回路を作る土台に、インクジェットで回路のパターンを形作る樹脂を噴射し、その上から版画のように回路の形をした型(マスク)を押し当て、半導体の回路パターンを形作る。光を殆ど使わないので従来の約10分の1の消費電力に削減、さらにより微細な回路を作れるということで世界から注目が集まっている。
新宿区 市谷・大日本印刷株式会社の施設「市谷の杜」は広さ約1万5000平方メートル。様々な動植物を見ることができる。コンセプトはかつてこの場所にあった武蔵野の森。地域特有の樹木を70種類以上を関東ローム層の赤土を使って、武蔵野の森を再現した。
農林水産大臣賞を受賞した日本製紙株式会社の「特定苗木の普及拡大に向けた採取穂園の整備と苗木生 産」を紹介。「エリートツリー」の種を育種していた。エリートツリーを開発したのは「国立研究開発法人 森林総合研究所 材木育種センター」。エリートツリーは「背が高く幹がまっすぐで生育状態のいい優秀な杉を選抜しかけ合わせ、数十年かけて作り出す。花粉が少ない特徴もある。植えて60年経った老齢林はCO2の吸収量が減少、保水力が弱くなり土砂崩れの原因にもなる。エリートツリーはこの問題の解決に期待されている。国は新しく植える苗木の90%をエリートツリーにする方針。
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2024年6月22日(13:30)